2023年1月17日
スイス 経済 気候変動 ヨーロッパ

「ダボス会議」って? 世界のリーダーが結集するすごい会議

世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」が始まりました。
世界の政治や経済のリーダー、それに有識者がスイス・アルプスの高地に一堂に集まり、その時々の世界の諸課題について議論します。

雪に覆われる雄大な自然の中で、世界がかかえる課題について意見を交わす会議、ことしは何がポイントなのでしょうか。

(ワシントン支局記者 小田島拓也 / ヨーロッパ総局記者 田村銀河)

そもそも「ダボス会議」って?

ひとことで言うと世界最高峰のリーダーたちが今の課題を議論する場ですね。企業のトップ、政治家、そして学者など、その分野のトップたちが一堂に集まる会議です。

ダボス会議=世界経済フォーラム年次総会の会場

どんな人たちが集まるの?

集まるメンバーは毎回、かなり豪華です。ことしもドイツのショルツ首相やEU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長をはじめ50人あまりの国家元首および政府代表、それに民間企業の経営トップなど130の国と地域からおよそ2700人が参加する予定です。

ドイツ ショルツ首相(左) EU フォンデアライエン委員長(右)

また、出席予定のメンバーには国際経済や金融について鋭い洞察を示してきたアメリカの元財務長官サマーズ氏や、著名な歴史家ファーガソン氏、それにニクソン元大統領の訪中・訪ソを実現し、フォード政権で国務長官を務めたキッシンジャー氏も99歳と高齢ながらオンラインで参加するようです。

左から サマーズ元米財務長官 歴史家のファーガソン氏 キッシンジャー元米国務長官

どのような歴史があるのか?

現在も会長を務める、クラウス・シュワブ氏が今から50年以上前の1971年に創設しました。

世界経済フォーラム会長 クラウス・シュワブ氏

世界経済フォーラムによると、当初の名称は、「ヨーロッパ経営フォーラム」。経営者は、株主や顧客だけでなく、従業員や地域社会などすべての利害関係者に配慮しなくてはならない、という理念を掲げていました。

毎年1月に年次総会を開き、ヨーロッパおよびその他の地域のビジネスリーダーを招いていましたが、1973年に転換点を迎えます。

ブレトンウッズ協定に基づく固定相場制の崩壊と第4次中東戦争の開始をうけて、テーマを「経営」から「経済および社会の諸問題」へと拡大。

第4次中東戦争(1973年・ゴラン高原)

1974年1月には、初めて政治指導者をダボスに招きました。そして1987年に「世界経済フォーラム」に名称を変更。2015年には、世界経済フォーラムが国際機関として正式に認定され、官民が連携してその時々の世界の諸課題への解決策を議論し、提言してきました。

なぜ、注目されるの?

歴史が動く舞台になってきたことも大きな理由です。

1988年には、関係が急速に悪化していたギリシャとトルコの首相がダボスで会談し、国家間の戦争が直前で回避されました。また、1989年には北朝鮮と韓国がダボスで初の閣僚級会合を開催。翌1990年には、東ドイツのハンス・モドロウ首相と西ドイツのヘルムート・コール首相が東西ドイツの統一について会談しました。

最近では、2020年、主要テーマの環境問題をめぐってアメリカのトランプ大統領が「今は悲観的ではなく、楽観的になる時だ」と主張した一方、地球温暖化対策を訴える活動家、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが世界のリーダーが気候変動対策に及び腰だとして痛烈に批判。対立が大きく注目されました。

アメリカ トランプ前大統領(左) スウェーデンの環境活動家 グレタ・トゥーンベリさん(右)

ことしのテーマは?

大きく4つに分けられると思います。

① グローバル化とブロック経済

ことしのメインテーマは「分断の世界における協力の姿」です。激しさを増す米中の対立やロシアによるウクライナ侵攻によって世界の分断が進んでいるためです。

アメリカ バイデン大統領(左)中国 習近平国家主席(右)

世界経済は、各国の保護主義が第2次世界大戦を引き起こしたという反省からグローバル化・自由貿易体制を求めてきましたが、分断、ブロック経済化という大きな転換点に立っています。

世界の分断は何をもたらすのか、再びグローバル化の道を歩むことができるのか白熱した議論が交わされる見通しです。

② インフレと景気後退

記録的なインフレや中央銀行の利上げによる世界経済の景気後退も大きな焦点になります。世界経済フォーラムはダボス会議を前に世界のリスクをめぐる報告書を公表しました。

世界経済フォーラムが公表した報告書

この中で今後2年以内にインフレやエネルギーの供給不足などによって輸入に依存する多くの国のより広い範囲で生活費の高騰が人道的な危機につながる恐れがあると警鐘を鳴らしています。

③ ウクライナ情勢の行方

そして、当然ながらロシアによる軍事侵攻が続く、ウクライナ情勢も大きなテーマです。

ロシア国旗などを掲げた軍用車両(ウクライナ ザポリージャ州・2022年7月)

EU=ヨーロッパ連合の各国の首脳が参加し、ウクライナへの今後の支援のあり方や、ヨーロッパの防衛政策について議論するほか、ウクライナからも政府関係者や企業家、人権活動家が招かれ、ウクライナの現状や、今後の民間支援、復興についても議論する予定です。

④ 気候変動などの環境問題

さらに、大きな柱の一つである気候変動などの環境問題についても多くのセッションが予定されています。とりわけ多くの登壇が予定されているのは、スウェーデン出身の環境学者で、気候変動の影響の研究における第一人者である、ヨハン・ロックストローム博士です。

洪水被害を受けた パキスタン シンド州(2022年8月)

今後10年のより長いスパンで起こりうる危機として、気候変動対策の失敗や、異常気象、生態系の崩壊などの環境問題が指摘されており、世界の備えを問う議論が交わされる見通しです。

ダボス会議では、どんなことが決まるの?

ダボス会議は、気候変動対策を議論する国連の会議COPなどほかの国際会議と違って、結論が出るような会議ではありません。ただ、そのときどきの経済や国際情勢に対して、世界のリーダーたちがどのような見通しを示すのかに世界から高い関心が寄せられ、ダボス会議での議論が、実際に各国の政策や企業行動に影響を与えてきた経緯もあり、議論の内容が注視されています。

会議が開かれる スイス ダボス

日本からも自動車、電機メーカー、金融機関、商社など、幅広い業種の経営者や政治家が数多く参加します。

経済や安全保障、そして身近な暮らしの問題にますます不透明さがただようなか、年の始めに行われることしを占う議論に、私たちも耳を傾けてみたいと思います。

国際ニュース

国際ニュースランキング

    世界がわかるQ&A一覧へ戻る
    トップページへ戻る