2022年01月28日
(聞き手:白賀エチエンヌ 徳山夏音 本間遥)
「身長が低くても好きな服が着たい」そんな悩みをきっかけに、アパレルブランドを立ち上げた田中絢子さん。武器は毎日必ず続けているインスタライブです。大切なのは「あなた」に向けて発信すること。ブランド成長の秘けつを聞きました。
ご自身の悩みから始まったビジネスですが、どうやってお客さんを増やしていったんですか?
商品がない時からインスタグラムの運用をしていました。
その時はブランドについて投稿する内容がなかったので、小柄さんの役に立つアカウントにしようと思ったんです。
例えばおすすめのブランドの商品を自分たちが着て紹介したり、スタイルアップのコツを投稿したりとか。
それは気になりますね。
小柄だったら誰もが興味を持てる内容にしていたので、それをきっかけにインスタのフォロワーがだんだん増えていって。
COHINA代表/ディレクター 田中絢子さん
2018年、大学在学中に小柄な女性向けアパレルブランドCOHINAを創業。150cm前後の女性向けの服に特化し、創業3年で月商およそ1億円に成長。ブランドのインスタグラムのフォロワーは2022年1月時点で23万人を超える。
その延長線上にうちの商品に興味を持ってくれる人が増えていきました。
なるほど。
小柄さんが小柄さんを連れてきてくれる連鎖になって、口コミで広がっていきました。
そんなふうに、共感をきっかけに知ってもらうことが多いと思います。
インスタを見て思ったのですが、身長別にコーデが投稿されているじゃないですか。
低身長の人にダイレクトに呼びかけている感じがしました。
うちの場合は身長がコンセプトのコアなので、「あなたに対して話しかけてるんですよ」って伝わるように、身長が分かる投稿をすごく意識してます。
小柄さんってブランドから話しかけられる、「あなたに対して発信してるんですよ」って言われた経験がほとんどないはずなので。
小柄さんにも自分自身がターゲットになる経験をぜひしてほしいなと思います。
お客さんのニーズはどうやって取り入れてるんですか?
インスタライブを毎日1時間、365日、もう900日連続で配信しているんですけど。
毎日何百人もの方が見てくれて、コメントもたくさんくださるんです。
それを見ていればお客様が何を考えているのかが伝わるので、毎日インスタライブをすることが一番です。
私の個人のアカウントにも長文で思いを伝えてくれる人がすごく多いので、それを毎日しっかり見て、内容を社内にも共有しています。
服のデザインにもお客さんの声を取り入れたりするんですか?
商品企画ライブをして、どんな商品を作るかをお客様と一緒に決めていったりしています。
アンケートでどんな服を作りたいかを決めてもらって、その中から私たちがいくつかピックアップして、実際に何を作るか投票してもらう。
お客様もメンバーの一員になったような感覚になってもらえるし、私たちは事前に人気がある商品を発掘できて在庫のロスも生まれないし、お互い楽しい。
自分の意見が反映された商品なんてなかなかないですよね。
我が子のようにみんな可愛がってくれて。嬉しいですよね。幸せでした。
インスタライブ、どうして365日やるんですか。
お客様がすごく望んでくれていて、とにかく毎日続けてほしいと言ってくださる方も多くて。
生活のリズムというか時報というか、無いと寝られませんとか言ってくださる方もいるんですよ。
お客さんにとっても欠かせない時間になっているんですね。
無いとダメという声がある限りは応えていきたいですし、私たちにとってインスタライブはお店が開いている状態と同義だと思っていて。
どういうことですか?
私たちはECブランドなので、ネット販売のみで店舗を持っていないんですよ。
なので、私たちのお店は毎日オープンしているので皆さん見ていってねっていうメッセージを込めて365日。
週に1回より365日の方がインパクトがあるというか、なんか良くないですか?
強烈ですね。
どうしてそこまでお客さんの目線を大事にするんですか?
当たり前なんですけど、誰も必要としていないものを作ってもしょうがないと思っていて。
自己表現をしたいわけじゃなくて、人が幸せになるもの、人に求められるものを作りたいなって思っていて。
顧客目線と言い聞かせているわけじゃなくて、私たちのブランドの存在理由として、相手=お客様がいるので、そりゃお客様のことを考えるよねという感じなんです。
すごいです。必要じゃないものを作らない…
物は足りている世の中だと思うので、その中でちゃんと誰かを幸せにするものを作りたいなと思います。
2020年には東京ガールズコレクションにも出られていますよね。
世の中のスタンダードが変わるといいなと思ったんです。
スタンダードを変える?
モデルって高身長で小顔で足の長い人しかできないっていうのがスタンダードだったと思うんですけど。
時代がどんどん変わってきていて、その人がその人ならではの美しさを表現できるのであればみんなモデルだと思っていて。
世の中の美しさの基準はこうであるって決める必要がない、ということをステージを通じて伝えたかったです。
手応えはどうでしたか?
大きな一歩を踏み出せたかなと思います。
「やっと低身長コンプレックスがなくなりました」とか、「世の中の低身長への見方が変わると思えたのでうれしいです」とか言ってもらえました。
見てくれた方々の人生観に影響を与えられたんだと思います。
低身長であることに窮屈さやコンプレックスを持っていた方にとって、社会的にすごく目立つところで「低身長を堂々と言っていいんだよ」というのを目にできたのはいいことだなと思います。
今後、どんなブランドに育てていきたいですか?
自分にピッタリサイズの服があるってすごい幸せなことだと思っていて。
なりたい自分になれる、あこがれていた自分に近づくことを「諦めなくていい」。
売っているのは服だけど私たちが提供しているのはそういう感情だと思っています。
素敵です。
でも、まだまだサイズや商品の展開が足りていないし、「絶対ネットでは買わない」って決めている人のところにも届かない。
ちゃんと必要としている人のところへ届けるっていうのは絶対にやらなきゃいけないと思ってます。
最後に、田中さんにとって「仕事」とは何か教えて下さい。
「自分の「好き」を通じて誰かに幸せを提供する」ことです。
やりたいことの先に、自己満足だけじゃなくて、誰かが喜んだり幸せになって初めて仕事になる。
相手がいてこその仕事だと思います。
はい。
最初は自分自身の着たい服がほしいって気持ちでブランドを始めました。
でも、今は誰かの生活に入れている感覚がどんどん強くなっています。
自分のプロダクトがこんなに必要としてもらえるのは本当に楽しくて、もっとみんなを幸せにしなきゃと感じています。
ありがとうございました。
編集:谷口碧 撮影:田嶋瑞貴
あわせてごらんください
先輩のニュース活用術
教えて先輩!COHINA代表 田中絢子さん【前編】 悩みが起業の原動力に
2022年01月14日
先輩のニュース活用術
教えて先輩! コピーライター阿部広太郎さん【前編】 人気コピーライターはこうしてうまれた!なりたい自分になるためのヒント
2021年12月10日
先輩のニュース活用術
教えて先輩!VERY編集長 今尾朝子さん【前編】 “届く”企画はどうつくる?
2021年07月09日
先輩のニュース活用術
教えて先輩! 気象予報士 斉田季実治さん【後編】 気象予報士になった理由
2021年09月28日
人事が選ぶマストニュース
サイゼリヤ 人事・採用担当者に聞く 苦境の飲食業 コロナ後に見据えるのは?
2021年12月15日
人事が選ぶマストニュース
ユニ・チャーム 人事担当者に聞く 家庭ゴミの8分の1! 使い捨てはもうやめよう
2021年11月24日