2022年01月31日
(聞き手:白賀エチエンヌ 徳山夏音)
日本人は平均、1日1個の卵を消費しているって知ってますか?そんな中、いま、殻がむいてあるゆで卵が人気なんだそう。食品業界のいまを「キユーピー」の人事担当者に聞きました。
学生
徳山
最近、殻がむいてあるゆで卵、大学の売店で売っているのを見かけます。
学生
白賀
マヨネーズだけじゃなくて卵そのものも商品にされているんですね。
そうなんです。割らなくてもいいし、むかなくてもいいということで、好評をいただいています。
キユーピー
相田さん
どうして、いま、ゆで卵が売れているんですか?
コロナ禍で健康志向が高まって、筋トレをされる方が増えていますよね。
それで、良質なたんぱく質を手軽に取り入れることができるとあって、人気が出たのではないかと思っています。
大学だけではなく、スポーツジムやコンビニでも取り扱っていただいていますが、製造のキャパシティーがもう限界らしくて。
そうなんですね!
商品を開発するきっかけは何だったんですか?
アンケート調査で潜在的なニーズを探っていったところ、家庭でゆで卵を作らない方がすごく増えていたんです。
ゆで卵ってゆでて、殻をむいて、手間がかかりますよね。
共働きの家庭が増えていますし、1人暮らしの学生さんたちにも、ニーズがあるなと。
業務用として殻をむいた状態のゆで卵を大量につめた商品を製造していたので、それを家庭用として個別に包装したら需要があるのではないか、と考えたんです。
なるほど、そうだったんですね。
業務用のゆで卵は品質を保つために液につかっている状態なのが市販用にするうえでの課題でした。
でも、極限まで液体を減らして、袋から空けてそのまま食べられるよう、利便性の点で工夫をこらしたんです。
そうしたら販路が広がって、特に大学生から好評をいただきました。
わかります、外で食べても殻のゴミがでないし、便利です。
「手軽にたんぱく質をとりたいけど、むきたくない」。
このような潜在的なニーズをもっと探っていくことが、これからはもっと大切になってくるんだと思います。
マストなニュース、1つ目に「SDGs」をあげていただきました。
キユーピーというと、マヨネーズのイメージが強いと思います。
大武さん
その原料の卵なんですが、日本人1人あたりの年間消費量は、300個を超えているんです。
1日、ほぼ1個は食べている計算ですね。
すごい消費量ですね。
実は、そんな「卵消費国」、日本で生産されている卵のうち、全体の10%にあたる25万トンをキユーピーグループで使用しているんです。
実は、日本で一番卵を使っている会社なんですね。
知らなかったです。
使用量25万トンに対して、卵の殻は年間2万8千トンでてきます。
そんなに!いったいどう処分してるんですか?
実は、一切、無駄にはしていないんです。
卵の殻は肥料やカルシウム強化剤として活用したり、チョークや壁紙などの原料としても使われているんです。
また、卵の殻に付いている薄い膜は化粧品の原料にもなっています。
化粧品にもなっているんですね。知りませんでした。
卵の殻は、100%有効活用しています。そういう意味で、SDGs=持続可能な開発目標を最初のニュースとして選びました。
なるほど。殻を破棄するのではなく、循環させているんですね。
資源を大切にする取り組みってほかにもされているんですか?
みなさん、カット野菜やサラダを買われたことはありますか?
もちろん、あります。
商品の中には野菜の芯や外葉が入っていませんよね。
実はキユーピーグループは日本一、キャベツを使う会社でもあるんです。
製造の過程で大量に出た使われない芯や外葉を、家畜の飼料や畑の肥料に活用することで2030年には90%以上の再資源化を目指して取り組んでいます。
容器や包装についても、繰り返し使えるプラスチックの割合を増やしたり、使用する量を減らしたりしていくことで、CO2排出量の削減を目指しています。
食品メーカーとしてSDGsに取り組む意義ってなんでしょうか。
SDGsに取り組んでいる事が一つの宣伝になると捉えるケースもあると思いますが、やはり本当の意義はそこではありません。
食糧問題やフードロスの問題が世界的に叫ばれる中、日本で一番卵やキャベツを使用している会社が無責任な態度であったらいけないと思っているからです。
なるほど。ありがとうございます。
2つ目のニュースが海外展開ですね。なぜ選ばれたんですか?
