教えて先輩!COHINA代表 田中絢子さん【前編】

悩みが起業の原動力に

2022年01月14日
(聞き手:白賀エチエンヌ 徳山夏音 本間遥)

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身長150cm前後の小柄な女性向けのアパレルブランドCOHINA。創業3年で月商1億円ほどに成長しています。代表の田中絢子さん自身も身長148cm。原動力は「着たい服が選べない」という悩みでした。

“着られる服”を選ぶ違和感

学生
白賀

まず、田中さんが運営されているCOHINA、どういったブランドなんですか?

身長150㎝前後の小柄女性のためのアパレルブランドで、20代から50・60代の方まで広く着用していただいています。

COHINA代表
田中さん

COHINA代表/ディレクター 田中絢子さん

2018年、大学在学時に友人と一緒に小柄な女性向けアパレルブランドCOHINAを創業。オンラインでの販売を中心に創業3年で月商1億円ほどに成長。大学卒業後、新卒でグーグルの日本法人に入社し、副業も経験。

学生
本間

私、身長が149cmなんですけど。

おっ!1cm差!私、148㎝なの。

そうなんですね!

確かに小柄な女性のブランドってなくて、けっこう服探しで苦労することは多いです。

私も、自分にぴったりの服から好きなデザインを選ぶんじゃなくて、山のようにある服の中から自分でも「着られる」服を選ぶという経験を何度もしてきました。

COHINAが販売する服 モデルの女性は143センチ

私はだいたい小学6年生の平均身長くらいなんですけど。

いつまでもキッズ服を着るのは嫌だなって気持ちとか。

あとは「ザ・かわいい」という感じの、フェミニンな印象の服はサイズ展開していたりするんですけど。

大人になるにつれて、きれいめな服も着たいと思ってもなかなかイメージに合うものがなくて。

商品開発のためにさまざまな店を訪れ、市場の商品が大きすぎることを確認する田中さん。

すごく共感します。

自信をもって着られるデザインの服が全然なくて、買い物に行っても最後疲れる。

「着たい」と「着られる」ってけっこう違うんです。

買い物で疲れる…

わかります!

自分がターゲットじゃないというか、そもそもブランド側から想定されていない、お呼びじゃない感じ

楽しいはずのお買い物がむしろへこむぐらいの体験になっちゃうって何かおかしいなって思ったんです。

「着られる」服を探すってどんな感じなんですか?

好きなものを選べないって窮屈なんですよね、閉塞感があるというか。

ちょっとずつちょっとずつ、理想の自分をあきらめていく感じ

学生
徳山

なるほど。

「私はこれにはなれない」とか「私には無理だろう」という感覚が日常的になってきちゃって

それってすごくもったいないですよね。

ご自身の悩み、経験の中から出た気持ちが、ブランドにつながったんですね。

0から1を作りたい

既存のアパレルブランドに就職するのではなく、どうして起業を選んだんですか?

大学生活でインターンを経験する中で、参加するんじゃなくて0から1を、世の中にないものを創ってみたいって思うようになって。

困っている人たちに服を届けるには規模を大きくしないといけないし、だったらちゃんとビジネスとしてやらないといけない。

じゃあ会社でやるか、みたいな(笑)

