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コラム ママの感じる孤独の正体は②

こんにちは、このサイトを担当している記者の大窪奈緒子と岡田真理紗です。
前回から(https://www3.nhk.or.jp/news/special/kosodate/article/article_190621.html) ひとりぼっちの夜にそっとお届けする、「ラジオのようなサイト」になっていきたい、ということで、頂いたご意見を単に紹介するのではなく、2人でラジオのように読ませて頂きながら、話した内容をコラムにする試みをしております。
今回のテーマは、前回に続き「孤独」です。

岡田
まずは滋賀県の30代、まゆみさんです。

まゆみさん(30代・滋賀県)
実家から遠く離れた主人の故郷で出産・孤育てをしています。いちいち口に出してアピールするのが憚られるような、小さな困難や我慢、苦痛が積み重なり限界を超えた時、どうにもならなくなって叫びながら床や壁を何度も殴りつけてしまいます。限界の次の一線を超えたら、この手が幼い息子に向かうのではないか、それを理性で止められないのではないか、不安と自分に対する不信・嫌悪感を感じています。

夫の転勤などで、自分の慣れ親しんだ土地を離れて子育てされている方が多いのですが、この方もやっぱりご自身の実家からは離れて、旦那さんの故郷にいらっしゃるんですね。 短いメッセージの中ですごくストレスを感じてらっしゃることが伝わってきました。

なかでも「小さな困難や我慢」という表現が、すごくわかるなと思って。
1つ1つは小さくても、子育てって、その小さなことがどんどん積み重なっていくじゃないですか。他の人に言っても、「そんな小さなことで?」って言われてしまうようなことなんですけど、積み重なっている本人にしかわからない辛さがあって、その落差にまた苦しむというか。辛さがわかってもらえない。

大窪
ああ、理解してもらえないっていう。

岡田
ひとつひとつは小さいことだって、自分でも思っているだけにね。
「床や壁を殴りつけてしまう」って書いていらして、これが子供に向かうんじゃないかという不安と、自分に対する不信感を感じていて。つらいですよね。状況が詳しくはわかりませんが、子どもと離れて自分だけの時間も持つとかそういうことを、ご本人が言い出しにくいなら、むしろ周りが声をかけて、してあげて欲しいなってすごく思います。

大窪
「口に出すほどではない」っていうのがすごくよくわかります。
これぐらいでとか、我慢しなきゃとか思いながら、冷静になろうと頑張っているんだなぁ、すごく一生懸命育児されているんだろうなと思います。でも、どなたにも話せないからこそ壁を殴ってしまっている。伝えられないし、理解されないっていうことは、切ないです・・・。素直につらいとか、こうして欲しいとか、話しやすい雰囲気になったらいいのになぁって思います。

岡田
母親だから我慢すべきだ、という雰囲気があると、小さな不満だと言いづらくなっちゃいますよね。

後は、まゆみさん地元から離れていらっしゃるから、小さなことでも話せるご友人が近くにいらっしゃったら違うんじゃないかなと・・・前回の記事でも紹介しましたが、人間関係がリセットされて、気軽に話せる人が近くにいない状態で育児しなければいけない。そのことで悩んでるお母さんが多いですよね。 どんな小さなこともで、言っていいんだよっていうふうに空気を変えていきたいですね。 次は東京都のむぎさんの投稿です。

