諦めずに焦らずに…

高梨沙羅

スキージャンプ

高梨沙羅は、2022年北京オリンピックの前哨戦、2021年2月から3月にかけて開かれたノルディックスキー世界選手権の個人種目で2つのメダルを獲得し大会を締めくくった。

2018年ピョンチャンオリンピックで銅メダルを獲得した高梨。しかし、その後は厳しいシーズンが続いた。

「ピョンチャンですべてぶつけてこの結果なんだ…、というのはすごく思って。これからも女子ジャンプ界のレベルが上がる中、このままではその流れについていけなくなる」

北京オリンピックで金メダルを目指す高梨は大きな不安を感じ、選手生活で最大と言っても過言ではない決断をする。

「今までのプロセスを捨てよう」

スタートや助走の姿勢など、積み上げてきたジャンプをゼロから作り直すことにしたのだ。それまで体に染みついたジャンプの見直しを始めたことで、ワールドカップで勝てない時期が続いた。

「周りの方々からは、結果を求められることが多くて、自分では結果を求めるだけのジャンプにはなっていなくて。もどかしい気持ちもありながら過ごしてきた。自分のジャンプもよくわからなくなって、つらい年が続いていた」

それでもみずからの決断を信じて、ぶれずにジャンプを作り上げることに専念した。試行錯誤を重ねた結果がようやく形として現れたのが、2021年の世界選手権だった。

ラージヒル個人で4大会ぶりに銀メダルを獲得。金メダルには、わずかに届かなかったが収穫の多い大会だった。

「試行錯誤して自分のジャンプを探してきて、やっと形になってきて、これが自分のジャンプだと実感しながら飛べた。諦めずに焦らず、ここまで来られたことでようやく自分のジャンプに目を向けられる」

中学生から世界の舞台で活躍して10年。高梨はたゆまぬ努力で歩み続ける先に、必ず金メダルが待っていると信じている。

「一番の目標でもありますし、ここまで来るのにたくさんの方の力があって、支えてもらって、この場所に立てている。金メダルを取ることでやっと恩返しができるのかな。4年に1度、しかも2本のジャンプで4年間積み上げてきたものが決まってしまう。あとちょっとのようで、すごく遠い感じがしている。その日のコンディション、技術 心が整っていないと勝てない。もっと技術を磨いていきたい」

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