目指せ!時事問題マスター

1からわかる!「トランプ大統領とメディア」(3)“ツイッター大統領”のねらいは?

2020年09月09日
(聞き手:伊藤七海 佐々木快)

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トランプ大統領といえば、ツイッター。なぜ多用するの?その戦略は成功?自分でやっているの?トランプ大統領とツイッターにまつわるギモンをワシントン支局トランプ担当記者に1から聞きました。

なんでそんなにソーシャルメディアを更新するの?

学生
伊藤

トランプ大統領って、ソーシャルメディアの更新が多くないですか?大統領が自分でやっているんですか?

はっきりはわからないけど、“中の人”がいる、要するに別の人が更新しているとも言われているんですよね。

栗原
記者

話を聞いたのは、NHKワシントン支局で、トランプ大統領を間近で取材する栗原岳史記者。

でも、本人が投稿しているだろうなって時もあってね、特徴もあるんだよね。

どんな特徴ですか?

ホワイトハウスのスタッフが起きていないような早朝とか夜遅くとか、そういう時の投稿ってちょっと違うんですよね。

本音で、単語3つでツイートする、みたいなものとか。そういうときは「これ多分本人なんだろうな」って。

そうなんだ!

“アメリカを再び偉大に”ワシントン時間早朝の投稿。もしかして、トランプ大統領本人が…??
(トランプ大統領のツイッターより)

逆に何かに対するちゃんとした反論や声明は、日中にあって、それは比較的しっかりしているから、「あ、これは本人じゃないかもしれないな」「“中の人”がやっているのかな」って。

大統領のツイッターチェックはワシントン支局では日課だそうです。

学生
佐々木

更新が多い中で、注目すべき点はあるんですか。

それはもうなんでも注目ですよね。すごく重要な事を、ツイートでポッと出したりするんですよ。

例えば人事。閣僚ポストで、ツイッターで辞めさせられた人もいて、しかも、辞めさせられる当人もそのツイートを見てはじめて知るという…。

ええー!

ツイッター上で明らかにされた当時のティラーソン国務長官解任。
“CIAのポンペイオ長官が新しい国務長官になる”
“ティラーソン氏の(これまでの)仕事に感謝する”

(2018年3月の投稿 トランプ大統領のツイッターより)

重要な政策もツイッターで突然発表するんですよ

「補助金停止するぞ!」とかね。

「え、これ本当か?」ってなるんですけど。

ツイッターでの発言がそのまま記事になることもあるんですか?

私たちジャーナリストからすると、「ツイッターで言ったからって、(事実なのかどうか)大丈夫なのか?裏取らなきゃ(確認しなきゃ)いけないんじゃないの?」と思うんだけど・・・。

(取材しても)ホワイトハウスの人は「大統領のツイッターが全てだから、俺たちは知らないよ」っていうこともあるんですよね。

なぜ、そんな重要なこともツイッターでつぶやいちゃうんですか?

やっぱり、直接、国民に自分から発信できるからなんだと思います。

トランプ大統領は“ツイッター大統領”とも言われていますけど、それがトランプ大統領であるゆえんなんですよね。

どういうことですか?

トランプ大統領自身、一般のメディアのバイアスがかからない、直接国民に向けて発信できるソーシャルメディアを駆使して、世間の評判を裏切る形で、大統領になったわけじゃないですか。

直接、国民に自分から発信するというスタイルをとり続けて大統領になったので、やっぱりそのスタイルを続けているんだと思います。

なるほど。

メディアの世論調査でトランプ大統領にとって、厳しいという数字も出ていますよね。

でも、「そんなの信じる必要はない」「メディアがいろんなこと言ってるけど、全部フェイクニュースだ。真実はここにある」というのがトランプ大統領のスタンスですね。

ソーシャルメディアをやらなきゃ選挙に勝てない?

ほかの政治家と比べてもトランプ大統領はツイッターを使いこなしているんですか?

使いこなしているほうだと思いますよ。

ただ、アメリカ政治全体がもうツイッターになっているかなという気もしますけど。

ツイッターはアメリカ政治でも影響力が大きくなっているそうです

そうなんですね。

「私はツイッターやらないんだ」という態度をとったら、極論かもしれませんが、当選はできない。そういうのが許される時代ではありませんので。

力を入れているのはトランプさんだけではないんですね。

そうですね、アメリカ政治全体として、ツイッターの存在というのはかなり意識していると思いますね。

トランプ大統領の登場で、変わってきたということなんですか?