むぎさん(40代・東京都)
産後から今日まで4年間、ほぼワンオペで過ごしています。両親は遠方、夫は仕事や趣味でほぼ不在、0歳の時は今思うと話し相手がおらず孤独で、授乳で1-2時間しかまとまって眠れず、ママが見えないと泣く子だったためあやし続けながら掃除や洗濯、食事作りに追われ、体力的にも辛く今思うと鬱か鬱に近い状態だったと思います。誰かに助けてもらいたかったけど、みんながやっている子育てを私だけできないのではないか、ママの素質がないと思われないかと、行政などに相談することもできませんでした。記事にもあった下記のような産後うつになりやすい気質についての記述を読むと自分を否定されているような気持ちになり、更に落ち込みました。きちょうめんで真面目・何らかの心的ストレスがあり、精神科の通院歴がある・周囲のサポートが受けられない・生活上のストレスがある・意図しない妊娠である・パートナーとの結び付きが弱い、などがあげられるとしています。区の方が訪問して下さっても、子育てはしんどいというと、「大丈夫かな」という顔をされるので、「でも楽しい」と嘘をついていました。そういった見栄を除いても区などからのサポートは、申し込みという壁が育児中は非常に高く、産後の全ママに有無を言わさず、週に一度1ヶ月に一回でもいい2時間ほどどなたか派遣して家事を手伝って欲しいと思いました。保育園に通うようになり、家事育児100%と仕事との両立で新しい問題が発生しましたが、子どもが成長しママ友ができ同じような悩みや少しの喜びを共有することで少しずつ子育ても楽しいと思えることも増えました。

岡田
「みんなができているのに私だけできないと言えなかった」と書いてくださってます。
1人で育児をしていると、自分がどの位置にいるかわからないですよね。自分は育児がちゃんとできているのか、できてないのか。不安なことがあると、「自分だけできてないんじゃないか」と思いがちになってしまう、それがすごく伝わってきました。

大窪
そうですよね、きっと身近に話せる方もいなくて。
区の訪問の時に「でも楽しい」と嘘をついてしまいました、って書いてらっしゃって、育児は楽しくあるべきだっていう母親の呪縛みたいなものを感じました。

岡田
私も経験ありますけど、なんか、頑張っちゃうんですよね、役所の方に訪問された時って。

大窪
そうそう、必要以上に掃除しちゃったりとかして!

岡田
そうなんですよね。見栄張っちゃうなと私も思って。
よく家族の介護をされている方が、「うちのおじいちゃん、認知症なんだけど、要介護認定を受ける時だけしゃきっとしちゃって、認定が軽くなっちゃう(注:要介護認定が軽いと使える介護サービスが少なくなってしまう)」っていうことありますよね。

大窪
介護のあるあるで、ありますよね!

岡田
そうそう、しゃきっとしなくちゃというか、「まだまだ出来る」って見栄を張っちゃうんでしょうね。
子育ても、辛くてもその時は「自分はできています」って言いたくなっちゃうっていうか。

大窪 だめな母親と思われたくない、というのはありますよね。
そんなプレッシャーの中、豊田市で、事件を起こしてしまった3つ子のお母さんは、健診時のアンケートで「子供の口をふさいだことがある」と申し出ていた。これ、本当にすごいSOSなんだなって。

岡田
たしかに、あとちょっとで「子供を手にかけてしまうんじゃないか」っていう不安を、自分から言ってくれたわけですもんね。それなのに結果的に事件が起きてしまったのは本当に悔やまれます。

大窪
本当に素直になるのは難しくて、SOS出すのも難しいです。
楽しいって嘘ついてしまうお母さんたちがたくさんいるんじゃないかな。私もそうですけど。

岡田
むぎさんは、「区などからのサポートは、申し込みという壁が育児中は非常に高かった」と書いてらっしゃいます。
市区町村がやっているいろいろな支援、たとえばヘルパーの派遣サービスとかありますけど、利用するには全部自分で調べてたどり着いて申し込んでという努力が必要で、これを産後に電話一本かけるのも大変な時にやるというのは・・・

大窪
ハードル高いですよねほんとに。

岡田
むぎさんは「産後の全ママに有無を言わさず、週に一度1ヶ月に一回でもいい2時間ほどどなたか派遣して家事を手伝って欲しい」と書いてくださっていますが、これ、いいアイデアですね(笑)

大窪
本当に欲しいなと思います。区の保健師さんなどの訪問も、発育のチェックとかをするときにそれに合わせて「2時間寝ていいわよ」って赤ちゃんを預かってくれるとか、そういうのがあったらいいですよね。
体重を測ってくれて、育児の悩みに相談に乗ってくれて、「後は2時間好きにしていい」とか・・・
求めすぎですかね?どうなんでしょう。

