大嘗宮の儀

天皇陛下の即位に伴う「大嘗祭(だいじょうさい)」の中心的な儀式「大嘗宮の儀(だいじょうきゅうのぎ)」が、14日夜から15日未明にかけて皇居で行われ、天皇陛下が、国と国民の安寧や五穀豊穣などを祈られました。

天皇陛下は、14日夜6時半前、皇居 東御苑に設営された「大嘗宮」の奥にある「廻立殿(かいりゅうでん)」を出て、廊下に姿を見せられました。

暗闇の中、廊下は、火の明かりで照らされ、天皇陛下は、最も格式の高い「御祭服(ごさいふく)」という白い装束に身を包んで、ゆっくりと歩みを進められました。

この際、天皇陛下の前を、歴代天皇に伝わる「三種の神器」のうちの剣と曲玉を携えた侍従が進み、天皇陛下の上には、「御菅蓋(おかんがい)」と呼ばれるかさがかざされました。そして、午後6時半すぎ、天皇陛下が「悠紀殿(ゆきでん)」に入られて、「大嘗宮の儀」の前半にあたる「悠紀殿供饌の儀(きょうせんのぎ)」が始まりました。

一方、皇后さまは、純白の十二単に身を包み、「おすべらかし」と呼ばれる髪型で、ゆっくりと廊下を進まれました。

皇后さまは、「悠紀殿」の脇にある「帳殿(ちょうでん)」に入り、「悠紀殿」に向かって拝礼したあと退出されました。

続いて、皇室の祭祀をつかさどる掌典(しょうてん)が、「警蹕(けいひつ)」と呼ばれる発声を行うと、天皇陛下が入られた「悠紀殿」に、栃木県の「斎田(さいでん)」という田んぼで収穫された米など、供え物の「神饌(しんせん)」が運び込まれました。

そして、天皇陛下が、天照大神とすべての神々に「神饌」を供えたあと、拝礼して、日本古来のことばで記した「御告文(おつげぶみ)」を読み上げられました。

このあとお供えの米などをみずからも食べる「直会(なおらい)」が行われ、国と国民の安寧や五穀豊穣などを祈られました。

天皇陛下は、午後9時すぎ、「悠紀殿」から退出されて「悠紀殿供饌の儀」が終わりました。

大嘗宮 儀式は未明まで続いた 令和元年(2018)年11月15日午前1時32分

このあと、15日午前0時半ごろ、天皇陛下は、再び「大嘗宮」の廊下に姿を見せ、今度は「主基殿(すきでん)」で儀式の後半にあたる「主基殿供饌の儀」に臨まれました。

「主基殿」には、京都府の「斎田」で収穫された米などが運び込まれ、天皇陛下は、「悠紀殿」と同様、神々に米などを供えたうえでみずからも食べ、国と国民の安寧や五穀豊穣などを祈られました。

「主基殿」での儀式が終了したのは午前3時15分ごろで、安倍総理大臣など三権の長や閣僚、それに各界の代表など425人が儀式の様子を見守りました。

「大嘗宮」には大小30余の建物

「大嘗宮」は皇居・東御苑に設営されたもので、およそ90メートル四方の敷地に大小30余りの建物が建てられています。

主要な建物とされるのは中央の左右に配置されている「悠紀殿」と「主基殿」です。

それぞれ、東の「悠紀」地方に選ばれた栃木県の米や、西の「主基」地方に選ばれた京都府の米などが供えられ、儀式では天皇陛下が中に入って国と国民の安寧や五穀豊じょうなどを祈られます。

「悠紀殿」と「主基殿」の奥には廊下でつながった「廻立殿」があります。

「大嘗宮の儀」に先立ち、天皇皇后両陛下が身を清めたり着替えられたりする建物で、儀式の参列者は、天皇陛下が「廻立殿」を出て屋根のある廊下を通り、「悠紀殿」や「主基殿」に入られる様子を見守ります。

