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10年前の逮捕歴わかるツイート
削除認めるか2022年6月24日判決
第2小法廷

どんな
裁判か

  • 10年前の逮捕歴がわかるツイートの削除を認めるかどうかが争われた裁判
  • 争われたケースでは「プライバシーの保護が優先」として削除を命じた
  • 裁判官4人全員一致の結論 1人が補足意見を述べた

2012年に建造物侵入の疑いで逮捕された男性は、略式命令を受けて罰金10万円を納めましたが、その後もツイッターで名前や容疑が分かる逮捕時の報道を引用した投稿が閲覧できる状態になっていて、就職活動に支障が出たなどと主張して、ツイッター社にツイートの削除を求めました。

1審は削除を認めましたが、2審は認めず、男性が上告しました。判決で、最高裁判所第2小法廷は「逮捕から時間がたっていて、すでに刑の効力はなく、ツイートに引用された報道もすでに削除されていて公益性は小さくなっている」と指摘しました。そのうえで「投稿はいずれも逮捕の事実を速報することを目的にしていたとみられ、長期間にわたり閲覧されることを想定していたとは認めがたい。男性は公益的な立場でもない」として、今回の投稿については、社会に情報を提供し続ける必要性よりもプライバシーの保護が上回ると判断し、2審判決を取り消して投稿を削除するよう命じました。

逮捕歴に関するツイッターの投稿の削除をめぐる最高裁判決は初めてで、4人の裁判官全員一致の結論でした。このうち1人は結論に賛成の立場で補足する意見を述べました。

ネット上の情報とプライバシー

インターネット上で公開された書き込みや個人情報などは、拡散されると消し去ることが困難なため、入れ墨に例えて「デジタルタトゥー」とも呼ばれ、2014年にはEUで「忘れられる権利」を認める司法判断が示されました。
日本では2017年に最高裁が「グーグル」に対する仮処分の決定で、ネット上の情報をプラットフォームの提供事業者が削除できるのは、社会的な関心の高さや、本人が受ける損害などの事情をもとに、情報を社会に提供する事業者の役割や表現の自由よりもプライバシーの保護が明らかに優先される場合だという基準を初めて示し、削除を認めませんでした。

今回の裁判でもこの基準をもとに判断が行われ、2審の東京高裁はツイッター投稿も検索サイトと同様に考えるべきだと判断して削除を認めませんでしたが、最高裁は、逮捕時からの時間の経過に加え、速報性というツイッターの特徴に注目して削除を認めました。

この裁判についての最高裁判所の資料はこちら(NHKサイトを離れます)

審査対象だった裁判官たちの判断は

審査対象ではなかった裁判官の判断は