悔しい思いをしたぶん、もっと強い気持ちで練習に取り組める

桃田賢斗

バドミントン

2021年3月、イギリスで行われたバドミントンの「全英オープン」。桃田賢斗は1年2か月ぶりの国際大会の舞台で思わぬ敗戦を喫した。3回戦で22歳のマレーシアの選手にストレート負け。大会前に宣言していた復帰戦での優勝は幻となった。
2020年1月、桃田は国際大会で訪れていたマレーシアで交通事故に巻き込まれ大けがを負った。右眼か底骨折、シャトルの速さが最速で時速300キロを越えるといわれるバドミントンで、選手生命を左右しかねないケガだった。
さらに、自身の新型コロナ感染もあって国際大会に出場できない期間は予想以上に長引いた。

「やっと帰ってきた大会。試合ができてなかったので、あれ!?どういう風にプレーしていたかなとか、プレーをしながらどこに打とうかなとか、何をしようかなとか、ずっと迷ってしまった」

世界ランキング1位の桃田でもこんな感覚を覚えるのかと驚いた復帰戦。そのことばとは裏腹に2回戦までは順調だった。

迎えた3回戦。22歳の新鋭を相手に、桃田はらしからぬプレーを連発する。第1ゲーム後半リードしながら、まさかの7連続でポイントを奪われて逆転で失うなどストレートで敗れた。試合中に立て直せない桃田を見るのは、いつ以来だろう。率直にそう思った試合だった。
しかし、つまずいたからこそ見つけられた自分もあった。

「復帰するまでは、ただ漠然とがむしゃらだった。どこがよくなくて、どこがいいとかも分からず、ただがむしゃらに頑張っていた。けど負けた今は、やらないといけないことがはっきり分かった。悔しい思いをしたぶん、もっと強い気持ちで練習に取り組めるし、いま自分が思っているところを直せば勝機はある」

具体的な修正ポイントは明かさなかったが、確かに自分の課題に気がついた桃田。この気づきは、オリンピックの大舞台で飛躍する鍵になるかもしれない。そう思わせるほど、彼の表情は充実感でいっぱいだった。

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