皇后さまは天皇陛下と同じように「廻立殿」を出て廊下を進んだあと「悠紀殿」と「主基殿」のそばにある「帳殿」に入って拝礼されます。

また、秋篠宮さまは「悠紀殿」と「主基殿」の手前にそれぞれ設けられた「小忌幄舎(おみあくしゃ)」に、女性の皇族方は、「悠紀殿」と「主基殿」の間に設けられた「殿外小忌幄舎(でんがいおみあくしゃ)」に入って拝礼されます。

天皇陛下が入られる「悠紀殿」と「主基殿」のほか、皇族方が入られる建物などが設けられた区域は「柴垣(しばがき)」という高さ1メートルほどの垣根で囲われ、四方には門が設けられています。

一般の参列者は「柴垣」の外にある「幄舎(あくしゃ)」という建物に入り、儀式の様子を見守ります。

「大嘗宮」にはこのほか、宮内庁の「楽部(がくぶ)」が雅楽を演奏する建物や全国の都道府県から集められた特産物が並べられる建物、それにかがり火をたく建物などが設けられています。

「大嘗宮」は儀式のあと、21日から12月8日までの18日間の日程で一般参観が行われ、その後、解体されることになっています。

“神々のための衣”が供えられる

平成の大嘗祭に納められた麻織物「麁服」

「大嘗宮の儀」では、天皇陛下が拝礼される「悠紀殿」と「主基殿」の中に、「※にぎ服(にぎたえ)」と「麁服(あらたえ)」という神々のための衣とも言われる織物が供えられます。

「にぎ服」は白い絹の織物のことで、2反分の絹を芯に巻きつけた巻物2本が供えられます。

一方「麁服」は麻で織られたさらし布のことで、1反ずつ折り畳まれた反物が4反供えられます。

古くから「にぎ服」は今の愛知県、「麁服」は今の徳島県から納められることが慣例となっていて、前回、平成2年の「大嘗祭」でも両県から調達されています。

今回も慣例を踏まえて両県から調達することになり、宮内庁は前回のノウハウを受け継ぐ愛知県と徳島県の法人や個人に伝統を尊重した手法での制作を依頼し、先月、皇居に納入されました。

※「にぎ」は、糸へんに「曾」

全国47都道府県から221品目の特産品が並ぶ

「大嘗宮の儀」では「庭積の机代物(にわづみのつくえしろもの)」と呼ばれる全国各地の特産物が「大嘗宮」の庭に並べられ、神々に向けて披露されます。

これらの特産物は、宮内庁が47の都道府県に対し、米とあわに加えて5品目を上限に品目の推薦などを依頼し、推薦のあった各地の農産物や海産物などを購入して調達しました。

特産物は米とあわ以外に延べ221品目に上り、北海道の昆布や静岡県のお茶、それに愛媛県のみかんや沖縄県のゴーヤーなどが集められました。

これらの特産物は先月から順次、皇居に運び込まれ、各地から品々を持ち込んだ生産者らには宮内庁の幹部が中身を確認したうえでお礼のことばを述べました。

「大嘗宮の儀」では「悠紀殿」と「主基殿」のそばにある「庭積帳殿(にわづみのちょうでん)」に並べられ、神々に披露されることになっています。

大嘗宮には宮内庁職員や皇宮警察が居並ぶ

「大嘗宮の儀」では「庭上参役者(ていじょうさんえきしゃ)」と呼ばれる装束姿の宮内庁職員や皇宮警察の護衛官が多い時で32人居並びます。

このうち「大嘗宮」の南の「神門(しんもん)」の内側には儀式の威儀を整える「威儀の者(いぎのもの)」が、左右に6人ずつ並びます。

「威儀の者」は黒やひ色の武官の装束の上に「小忌衣(おみごろも)」を羽織り、太刀と弓矢を携えていて、宮内庁の職員がおおむね30分ごとに交代しながら務めます。

また、四方の「神門」の外側には門の警備を担う「衛門(えもん)」が並びます。

「衛門」は日頃から皇居の警備などを担っている皇宮警察の護衛官が務め、薄い藍色の「はなだ色」の武官の装束の上に、同じく「小忌衣」を羽織り、太刀と弓矢を携えています。

「衛門」は儀式の間は合わせて20人が、それ以外の時間帯は8人が配置につくことになっています。

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