トランプ大統領が異例の大統領なので、そういう見方もできるかもしれませんけれども…

むしろ世の中全体が変わっていく中で、それにフィットしたトランプさんが当選して大統領になったって言った方が説明できると思うんですよね。

トランプ大統領が時代の流れにあっている、と。

そう。ソーシャルメディアが、社会的に比重が増してきたのはトランプ大統領から始まった事じゃなくて、アメリカ全体でそうなってきていた。

そこにツイッターを重視するトランプ大統領が選挙に勝った、という見方のほうが、いろんなことを説明できる気はしますね。

たしかに。

ソーシャルメディアは誰でもスマートフォンで見られる。そしてそのスマートフォンは常にポケットに入っているわけで。

そこで発信する術がないと、アメリカでは政治をやっていけないと思うんですよ。

そうした中でトランプ大統領の戦略はうまくハマったと思いますね。

テレビや新聞をあまり見ない人たちにも、SNSで発信できるということなんですね。

そうですね。みなさんの周りの友達も、新聞とってないでしょ、テレビも見てないでしょ。

「テレビ見てないでしょ?」栗原記者からの逆質問に・・・

(苦笑)

トランプ大統領の支持者って、高齢者ばかりかと思ったらそうでもなくて、集会に行くと、結構若い人いっぱいいるんですよね。

そうなんですか、意外です!

(会場に来ていたのは)やっぱりソーシャルメディアを見ている人たちなんですよね。

ソーシャルメディアも無視できない偽情報

トランプさんってソーシャルメディアに溶け込んでいるんですね。

これまでの大統領と比べて溶け込んでいるのは間違いないです。でも、最近、ちょっとした衝突も起きてますよ

衝突?

まず、ツイッターは、トランプ大統領の投稿に注意書きを付ける、まあ少しけんかを売るようなことをしたんですよね。

大統領選挙の投票方法を批判したトランプ大統領の投稿に、アメリカのツイッター社が「誤解を招く」として利用者に注意をよびかけた

(2020年5月の投稿 トランプ大統領のツイッターより)

これに怒ったトランプ大統領はソーシャルメディアが法律で保護されている特権みたいなのがあるんですけど、それを見直すよう求める内容の大統領令に署名したんです。

2020年5月 ホワイトハウスでソーシャルメディアを対象にした大統領令に署名

そして、さらにそのあとも、ツイッターが注意書きをつけて。けんかを売られて、また対決する姿勢を示すという泥仕合になっていますね。

そういうことになっているんですね。

こうした動きはツイッターだけじゃなくて、ソーシャルメディア全体に広がっているんです。

フェイスブックとかも?

トランプ大統領のフェイスブックより

そうですね。フェイスブックは当初は「インターネットの警察にはならない」という立場を取っていたのですが、批判も出て…。

その批判に応える形で積極的に不適切な投稿を削除するようになりました

2020年8月、トランプ大統領が「子どもには新型コロナウイルスに対する実質的な免疫がある」と語る動画を誤った主張が含まれているとして削除。

以前からこうしたことってあったんですか?

ここ最近、厳しい対応は増えていますね。というのも、ここに来て、深刻な偽情報が相次いで出回っているからなんです。

選挙が近づいてくると、根拠のないデマが拡散したり、発言が本来の文脈とは違う方法で伝わったりすることはあるんですよ。

フェイクニュースですね。

ただ、今回は、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻で、ひとつのデマが人の命を奪うかもしれない

たしかに命にかかわる問題ですよね。

ソーシャルメディアも、こうした状況で、自分たちのプラットフォーム上に蔓延している情報を野放しにできなかった、という事情があったのではないでしょうか。

いずれにしても、ことし秋の大統領選挙は、ソーシャルメディアと政治、そして有権者の投票行動の関係が試される壮大な実験場になるのだろうと思います

次回は、新型コロナウイルスの影響を受ける「“異例”だらけの大統領選挙」を中心にお伝えします。近日公開です。

 

編集 吉川那奈

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