2022年02月18日
(聞き手:小野口愛梨 梶原龍)
100万回を超える再生数の動画も発信する、農林水産省公式YouTubeチャンネル「BUZZ MAFF」。省庁の仕事の現場や働きがいも積極的に伝えていますが、国家公務員を志す人が減っていると言われるのも事実。本当に“ブラック”じゃないの?就活生が国家公務員YouTuberに聞きました。
学生
梶原
国家公務員ってどういう仕事なんですか?
全体の奉仕者として国民の利益になる仕事をするということです。
農林水産省
白石さん
一番の仕事は仕組みとかルール、法律を作ることですね。
学生
小野口
すごく大事な仕事をしているのに、実は就活ではあまりイメージがなくて・・・
今、官僚志望ってけっこう減っているようですね。
時代の流れでしょうがない部分はあると思うんですけど、僕はすごく素敵な職業だと思います。
白石優生さん(24)
農林水産省に入省3年目。省のYouTuberプロジェクトに応募し、花の消費拡大を呼びかける動画などを発信。成果が認められ2021年から本省の広報室所属になり、公式YouTube「BUZZ MAFF」の運営担当に。MAFFは農林水産省という意味。
もともと民間企業への就職は考えなかったんですか?
あまり考えていませんでした。
大学時代は自分のモチベーションが民間で働くことじゃなかったと思います。
公務員って自分のやっていることが世のためになるというところがかっこいいなと思って、公務員になることばかり考えていましたね。
そうですね。
生まれも育ちも鹿児島、大学も鹿児島で地元志向が強かったので、地元の人とか土地の役に立てるような人材になりたいなって思ってました。
なので、地元という意味では鹿児島県庁もいいなと思ったんですけど、縁があって農林水産省に入りました。
じいちゃんとばあちゃんも農業していて田んぼとか畑の手伝いを小さいころからしていたので、農業にはなじみがありました。
それで、最初は農林水産省の支所のような(熊本市にある)九州農政局に配属されました。
九州のころは何を担当されたんですか。
営業みたいなことをしていました。
僕らの商品って政策なんです。
政策?
例えば農家さんが「今年はかなり暑くてトマトがあんまり取れなかった」ってなったら、こういう支援策があります、国を頼ってくださいって回る。
あとは、農家さんがどういうことに困っているか聞き取りもします。
それを本省に「地方にはこういう困っている人たちがいるからこういう制度を作ったほうがいい」と伝えたりもしました。
それが1年目だったんですね。
そこから、1年間YouTubeもして認められて、今の担当に異動になったんです。
そもそもなんですが、国家公務員ってどうやってなるんですか?
僕は「国家一般採用」なんですけど、大学4年の夏に筆記試験と面接があります。
それに合格した人が官庁訪問といって色んな省庁に面接に行くことができるんです。
入り口はどの省庁に勤める人もみんな一緒で、そこから散っていくんですよ。
僕は農林水産省にと決めたんですけど、経済産業省を受けることもできたし、財務省を受けることもできました。
「キャリア官僚」と呼ばれる人も同じ流れなんですか?
キャリアと呼ばれているのは総合職の人たちですね。
「国家総合職採用」という難しい試験を通った人で、人数的には省庁に勤める人の2割くらいですかね。
試験が違うんですね。
そうですね。僕は「国家一般職採用」で農林水産省に入ったわけですが、国家公務員のおもしろいところってすごく異動が多いんですよね。
外国に行くこともあるかもしれないですし、沖縄に行きたくて人事に希望出して4年目で行けたという人もいます。
2年くらいで所属が変わって、例えば九州と霞が関の職場でも全然違うので、すごく刺激があると思います。
じゃあ例えば、「省」からその下の「庁」に行くこともある?
農林水産省っていう大きな組織があって、その中に林野庁という林政部門があって、水産庁という部門があってという感じで分かれています。
僕も水産庁に異動になる可能性はありますけど文化も雰囲気も全然違うっていいますね。
なんだか大変そうな気もします。
僕は色々な世界が経験できるのですごく良い仕事だなと思っています。
40年勤めた人でも多分すべての職場を経験できないと思うので、常に知らない分野が社内にあって「不完全」なままでいられるのはおもしろいですね。
ちなみに省庁の雰囲気とかカラーってそれぞれ違うんですか?
他の省庁の人たちとお話させていただく機会も多くなったんですけど、それぞれ違うと感じますね。
やっぱり法務省の人ってまじめな感じで仕事中はかっちりとスーツで、僕なんか作業着とかで行くんですけど。
経産省の人って民間の事業者とバシバシ話したりするので、勢いがある人が多いですし。
農水省の中でも林野庁の人は森林を扱っているだけあって、穏やかな人が多いイメージがあります。
えー、おもしろいですね!