そんなに悩みはしなかったかな。

ブランドの立ち上げに向けてどうやって必要な情報を集めたんですか。

最初は周りにいる150cmぐらいの友達に電話して話を聞いたり、その友達にほかの小さい子を紹介してもらったりしていました。

あとはインスタグラムで「小さい人いたら話聞かせてください」ってストーリーを流して、反応してくれた人と連絡取り合ってとか。

すごく身近なところから始めましたね。

みなさん何て答えられたんですか。

「めっちゃ困ってる」って口をそろえて言ってくれて。

お直ししてますとか、小柄さんなりの工夫もたくさん教えてくれたんですけど、改めてなんでその工夫をしなきゃいけないのかなと。

みんなは当たり前に身近な場所でほしい服を買えるのに、なんで私たちはデザインや買い物の機会が限られないといけないんだろうって。

確かにそうですよね。

服をつくる知識も、もともとお持ちだったんですか。

私は政治経済学部だったので、もう服飾の知識は0。

服は好きでしたが、生地に詳しいかと言われると専門的な知識は全然なくて。

そこからどうやって起業したんですか。

まずは何を作りたいか、どんな服を作りたいかって考えました

どんな人に着てほしいかとか、既存のブランドだとどのあたりかとか、服のイメージをまず作りました。

コンセプトから決めたんですね。

それをもとに、1万円以下で服を作りたくて。

国内の工場では学生で知識もない私の話はなかなか聞いてもらえなかったので、アリババで中国の工場を募って、何社かと連絡を取り合って。

ブランド立ち上げ当初の様子

絵を描きながらなんとか意思疎通を図って、サンプルを作って。

苦労はありましたか。

製造トラブルはしんどかったですね。

洋服に対しての知識が足りてなくて、服を製造してくれる企業への指示が悪すぎて、指示したのと全く違うものが上がってきちゃう。

え…

私たちが想定していたものとは全く違うものが100枚届いちゃったので、新しく生産し直したり。

そういう初心者ならではのトラブルがありましたね。

最初は「頑張る」しかない

でも、生産トラブルも全部組織作りの過程だったなって感じています。

ブランド立ち上げ当初の梱包の様子

一番最初は「頑張る」っていうのが大事なので、ほんとにシンプルな話なんですけど、頑張るしかないんですよ。

はい。

そもそも服の作り方から分からないし、どれくらいの人がブランドに興味を持ってくれるかも分からない。

売れるのかも分からないし、売れた後のお金が入ってきたらそのお金をどう管理すればいいかも分からない。

でも、まずは何が得意かは分からなくてもいいから、頑張るしかないと思うんですよね。

気持ち的にってことですか?

気持ちも行動も

だんだん熱量に共感して人が集まってきてくれて、それが最初の組織づくりのフェーズだったと思います。

成長のために選んだダブルワーク

大学卒業後はグーグルに勤められていますよね。

内定をもらっていましたし、ビジネスやマーケティングのスキルを得たほうが、自分の会社のためにも絶対役立つと思いました。

どういう仕事をしていたんですか?

中小企業の広告営業担当でした。

売り込みですね。

そうそう。

広告を売るためには、経営全般に対する提案をするのが前提です。

中小企業だと3人とか、多くても100人の会社だったりするので、「うちのマーケティングどうしたらいいんですか」みたいな相談をいただくことも多くて。

へー。

あなたの会社はこういう経営方針とマーケティングです。

ただ、この目標を目指すのであればこっちのマーケティング手法もおすすめです、と。

それでうちをこう活用してもらえれば、こんな効果が見込めますよ、といった提案をするんです。

コンサルみたいですね。

中小企業を数百社担当していたので、各社の経営やマーケティングをたくさん学べたのはすごく今役に立っていると思います。

ダブルワークが前提だったんですよね。

生活としては10時から17時くらいまでグーグルで働いて、18時からCOHINAのオフィスに行って夜まで働いて、土日もCOHINAをやってみたいな感じでした。

若い時のほうが思考が柔軟ですし、覚えることも覚えやすいので、頑張っておきたかったんです。

大変そうですが・・・

当時の記憶がないんですよね。

すごく忙しかったな、すごく起きていたなという感じなんですけど(笑)

ダブルワークだと気持ちの切り替えが難しそうですが。

すごく好きでやっているからなんですけど、オンオフの切り替えがいらない。

それぞれの経験をどう活かすのかをぐるぐる考えられるのでむしろ効率がいいんです。

学んだことを両方でいかすこともあったと。

職種が違うので、知識やスキルがそのままいきるわけではないですが。

時間のやりくりとか、お客さんってこういうことに興味あるんだという視点とか、お互いにいい影響を与えられていたなって思いますね。

すごいですね、作用しあうっていうのが。

そこから1年半ほどで退職されたんですよね。

自分の会社の事業が大きくなってきて、ここで全力でやりたいと思って。

グーグルで社会人1年目を経験させてもらって、よしこれでCOHINAにフルコミットしようって、気持ちにけりがついた感じです。

「私」の悩みからブランドを立ち上げた田中さん。ファンを獲得し成長した秘けつは、「あなた」に話しかけることでした。後編ではインスタグラムを駆使するビジネスモデルをお聞きします。

編集:谷口碧 撮影:田嶋瑞貴

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