2020年03月19日
(聞き手:勝島杏奈 西澤沙奈)
テレビショッピングで1日2億1000万円を売り上げた記録を持つ実演販売士のレジェンド松下さん。どうしたら、そんなに売れるの?なぜ、人の心に届くの?仕事探し真っ最中の学生リポーターが聞き出した意外な秘けつは・・・。
実演販売ってどんなイメージありますか?会社というイメージある?
松下さん
学生
西澤
個人のイメージでした。
実演販売は、タレントと思われることが多いんですけど、実は物を売っている会社なんです。
ウチの会社は、売り上げの95%が東急ハンズやロフトなどに商品を卸していて、それで成り立っている会社なんです。
レジェンド松下さん
法政大学経済学部卒業後、マスコミ業界を中心に就活するも全滅。
挫折を味わい、当時は「この世の終わり」と感じる。
その後、実演販売士・和田守弘氏に弟子入り。
実績を上げながらも挫折を繰り返し、今に至る。
自分たちの商品を売るんですね。
そう。商品を開発したり海外で見つけた商品を仕入れて日本で売ったり。
どういう商品名にしたらいいかを考えるコピーライターみたいなこともやるし、商品をPRするストーリーを作って動画で撮るディレクターのような役割もするし、それをいろんな小売店にプレゼンしに行って、最後はテレビ出演もする。
学生
勝島
1から10までやってますね。
それが実演販売という仕事です。
実演販売士でおなじみのレジェンド松下さんが、人気企業の面接室を楽しく紹介するミニ番組。3月19日から「シーズン2」を放送。
部屋の広さや椅子の座り心地、面接室に隠された就活生へのメッセージを公開する。「シーズン1」はこちらで公開中。
実演販売をされていて、物の良さを伝えることがお上手だと思うんですけど、どういう事を意識しているんですか?
店頭でお客さんを相手に販売するときは全員に売ろうとしないということをすごく意識してます。
どういうことですか?
その場に100人いたとして、全員に売ろうとするとパーフェクトな商品にしなきゃいけないんですよ。それは難しいので、60%の人が買ってくれればいいとかあらかじめターゲットを設定するんです。
この商品を欲しいと思う60%の人は買った方がいい。欲しくない40%の人は買わなくていい、っていう線引きをすることがすごく重要です。
全員に好かれようと思うと結構しんどくなるんですよ。
そうなんですね。
それから、コンセプトを決めるんです。どういう人に買ってほしい、何歳ぐらいの人に買ってほしいのか。その中でこういう特長があるとか3つぐらいの軸を作りますね。
それだけをしゃべるとシンプルに伝わりやすいんです。料理もおいしくできて、掃除もできちゃいますみたいな、あれもこれもというのは、あまり求められてない。どんな商品かよくわからないから。
伝えたいことが伝わらないですよね。
そうそう。この商品はなにか、という重要な部分を際立たせて伝えるんです。その軸ができていると実演販売として整理されてしゃべりやすくなる。
欠点はどうするんですか?
欠点も言うようにしていますよ。絶対に100点の商品ってないし。
欠点も言うんですか?
言いますね。その代わり、商品にこういう良さがあるので、このぐらいは目をつむって下さいって言ったりします。隠す必要はないので。
私は就活の面接だと、面接官全員に気にいられようと思って取りつくろってしまうんですが…。
3人いたら2人に気に入られればいいんですよ!
面接ではどう言ったらいいんでしょうか。
たとえば何か例を言いましょうか。何がいいですか?
例えば、英語だとどうなりますか?
だったら、それをどう際立たせるかが大事。例えば、「私は国語がちょっと苦手なんですけど、そのかわり英語に関してはメチャクチャ得意です」って。
得意な方を際立せて「英語に関しては絶対的な自信があります」っていう軸を立てます。そこからあと3つぐらい、英語ができると、こんなことができる!となるとしゃべりやすいですよ。
たしかにそのほうが印象に残りますね。
レジェンドさんは、昔から話すのが得意だったんですか?
目立ちたがり屋ではありますけど、上手い方ではなかったですよ(笑)
じゃあ面接が得意だったわけでも…
わけでもないの。
意外!
最初から、うまくしゃべれるかどうかって、あんまり関係ないんですよ。
しゃべり続ける事がすごく重要で、ひとつできた“しゃべり”がどんどん肉づけされて“いいしゃべり”になるんで。
積み重ねが大事なんですね。
最初からうまいからって100回でやめた人と、最初は下手でも1000回しゃべった人とでは、1000回喋った人の方がうまくなるんですね。
それから、実演販売でもそうなんですけど、最初はうまいこと言ってやろうって時期があるんですけど、こういうやり方は全く響かない。
普通に真面目に一生懸命やってるのが一番売れる。
そうなんですか。
それは身に染みてわかっているので、まず一生懸命やり続けることです。うまいとか面白いことは必要なくて。
必要ないんですか?
一番売れるのは一生懸命しゃべっている、「熱売」っていう言い方を我々はするんです。汗を流しながら一生懸命ものを伝える、これが一番圧倒的に売れる。
ちょっとふざけた事や面白いこと言いながらやるのは「チャラ売」って言うんですけど。売れ方は熱売のほうが3倍ぐらい違う。
一生懸命さ、熱売、これが一番大事です。
思っていることを論理的に整理して相手に分かりやすく伝える方法はありますか?
実演販売の場合、ひとつの商品を極めると、次にその商品が来たら何でも答えられるようになるんですね。
面接も同じで、面接の時に聞かれた質問を友達にしてもらって「私はこう思います」って答えるのを繰り返すと、無駄なことばがそぎ落とされていって、短くて伝わる言葉になっていくんです。
回数を重ねることに意味があるということですか?
意味ありますね。質問は似通ってるじゃないですか。長いセリフは一番響かなくて、短く言うことが大事。
僕らで言うと「これいいよ」と言って売れたら一番最高!
僕の師匠なんか、70歳ぐらいですけど、もう喋らないでも売る。
えっ!どうやって売るんですか?(笑)
意味わからないでしょ(笑)でも、それは究極の売り方なんだよね。
新人の頃って、無駄にいろんな言葉を増やしていくんですね。
今まで伝えたいことが多すぎて、全部言ってたんですけど、それだと逆効果ですか?
そうですね。友だちに質問してもらって、それでパッと答える練習をいっぱいしておいたほうがいい。
100回、200回やるとできるようになる。完璧な答えが出来上がってくるんです。
そうですよね。最初から完璧にはならないですよね。練習してちゃんと準備しないと。
実際のお仕事も、そういったプロセスでやってきたんですか?
全部、失敗、失敗、失敗で、挫折と絶望の繰り返しです。
しゃべっていると「あ、これ無駄だな」って途中からわかってくるんですよね。お客さんの反応で「ああ、これ響いてないな」とか。
相手を見てわかるんですね。
僕らは同じ商品を同じように1日中しゃべり続ける。そうすると、ここで集中が切れるとか、わかってくるんですよ。
じゃあ、それを次に生かして改善して。
そう!ちょっとした修正を繰り返して、完璧な口上というか台本に近づいていく。それを繰り返していくと台本がなくても何でもしゃべれるようになる。
えー!すごい!台本というかエントリーシート通りにしゃべっちゃっているので、今(笑)。
繰り返し、繰り返し話していくと、間違いなくしゃべれるようになりますよ。
実演販売で活躍するレジェンド松下さん。でも就職活動は・・・、後編はこちらからご覧ください。