1日のスケジュールを見させていただいたんですけど、9時に出社されて18時に業務終了。
正直、個人的なイメージだといわゆるブラックなイメージがあって・・・これ本当なんですか?
法律を作っている時とか国会対応している時はものすごく忙しいので、ブラックというイメージはある意味間違ってはないと思います。
あの、国会対応ってどういったことをするんですか?
法律を作る時、国会議員が意見を言うのですが、データの細かい部分まで議員の方が調べるのは難しいので僕らが調べるんですよ。
僕らがちゃんとデータ取って裏付けして、国会という場で議論をしているんです。
でも国会対応は時期によるので、一年中終電で帰りますっていうわけじゃないです。
なるほど。
霞ヶ関は確かにブラックな部分があり、そこばっかり取り上げられてしまいますが、イメージどおりじゃないところもあると思いますね。
スケジュールに「だいたいのことは20分調べれば詳しくなれる」と書いてあったんですけど、どういうことですか?
今はスマホがあるので、なんとなく聞いた話も20分電車で調べれば、普通の人より詳しくなれると思います。
それはいつごろから気にしているんですか。
昔からやっていたんですけど、「BUZZ MAFF」を始めてから幅広い知識が必要だなって思うようになりました。
例えばご飯を食べに行って、佐渡のお米があったとしたら、佐渡ってどんなところだっけなってすぐ調べたりとか。
疑問に思ったことはすぐに調べる?
それは癖づけるようにはしていますね。
そしたら次のバズりにつながったりもするので、Twitterでスラングが流行っているけど意味知らないやつがあれば、なんだろうと調べます。
自分だったらなんとなく過ごしてしまうなと感じます。
SNSを動かしている人間としては大事なのかなと感じますね。
ちなみに、YouTuberの活動で動画が知られるようになった時、周りの人の反応はどうでした。
全国の花の農家さんから元気が出ましたとかコメントをもらいましたし、農水省の動画見て買いに来たというお客さんがいたというのも聞きました。
新型コロナで花の消費が落ち込んだ時期、マジメに花の購入を呼びかけつつも、どんどん画面が花に埋め尽くされる動画を公式YouTube「BUZZ MAFF」で発信。大きな反響を呼んだ。
そういうのは嬉しくて、やってよかったなって思いましたし、取材もこれ関係で50件くらい頂きましたし、一定のPR効果というのはあったと思います。
えー、すごい。
省内も180度変わりました。
行政の一般的な広報活動って予算を確保して、その予算の範囲内でできることを考えるんですよ。
例えば1000万円予算があったとしたらその1000万円の中でタレントさんを起用したりとか、制作会社に頼んだりとか。
はい。
これまでは時間をかけたもの、お金をかけたもののほうがPR効果があると思っていましたが、2時間で作った動画が90万回再生されたんですよ。
僕らの人件費しかかかってないのに。
たしかに!
時間がかからないのもいいです。
今までだったら農家さんが困っているから、情報発信しなければならないって言っても、予算の確保からスタートなので時間かかっちゃうんですよ。
でもYouTubeなら、言われたその日に作って、その日に出せるので、そういう意味でも強いですね。
広告に対する見方が180度変わったということですか。
広告を出すって言うか、「広報マインド」が変わったなと思っています。
発想とかアイデアとか、そもそも広報っていうのは僕らの仕事じゃないって思っていた部分ってやっぱりあったと思うんですよ。
はい。
僕らの仕事って法律を作る、ルールを作ること。
それを国民の皆様に伝えるっていうのは、予算を組んで外注することだった。
でも僕らは職員自ら自分がやっている仕事を自分のやり方で発信している。
それがおもしろくてバズったら、100万回再生されることもあると分かって。
役人の広報っていうものへの意識は変わってきているんじゃないかと思っています。
白石さんの実際のお仕事のことを聞いてきたのですが、国家公務員を目指す人が昔より減っていると言われるのはどう感じますか?
人生の中でバイタリティのある20代の時間を下積みに使いたくないという人は多いと思うんですよね。
僕らの仕事って20代が下積みなのは事実で、そういう人は官僚を避けるのではないかと思うし、それが悪いとは思わないです。
でも、僕はそのうえで自分たちの仕事は魅力があるんだよということを伝えていきたいなと思います。
じゃあ、国家公務員になりたい人にメッセージをいただきたいです。
シンプルですけど国家公務員って僕はかっこいい仕事だと思います。
「世の中のために」って、それぞれ想いをもって仕事をしている人が多いです。
そのうえで、白石さんにとって「仕事とは」何ですか。
世の中を創ること!
僕らは全体の奉仕者として仕事をしていて、一人ひとりが世の中をよくしていきたいという志を持って働いています。
そういう意味で、仕事というのは世の中を創ることなのかなと思います。
本日はありがとうございました!
取材・編集:川瀬直子 加藤陽平 撮影:田嶋瑞貴
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