救助後亡くなった母 「ゆっくり休んで」【被災地の声 19日】

「3日間よく頑張った、つらい思いしなくていいからゆっくり休んで」

今月4日、輪島市の89歳の女性が自宅から助け出されました。

約72時間がたったあとの救出でしたが、その後容体が急変し亡くなりました。

女性の長男が胸のうちを話してくれました。

輪島市 今月4日に自宅から救助

今月4日、倒壊した自宅から助け出された、輪島市の外節子(89)さん。

救助時は意識があり、市内の病院で治療を受けていましたが、その後容体が急変し、今月6日に亡くなりました。

長男の武志さんが、当時の状況や今の心境について、胸のうちを話してくれました。

生きてると聞いた時には「助け出してくれてありがとう」、ですね。消防隊の方々への感謝と、それと母には「よく頑張ったな」という思いが強かったです。

病院での節子さんの様子に、回復を信じていたといいます。

会話にはならないんですけど、声を出してちゃんとうめき声とかではなく単語になるような声を発していたので、回復してきているかなと思いました。

しかし、状況は厳しいものでした。

倒壊した建物のがれきなどの下敷きとなることで、体にたまった毒性物質が全身に回る「クラッシュ症候群」の危険性を指摘されていました。

病院に運ばれた時に先生から電話で、「今は意識があるけど、危ないのは変わらない」と言われていました。それでも母は、夕方には体の症状を訴えるような話し方だったので、だいぶ戻ってきていてこのまま回復するとその時は信じてましたね。帰り際に看護師さんにその話をした時には「いつ急変するか分からないので」と言われましたけど、僕らの目から見ると回復しているように思っていました。

「体を触っても、手を触っても」

しかしその後、血圧が下がるなど、容体が急変しました。

電話で連絡を受けて、血圧が下がるぐらいならもしかしたらまだ大丈夫、と信じて、『頑張ってくれ』っていう思いで駆けつけたんですけど、着いた時にはもう呼吸が止まっている状態だったので。何が起きてるんだろう、って感じでした。

まだその時には体を触っても手を触っても、温かかったと言います。

「もう1回息を吹き返すかな」とも思いつつ、でも「そんなことはないんだろうな」
と自分に言い聞かせながらという感じでした。

「もう苦しまなくていいからね」

父が早い時期に亡くなっているので、そのあと1人で僕ら兄弟2人をしっかり、よく面倒を見てくれたなというのと、周りの人を大切にする母でしたね。年末の29日に実家に行ってるんですけど、『一緒に家族で忘年会しよう』と言ってくれて、おいしいものを用意してみんなで食べて。帰ると絶対そういうのやろうと気遣いしてくれましたね。

救い出してくれた消防本部の方々には、感謝しかないです。ただ高齢だったし体への負担というのはあったんだろうなと思います。最後まで治療をしてくれた病院の先生方にもありがとうございますという思いです。

いろいろな感情が入り組んでいるんですけど、「もう苦しまなくていいからね」と、「よく頑張ったね」と。「もう苦しい思いしなくていい」ということが一番です。もう3日間あそこに挟まれていたんで、「3日間よく頑張った、つらい思いしなくていいからあとゆっくり休んで」という、思いですね。

輪島市打越町 90代女性安否不明続く

輪島市の山あいにある打越町では、地区と市内のほかの地域とをつなぐ道路が地震で崩れた土砂や倒れた木でふさがれて一時、孤立状態となりました。

自宅の庭でブロック塀の下敷きになったとみられる、表きよさん(97)の安否がいまもわかっていません。

地区の区長を務める谷内均さんなどによりますと、表さんは当時、年末年始に合わせて市外から帰省した息子と一緒に自宅で過ごしていたということです。

谷内均さん
ふだんは一人暮らしをしていたので、何かと声をかけて気にするようにしていました。寒い中なので、できれば助け出してあげたかったですがどうしようもなく、そのまま残して来ざるを得ませんでした

「どうか早く見つけてあげたい」

谷内さんたちは停電や断水が続くなかで持ち寄った石油ストーブなどで暖をとりながら、消防や警察に助けを求めたものの、発生から4日がたっても、道路の寸断の影響などで、孤立した集落への救助は来なかったということです。

このため、地区の人たちで相談して自力で避難することを決めました。

電動のこぎりで倒木を撤去するなどして道をつくり、歩けない高齢者を担架で運ぶなどしながら、2歳から80代までの27人で、数時間かけて歩いて移動し、地区から出ることができたということです。

ただ、その後、地区に捜索隊が入ることができない状態が長く続きました。

ようやく数日前から消防の捜索活動が始まりましたが、これまでのところ表さんが発見されたという連絡は入っていないということです。

谷内均さん
早く見つかってくれれば。それだけです。私たちは無事に避難できてあったかいとこでごはん食べながら生活しとるんやけど、そのお母さん(表さん)だけは寒いところでおるがもかわいそうやから、どうか早く見つけてあげたいです。

避難している方や支援にあたっている方など、みなさんの「被災地の声」をまとめた記事はこちらです。