岡田
うーん、結構、自治体も、支援のメニュー自体はいろいろ用意してくれていると思うんですけど、手続きが大変。産後は赤ちゃんの世話だけでいっぱいいっぱいなので、手続きを簡単にしてくれるだけで、今あるメニューがもっと使いやすく便利と感じられるようになるかも。
利用者の側が頑張らなくてもするっとサポートに入っていける、シームレスに行ける仕組みにしてほしいっていうのは思いますね。

大窪
私も仕事に復帰して、余裕が出来てから初めて「こんな制度があったんだ」って気づいたものもありました。
産後すぐは何か調べるのも大変だし、支援にたどり着くのが難しいので、ぜひ助けて欲しいなと思います。

岡田
子育てで誰も頼れないという方、本当に多いじゃないですか、そういう中でせっかくある公的なサポートって命綱になりますよね。
これだけ事件も起きてしまっているのだから、「放っておいたら事件が起こる」という危機感を持って、ただメニューを用意して待っているんじゃなくて、確実に届けるように、仕組みを工夫していただきたいと感じます。

あと、この方は今保育園に通うようになって仕事との両立が大変だけど共有できる友達ができたことで少しずつ楽しくなったって書いていらして、私もこれはすごく感じます。

大窪
あ、どうですか?復帰されて。

岡田
私は去年秋に仕事に復帰して、日々話せる相手がいるっていうのがすごくありがたいです。こうやって職場の子育て中の人と話して共感してもらえる、そうだよねって言ってもらえることが何より嬉しいことです。辛いことを辛いって言える相手がいないのが辛いと思うので。

大窪
確かにその通りだと思います。
ここはちょっと職場の愚痴になっちゃうんですけど、同じ会社でも、この部署に来るまでは職場に子育て中の記者が1人ぐらいしかいなくて、常にどこかで孤独だったんです。
どこに行ってもアウェイという感じで。
だから、同じような悩みを共有できること、私たちで言えば職場で同じように子育てしている人と話し合えること、わかってもらえるっていうことが大事だなと思います。そのことが「これぐらい我慢しなきゃ」っていうのをなくすことにつながるかな。我慢せず、言う!

岡田
職場がなかったとしても、生まれ育った場所で子育て出来るなら、同年代の友達が同じ時期に子育てしていて、横のつながりがあって孤独感を感じないのかもしれませんね。でもやっぱり夫の転勤とか、東京に出てきて友人がいないとかの場合、ゼロから友達を作っていきなりプライベートな育児の辛さを言うのって、相手にどう思われるか、引かれちゃうんじゃないかとか、都市部だとハードルがありますよね。

大窪
どうしても「マンション育児」ですよね。ご近所みんな知り合い、みたいなところじゃないし、マンションもオートロックで閉じていて気軽に交流できない。
ママ友を作ろうとしても、相手の方がどういう家庭環境かなとか気になって、どこまで自分のことを話していいかなぁとか、迷う方多いかもしれません。

岡田
私も育休中は子育て支援センターに行っていましたけど、顔見知りにはなっても、連絡先を交換したっていうことはなくて。

大窪
行くだけで疲れちゃいますよね。

岡田
連絡先を交換しようって言い出すのが結構ハードル高いなって思います。その場の雰囲気にもよると思うんですけれども。

大窪
私は1人目の時に支援センターで知り合いになって仲良くなった方がいて、でもやっぱり仕事復帰とかのタイミングで引っ越したり離れてしまったりとかして。
仕事のために人間関係がぶつぶつと切れてしまうっていうのは、現代的なのかもしれないですね。

今回はここまでです。
毎回、共感すること、考えることが多くて、話が尽きません。
もしよろしければ、引き続き、ご意見を紹介していきたいと思います。
みなさまからのご意見、体験、お待ちしています。
投稿フォームへはこちらから。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/kosodate/index.html#form

前回の記事「コラム・ママの感じる孤独の正体は?①」はこちらからお読み下さい。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/kosodate/article/article_190621.html

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