2022年6月24日
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ロシアのマクドナルド後継店行ってみた 何が変わった?味は?

マクドナルドのロシアからの撤退発表を受けて1か月足らずで“再開”したハンバーガーチェーン「フクースナ・イ・トーチカ」。
ロシア語で「おいしい。ただそれだけ」という意味です。
新たに誕生したロシアブランドのハンバーガーチェーンに行ってみると、マクドナルドから変わったところ、“変わりきれていない”ところ、いろいろ見えてきました。

訪れたのは、ロシアの首都モスクワの中心部にある店舗。

この店、32年前の1990年、ソビエト時代末期のペレストロイカ(改革)の波のなかオープンした、マクドナルド1号店を利用しています。

店舗の外観からは“マクドナルド”の文字とロゴが消え、代わりに「名前は変わっても、愛はそのまま」というスローガンがロシア語で書かれています。

訪れたのは、6月12日のオープンから1週間がたった週末。午前中から若者や家族連れなど多くの人が訪れていました。

注文の方法はタッチパネルとカウンターの2種類。マクドナルドのときと同じです。

私が選んだのは「グランド・デラックス」。ことし3月、撤退直前のマクドナルドで食べた「ロイヤル・デラックス」の後継商品と思われ、味を比較しようと考えたのです。

注文して待つこと数分。番号が表示されカウンターで受け取った商品がこちら。マクドナルド時代をほうふつとさせる形状ですが、フライドポテトやドリンクの容器は真っ白。ハンバーガーの容器も、ロシア語で「グランド・デラックス」と商品名が書かれているほかは緑と白のシンプルな配色です。

気になる味は、、、私には3月に食べた「ロイヤル・デラックス」と変わらない、同じ味だと感じられました。隣の席でハンバーガーをほおばっていた3人組の若者も口々に「うん、同じだな」と話していました。

それもそのはず。

実はこの店では、マクドナルド時代に使っていたちゅう房の設備をそのまま使っていて、レシピもそのまま。250人いるスタッフもほとんどが同じメンバーだそうです。

地元メディアによりますと、マクドナルドは牛肉やジャガイモ、ピクルスなど、原材料のロシア国内での調達を進めていたということで、新たな店は「原材料のサプライチェーンも引き継いだため、同じ味の商品を提供できている」と強調していました。

ちなみに値段は「グランド・デラックス」単品で178ルーブル(日本円でおよそ450円/6月24日のレートで計算)。マクドナルド時代の「ロイヤル・デラックス」より15%ほど値上がりしていました。

ただ、ロシアの軍事侵攻を受けてマクドナルドが5月に完全撤退を発表してから1か月足らず。ロシアが国家として主権を宣言した記念日「ロシアの日」(6月12日)にあわせて“再開”しようと急いだ影響なのか、真っ白な容器と同様、急ごしらえの印象がぬぐえない部分も見受けられました。

こちらは追加購入するケチャップやマスタードなどのソースですが、よく見ると、左上の部分にあったマクドナルドのロゴマーク「M」が黒く塗りつぶされています。

オープンにあたって1つ1つ手作業で塗りつぶした上で、撤退に伴って生じた大量の在庫を“利用”しているそうです。

また、スタッフの制服は、かつてのロゴマークを取り外して使っているそうです。

今回、店内を案内してくれたのは店長のボリス・マスロフさん(35)。

大学生のときからマクドナルドで働き始め、その後、就職。半年ほど前に歴史ある“1号店”の店長を任されたそうです。

ハンバーガー柄のネクタイは2年前から身につけているお気に入り。マクドナルドがロシアの有名なデザイナーに特注したもので、店が変わっても外すつもりはないと言います。

「この店は“ロシア版マクドナルド”ですか?」という質問に苦笑いしつつも、「ほとんどのメニューはそのままです。質の高い商品とフレンドリーなおもてなしで皆さんをひきつけますよ」と自信をのぞかせていました。

ウクライナ侵攻を受けて、ロシアでは様々な外資系企業が事業の一時停止や撤退を発表しています。

コカ・コーラ社も撤退を発表する中、店長のマスロフさんによりますと、清涼飲料水のうちコカ・コーラは在庫がなくなり次第販売を終了。その後はロシアブランドの炭酸飲料などで代用する予定だということです。

店内でハンバーガーを食べるロシアの人たちからは「欧米企業が撤退しても自分たちでできることを証明できた」などといった声が聞かれる一方で「欧米などの企業も自由に活動できるような、公正な競争が必要だ」と率直に話す人もいました。

32年前、モスクワで西側陣営の象徴として誕生したマクドナルド。ロシア国民が「世界とのつながり」を実感できたその店は、「メード・イン・ロシア」を強調すればするほど、国際社会からの“孤立”を象徴しているようにも感じました。

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