日本商工会議所 小林会頭に聞く 中小企業の賃上げのカギは

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ことしの春闘は大企業が5%を超える賃上げ率となり、この動きが中小企業にどこまで広がっていくのかが焦点となっています。

そのための課題は何か。全国の中小企業など約126万会員が参加する、日本商工会議所の小林健会頭に聞きました。(インタビュー収録:4月4日)

好況 大企業から中小へ「時間差が必要」

神子田章博キャスター
―いま中小企業の経営状況はどうなっていますか?

日本商工会議所 小林健会頭
前年度に比べて横ばいから、やや上方方向に向きつつある。大企業のように急激に底上げしてこないのは、やはり人手不足がいちばん大きな原因。人手の供給が不足しているので、それを補うために賃上げせざるをえない。そういう部分があって、本質的な成長までには、なかなかフルに及ばないというのが実情だ。
大企業の好況が中小企業に還元してくるには、少し時間差が必要

小林健会頭

賃金など労務費の価格転嫁を

連合の集計によると、ことしは組合を持つ従業員300人以下の企業で4%を超える賃上げを実現しています

小林会頭は、組合を持たないさらに小さな規模の企業にも景気の好循環が波及することが重要だと指摘します。

(賃上げに向けて)奇策はない。先を見て自己変革をして、具体的には生産性を上げて、それから付加価値を上げる。それと並行して、材料費の上がった分の価格転嫁、それから労務費(賃金など)の価格転嫁、この両方をあわせて正のスパイラルに入っていくことが大事なんじゃないか

材料費・労務費の価格転嫁で“正のスパイラル”を

日本商工会議所の調査では、取り引き先と価格転嫁の協議ができている企業は約75%です。中小企業のコストの転嫁率は50%以下にとどまっているという調査結果もあるということです。

特に価格交渉の中で、いちばん率が低いのは『労務費の転嫁』だ。日本の産業界の商習慣で、いままで労務費については各企業で独自に解決しろと。しかしながらこれだけ人手不足が一般化してくると、どうしてもそれだけじゃないということで、労務費を転嫁する話し合いもしようと

地方の中小企業の活性化 「いちばん大事」

物価が上昇するだけでなく賃金も負けずに上がる好循環が日本経済全体として実現するために、小林会頭が重要だと考えるのが、地方の中小企業の収益の改善です。

いわゆる労働人口で言うと、東京は中小企業比率が4割ぐらい。地方は8割~9割が中小企業。地方の商業インフラを担っている。したがって、人が地方に帰ってくる、あるいは地方創生をするということも含めて、地方の中小企業の活性化、これがいちばん大事な点だと思う

「地方の中小企業の活性化がいちばん大事」

キャリアアップ・人材の流動性確保を

中小企業の活性化には、人材のキャリアアップと流動性の確保、そしてそれを促進する政策が必要だといいます。

働く人のキャリアアップそれから(人材の)移動、このへんに絡めて新しい資本主義流に言うとリスキリング、つまり自分を教育し直す。これは大企業の場合は企業内でやれるが、中小企業はなかなかそうはいかない。
企業が集団でやるとか、あるいは地方公共団体などと一緒になってやるとか、そういうことに支援を向けてもらうのも一案じゃないかと思う

小林会頭は地方の中小企業の活性化に向けて、商工会議所がきめ細かな経営相談にのったり、さまざまな政府の支援策や補助金について中小企業の経営者がよく理解して活用できるように、いわば“通訳”の役割を担ってサポートしたりしていきたいと話していました。
【2024年4月12日放送】
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