目指す姿としても「世界の食と健康に貢献する」をキーワードに掲げていて、マヨネーズ・ドレッシングを中心にキユーピーグループを牽引する成長ドライバーと海外展開を位置づけているためです。
坂本さん
国内は人口減少で「胃袋」がどんどん小さくなっている課題もありますので、海外展開も積極的に進めています。
現在は、中国や東南アジアに加え、北米での事業に力を入れて取り組んでいるところです。
マヨネーズやドレッシングってもともと海外の調味料というイメージが強いですが、どうやって海外の市場に勝負を仕掛けているんでしょうか。
おっしゃるとおりで、北米のサラダ市場は日本よりも発達していると思います。
一方で、中国とか東南アジアではまだ生野菜を食べる文化が定着していないので、そこで「サラダ文化」を作れるように展開しています。
なかなかハードルが高そうですね…。
おっしゃるとおり、いきなりサラダ文化を作るのは難しいので、日本のマヨネーズやドレッシングをそのまま海外に持っていくということはしていません。
たとえば中国だと、生野菜よりフルーツのサラダの方が食べられているので、それに合うような甘いマヨネーズを開発しています。
現地の嗜好に合わせた商品づくりをしているんですね。
それぞれの地域・国の食文化を大切にしながら、その地域に根付いたローカルメニューというのを大事にしています。
中国ではほかにも、現地で食べられている火鍋のタレとして深煎りごまドレッシングを使ってもらうなど、ローカルメニューに合わせることによって、良い影響が出ています。
ほかにも、現地で受け入れられている理由ってあるんですか?
キユーピーマヨネーズは、卵黄タイプなのをご存じですか?
卵黄タイプ…白身を使ってないってことですか?どうしてなんですか?
100年以上前、創始者の中島董一郎がアメリカでマヨネーズに出会った時、現地の人の体格のよさに驚いたそうなんですね。
この時、栄養価の高い卵黄をたっぷり使ったマヨネーズを日本人にも食べてもらい、体格と健康の向上につなげたいと思ったのがきっかけです。
そんな古い、歴史が…
現在も市場に出ているマヨネーズは全卵タイプが多いので、差別化につながっています。
味の違いってあるんですか?
卵黄タイプは豊かな「コク」や「うまみ」が感じられるという声が多いです。
海外から持ち帰って日本で作ったマヨネーズが、今では味も何にでも合うということで海外では「マジックソース」と呼ばれて差別化につながっているんですよ。
そうなんですね、知りませんでした!
最後は多様な人材ですね。
今は食に関する環境もさまざま変化していて、スピード感を持って対応していかないといけない時代です。
ただ、それには従来とは異なる知恵や経験、組合せがないと変化する世の中にいいアウトプットができませんよね。
潜在的なニーズに合った商品を見いだしていくには、ダイバーシティーの推進は経営戦略の1つになるほど、価値があります。
具体的にどういう取り組みをしているのですか。
さまざまなバックグラウンドのある人が活躍できる会社は、柔軟な働き方がないと実現しません。
現在、女性の育休取得は100%、男性の育休も80%ということで、男性にも育休を推進し、取得率も高いのが特徴になっています。
私自身も娘が3人いますが、育休を取得しました。
男性・女性問わず、ライフイベントは大事にしてほしいし、充実することで多様な人が活躍できる働き方になると思っています。
多様な人材の活躍のために、取り組んでいることって、ほかにもありますか?
例えば、社内の役員が参加する経営会議。
役員だけで決めるのではなく、「KEEP20」という取り組みがあります。
KEEP20?
重要な会議に参加するメンバーの20%以上を多様な人材(スキル・年代・ジェンダーなど)から構成しようという取り組みです。
経営会議の場に課長職に入ってもらったり、メンバーに女性が少なめだったら、女性が入ってしっかり発言してもらう。
そうする事で、ふだんとは異なる視点から意見を引き出し、議論を活性化させています。
なにか、変化はあったのでしょうか。
例えば、採用の最終面接。
さまざまな年齢層、属性の方が入ることで、学生の持ち味を多様な視点で見ることができるようになりました。
男性役員が「礼儀正しい」という印象を持った学生について、KEEP20で入った面接官から「会話の中でユーモアを感じたので、そういう面も持ち味なのではないかと」という意見がでて、採用に至ったようなケースもありました。
面接を受ける側からしても、いろんな角度から自分の事を分かってくれる人がいると思うと安心にもつながりますね。
最後に就活生に向けたメッセージをお願いします。
就活は思いどおりにいかないことも多いと思いますし、大変ですよね。
でも、こういう大変な時こそ、「大変」の文字のとおり「人は大きく変わる」と思っています。
ぜひ就活を人間成長の場ともとらえて、身体に気をつけて前向きに頑張っていただきたいです。
ありがとうございました。
編集:秋元宏美 撮影:佐藤巴南
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