やっていて感じるのは、まだまだ自分は成長できるなということ

羽生結弦

フィギュアスケート

2021年3月の世界選手権。2年ぶりに開かれた世界一を決める大会でオリンピック連覇の王者は本来の滑りを発揮できず3位に沈んだ。1年後に北京オリンピックを控え、オリンピックへの思いを聞かれた羽生結弦が答えた。

「4回転アクセルを目指す状況の中にオリンピックがあれば考えます。ただ、最終目標はオリンピックで金メダルではなく、4回転半を成功させること」

羽生は、かねてより最大の目標を世界で誰も成し遂げていない4回転アクセル、つまり4回転半ジャンプの成功だと口にする。

「4回転アクセルを跳べないと満足できないので、一生」

新型コロナウイルスの影響で思うような練習や試合ができなかった2020-21年シーズン。羽生は、拠点を置くカナダを離れ、1人、練習に励んだ。
時に孤独に陥り、暗闇の底に落ちていくような感覚に襲われたこともあった。
それでも見失わなかったのが、”王様のジャンプ”と形容する夢の4回転アクセルだ。

2020年12月の全日本選手権で圧倒的な演技で優勝してから2か月。羽生は、ギリギリまで世界選手権の演技に4回転アクセルを組み込むことを目指した。
数え切れない練習と技術が必要な大技。26歳になった体が悲鳴をあげることもあった。
それでも、限界は感じない。

「ああ年だな、体が動かないな、そういうことを思う日々もあったけれど、やっていて感じるのは、まだまだ自分は成長できるなということ」

世界選手権に4回転アクセルは間に合わなかった。それでも、あきらめない。
次にアクセルを組み込む機会に向けて羽生は歩みを進める。この先、自分が練習に向き合うなかで厳しい状況に置かれた時のことすら想定する。

「限界だなと思う時期をどうやって乗り越えていくか。アクセルを練習していく中で、あぁ跳べないなとか絶望感を味わったときにどうやって乗り越えていくか。どうやって自分に頑張っているという報酬を与えるか。それを色々と考えながら今の自分の知識だったり、経験だったり、そういったものを生かしながら乗り越えていかないといけない」

すべては、最大の目標を成し遂げるために。オリンピック連覇から3年。羽生はまだまだ歩みを止めない。
“4回転半ジャンプを決めたらやめてしまうのか”
そう聞かれて羽生は、こう答えた。

「分からない。どう決まったかによるんじゃないか。自分の心が納得、満足できるかが根本。もし満足したら考えるかもしれない。ただ、確実にうまくなっているので、羽生結弦。いま限界だからやめるという感触はない」

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