2022年5月25日
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中国の人は日本のことをどう思っている?最新の世論調査から

このところ良くなっていた中国人の日本に対する印象が、大幅に悪化したことが最新の世論調査でわかりました。

この1年、両国関係で大きな動きはなかったはずなのに。
関係者は驚きを隠せません。
なぜでしょうか?

原因として考えられているのは、「あの」影響です。
(国際部記者 関谷智)

※この記事は2021年11月12日に公開したものです

「日中共同世論調査」とは

世論調査を行ったのは、日本の民間団体「言論NPO」と中国のメディアグループ「中国国際出版集団」です。

2005年から共同で毎年行っていて、2021年で17回目です。

調査を始めたきっかけは、中国各地で激しい反日デモが相次いだことでした。

当時、日本による国連安全保障理事会の常任理事国入りの動きや、教科書検定の結果などに対して反日感情が高まり、デモが起きたとされます。

「言論NPO」の工藤泰志代表は、このときの様子を目の当たりにして、中国人の対日感情やその原因を調べることが日中の関係づくりに役立つと考え、毎年、中国側と協力して世論調査を行い、結果の分析を続けてきました。

ことしは日中両国で8月から9月にかけて実施され、合わせて2547人が回答しました。

どれだけ悪化したの?

今回の調査で注目されたのは、中国人の日本への印象が、この1年で大幅に悪化したことでした。

日本への印象が「良くない」(35.7%)「どちらかといえば良くない」(30.4%)と回答した中国人の割合は、合わせて66.1%に上り、去年の52.9%から13.2ポイント増加したのです。

中国人の日本への印象がこれほど急激に悪化に転じたのは、日本政府が尖閣諸島を国有化した翌年(2013年)の調査以来、8年ぶりのことです。

もう一方の日本人の中国への印象ですが、「良くない」「どちらかといえば良くない」とした人は9割を超えていて、高止まりの状態がここ数年続いています。

しかし、なぜ中国人の日本への意識は悪化したのでしょうか?この1年で、両国関係で大きな動きはなく、「言論NPO」の工藤代表は「結果は驚きだった」と語ります。

詳しく聞きました。

原因はやっぱり…

工藤代表は、中国人の日本に対する印象が大幅に悪化した背景には、さまざまな原因があるとしながらも、最も大きいのは新型コロナウイルスの感染拡大の影響だとみています。

そのうえで、相手国の印象は、その国を訪れた経験や、国民どうしの直接交流、自国のテレビなどのメディアを中心とした情報源に依存することが明らかだとしています。

例えば、相手国を訪れた人がインターネットや携帯アプリなどで、グルメや観光地などの楽しかった思い出を発信するなど多様な情報が届けられれば、相手国の「印象」にプラス効果があるといいます。

実際に、感染拡大前の数年間は、日本を訪れる中国人は急増していたため、これが日本への印象を良くしてきたということです。

しかし、感染拡大の影響で、2020年、日本への訪問者はピーク時の10分の1近くまで減少、いまだに両国間の往来は低調です。

つまり、中国人が日本への印象を良くするきっかけが激減したのです。

さらには、日中両政府の間で対話の機会が少なかったことも、調査結果に影響したとしています。

何が問題なの?

工藤代表は、新型コロナウイルスの感染拡大が収束し、両国間の往来が増えるようになれば、相手への印象は再び改善に向かうと期待しています。

しかし、中国人の対日印象の悪化は、特に注意すべきだといいます。

中国で国民感情が悪化して、再び激しい抗議デモや暴動が起きれば、政府どうしの話し合いは機能しなくなり、民間交流や経済活動もストップし、私たちの暮らしにも、大きな影響が出るおそれがあるということです。

日本と中国、お互いの印象をよくするためには

ただ、調査結果はネガティブなものだけではありません。

日本の人たちも中国の人たちも、両国関係の未来や協力への期待を失っていないことがわかります。

例えば、「世界経済の安定的な発展と東アジアの平和を実現するために、日中は新たな協力関係を構築すべきか」との質問には、「構築すべき」と回答した中国人は70%を超え、日本人も42.8%となっています。

こうした結果をもとに、言論NPOは、「双方の国民は、対立よりも協力を求めているという結果が浮かび上がった」と結論づけています。

また、調査を分析したひとりで、中国の政治外交史を研究している東京大学大学院の川島真教授は、調査の「日中関係は、自国にとって重要だと思いますか」との問いに、「重要だ」と回答した日本人の割合が、今回、わずかながら増えたことに注目しています。

中国への印象が「良くない」と答える人が9割いるのに、なぜ増えたのか。

この理由について、川島教授は、「日本では、一面では中国からのプレッシャーを感じながらネガティブな感情を持っているが、経済面をはじめとして中国との関係は重要だという認識があるためだ」と分析しています。

2022年は日中国交正常化50年の節目。

次の世論調査が示す日中関係は、果たしてどのような結果になるのでしょうか。

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