目指せ!時事問題マスター

1からわかる!プラスチックごみ問題(2)

2019年07月09日
(聞き手:高橋薫 田嶋あいか)

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「2050年の海は、魚よりもプラスチックごみのほうが多くなるかもしれない」。こんな衝撃的な予測もあることをご存じでしたか?とりわけ、日本は“プラごみの排出大国”…、未来のために、いま、できることは?

解説してくれたのは、科学番組のディレクター出身で、環境問題などを担当する土屋敏之解説委員です。後編は対策編。“プラごみ排出大国”日本の今後と、私たちひとりひとりができることを真剣に考えます。

1からわかる!プラスチックごみ問題(1)~取り返しがつかないことになる前に~はこちらからご覧ください。

まだ間に合う?日本はどうするの?

学生
高橋

今後の対策についてですが、レジ袋が有料になるかどうかが消費者的には気になっています。世界ではもう有料化されている国が多いんですよね。

そうですね、ヨーロッパでは有料化を義務づけている国が多いですね。あと、海外では企業の自主的な取り組みも活発ですしね。

土屋
解説委員

学生
田嶋

スタバとかですよね。

そうそう。スターバックスは早々にプラスチックストローはやめますと宣言したよね。

日本でも今後レジ袋は有料化されるんですか?

そうですね。経済産業省は、来年4月にもレジ袋の有料化を小売店に義務づける方針を示しています。

大きなスーパーでも小さな個人商店でもですか?

スーパーやコンビニなど全国の小売店が対象になる見通しですが、小規模事業者の負担軽減など細部はまだつめられていません。

素材や大きさなどどういった種類の袋を対象にするかもまだ決まっていません。そもそも「レジ袋って何?」という定義自体が難しいんだよね。

洋服屋さんで、袋に入れてもらえなかったら困りますよね。

そうそう、困るよね。街で洋服屋さんを見て、いいのがあったら、袋のありなしにかかわらず買いたいもんね。

はい。

H&Mは有料の紙袋にしたんですよ。自分で袋を持って行けばお得になるけど、なければ有料で紙袋に入れますと。衣料系はあれがひとつのパターンになるんじゃないかな。

あと、将来的にはおそらく使い捨てプラではない素材が出てくると思います。

開発されるということですか?

今も石油系ではないプラスチックとか、海洋中で分解するプラスチック製の素材の開発は進められています。でもまだ普及していない。

使っている企業はないんですか?

あるけどすごく少ないですね。

ネックはコスト面ですか?

そうですね。あとは性能的にも問題があって、今のビニール袋ってやわらかくて丈夫でしょう。

バイオ系のプラスチックは、かたくてもろいものが多い。使い勝手とコストの問題でまだ普及していないんです。

日本がやろうとしている対策って、レジ袋の有料化以外にはどんなことがあるんですか?

5月に政府が策定した「プラスチック資源循環戦略」では、レジ袋の有料化を小売店に義務づけたり、再生可能な素材への代替を進めたりして、使い捨てプラスチックの排出量を2030年までに25%抑制する目標を掲げています。

達成するためには使う側もかなり意識してプラスチックを減らしていかないといけない。

「3R」ってあるじゃないですか。

ごみを減らす「Reduce(リデュース)」

使い続ける「Reuse(リユース)」

再利用する「Recycle(リサイクル)」

この「3R」を日本でもっと進めていくためにはどうしたらいいと思いますか?

「3R」にも優先順位があって、リサイクルは最後なんですよ。リデュース、リユース、リサイクルの順に優れている。

まずリデュース。生産と使用をそもそも減らしていけば、リサイクルも処分の問題も生じないでしょう。

具体的にはどうすれば?

使い捨てプラスチックって身近に何があるだろうと考えて、その使用をなるべく減らす。

ペットボトルではなく、水筒を持って行く。マイバッグを持って行ってレジ袋はもらわない。ごみはちゃんと分別して出す。

弁当のプラ容器をきれいに洗って出すことも大切です。

汚れたプラごみはリサイクルできないというお話がありましたもんね。

そう。バーゼル条約で輸出が規制されたのもプラゴミすべてではなくて、「汚れたプラゴミ」だったでしょう。

確かにそうでしたね。

洗浄に手間がかかるとコストがかかりすぎて、リサイクルにまわせなくなってしまうんです。

きれいにというのは、自分で少し洗うぐらいでもいいんですか?

それでいいと思います。

プラスチックのリサイクルってやっぱり難しいんですか?

プラスチックって再生を繰り返すと、品質が劣化するんです。同じ素材での再利用は結構難しい。もともとリサイクルを前提に開発された物質ではないのでね。

そうなんですね。

あと、原料費が安いことが売りなので、石油から作るのに比べて、回収して分別して溶かして…溶かすのにも結構熱がいるから、トータルで安上がりにはならないんですよね。

ペットボトルだったら、本体と周りのフィルムとキャップ…ちょっとずつ違う素材なので、全部分解しないとリサイクルルートには乗らないし。

リサイクルしようとすると相当な手間がかかって、割に合わないんです。

割高だと売れないし、買ってくれないとそもそもリサイクルする意味がないですもんね。

そう。割に合うようにするためには、生産の段階でリサイクルコストも含めた値段にしていくしかない。ただ、そうするとプラ製品全体の値段が上がることになる。

そもそもね、プラスチックがなぜ安いかというと…2人は何学部なんだっけ?

2人とも商学部です。

経済用語なんだけど、「費用の内部化、外部化」って大学で習いました?

聞いたことはありますが…。

モノの値段にどこまで含めますかという考え方なんだけど。プラスチックごみの廃棄は、私たちの税金を使って自治体がやっている。

それってプラスチックを作らなければ必要なかったコストなんだけど、企業はプラスチック製品を売る値段にそれは含めていないんです。これが「費用が外部化されている」ということ。だから安く見えている。

結局は自分たちが負担しないといけないのに。

そうそう。環境問題がクローズアップされるにしたがって、モノの値段は、ライフサイクル全体で考えなきゃ、処分費用まできちんと内部化しておくべきという考え方が出てきている。

産業界は安く売れたほうがいいし、抵抗感はあるけどね。費用の外部化・内部化も今後大きなテーマになると思います。

この問題を取材するにあたって調べてみたら、ノルウェーでは、飲料の価格を2倍にして返却した際に半分返ってくる制度があるそうですね。

デポジットね。

こういう取り組みって日本で行われる可能性はありますか?

2倍は日本ではなかなか難しいと思うけど。でもね、日本でもあるといえばあるんですよ。ビール瓶を酒屋さんに返すと5円くれたり。

回収に協力すると得をする仕組みを作っていくのは十分ありうる選択肢だと思います。

そういうのがあれば意識が変わりますよね。

ですね。レジ袋って、プラスでお金を払わなきゃいけないからみんな抵抗感があるんだけど、回収したり、使わない、減らすことによってメリットがあるようにしてくれたらいいと思うんですよね。

そのためには、処分費用を製品価格に内部化しておいて、回収に協力するなどすれば戻ってくる形にしていくべきだろうなと。

地元の商店街で、ペットボトルを回収の機械に入れたら何本かに1本当たりが出て、商店街で安く買い物できるというのがありました。

へえ~。おもしろい。

それはいいですね。

たとえば拾ったペットボトルでくじが引けたりしたら、子どもが拾ってくれたりするんじゃないかな。

楽しくできるといいですよね。苦痛にならず。

ところで2人は、プラごみを減らすために意識していることって何かありますか?

レジ袋をなるべくもらわないとか、コンビニのスプーンやストローはもらわないようにしています。

私もレジ袋は小さいものは、もらわないです。でも、スプーンは洗うのが面倒で・・・、ついもらってしまいます。

レジ袋も、1人暮らしとかだとごみを出すときの袋に使えるから重宝するんだよね。

そうなんですよね…。紙袋ってごみを入れるのに使いにくいですしね。

自治体によっては、ごみ袋を指定された培養系のビニールにしているところもあるんですよ。

そういう燃やしてもいい素材のごみ袋にかえて、しかも有料で、「必ずこれに入れてください」ということにすると、その袋を買う枚数を減らしたいからごみを減らすことにつながる。

あと、海外では、家庭ごみの引き取りを有料化しているところもある。専用の容器に入れてごみを出すんですけど、引き取り料が1個いくらと決まっているから、ごみを減らしたほうがお得になる。

それいいですね。

ひとつ疑問なんですけど、紙袋の使用量が増えるのはいいんですか?森林伐採につながるんじゃないのかなと思うんですけど。

確かに数十年前は、紙の使用を減らさないと東南アジアの熱帯雨林の伐採が進んで…という問題があったんですけど。

実はその後、紙と木材については世界的に対策が進んで、今は紙を作るための森林の多くは、製紙メーカーなどが植林していて、国際的に循環利用する仕組みができているんです。

そうなんですね。

何がエコなのかというのは時代とともに変わっていく。

製紙業が森林伐採の問題に向き合ってきたように、いずれはプラスチックもどうにかして問題を乗り越える知恵が出てくると思います。

新しい素材の開発がやっぱり一番近道なんですかね。

そうですね。今のペットボトルが流通してる間はとりあえずリデュースを進めていって、その間に革新的な新素材を生み出したい。環境負荷の少ない新素材ができたら世界中に売れるので、ビジネス的にもおいしいしね。

私たちのまわりには、プラスチックがあふれている。使わないのはもう無理だけど、取り返しがつかないことになる前に…ちゃんと意識して、できることから始めようと思いました。ありがとうございました。

 

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