2週間以上風呂入れず…「生き返るわい」【被災地の声 18日】

「みなさん、生き生きしていますし、やりがいがあったかな」

断水が続く七尾市で、銭湯を再開させた店主のことばです。

地震から18日目。

まだまだ大変な状況の中、本当に久しぶりにお風呂に入ったり、あたたかい炊き出しを食べたりという声も届いています。

「被災地の声」をまとめました。

七尾市木町 銭湯が井戸水で再開

依然として市内のほぼ全域で断水が続く七尾市では、井戸水を利用した銭湯が再開しています。

七尾市木町にある銭湯「たから湯」では、地震の前は井戸水に加えて水道水も利用していました。

しかし、断水が続き入浴できない生活が続く中、一日も早い再開を望む声にこたえようと、被害があった設備を一部補修し、井戸水だけを利用して14日から営業を再開しました。

近くに住む90代女性は、近所の人に連れてきてもらって再開翌日の15日に十数日ぶりに入浴できたということです。

90代女性
助かります、本当に。もう90過ぎてるもんで集会所も行かれんし、家でじーっとしとったんです。私もお風呂毎日でも行きたいと思うけど、人に迷惑掛けるの嫌やから。ほんで近所の人がいつもここに連れてきてくれるんやけど、感謝感謝です。

「生き返るわい」

近所に住む男性も数日前に子どもの家で入って以来のお風呂に、満足そうでした。

近くに住む72歳男性
お風呂はよかったよ。これのおかげやよ。ほんとに生き返るわい。ほんとこれがなかったら大変やわ。ほんとにたから湯さんのおかげよ。ほんとに。

車で来たという70代の女性も、すっきりした様子です。

70代女性
お風呂は3日ほど入ってなかったかね。家は車で5~6分のところで、やってるって聞いて来ました。お風呂はリラックスするさけ、気持ちいいですね。

「よかった」の声がやりがい

「たから湯」店主の仲村克己さんは、そんな人たちの様子にやりがいを感じていると言います。

店主・仲村克己さん
皆さんね、生き生きしていますし、いや~よかったよかったと言ってくれるもんですから、そこはやりがいがあったかなと。ほかの公衆浴場は営業には当分移れないということを知って、なんとかして提供できんかなと。『早く開けてほしい』という要望はたくさんもらいましたよ。

町内の様子

本来なら営業時間も長いんですけど、短縮してその間に入っていただこうという考え方で、道路はかなりの場所で起伏があって夜はどうしても怖いですから、うちに行く途中でそんな目に遭ったって聞くと嫌ですから、明るいうちになんとかしたいと。そういうことにも気をつける意味も含めて、その範囲内で営業してます。

輪島市河井町 民宿で支援者受け入れ

被災地では宿泊施設も大きな被害を受け、支援に入る人たちが宿泊できる施設の確保が難しい状況が続いています。

こうした中、輪島市河井町で民宿を経営する坂下学さん(57)は、支援に入る職員などのために部屋の提供を始めています。

民宿では建物の瓦が落ちるなどの被害が出て、営業再開のめどは立っていません。

それでも、行政による建物の「応急危険度判定」では、基礎部分の損傷や倒壊などの危険は確認されなかったということです。

宿を探している支援者の人から、泊まれるかとたずねられ、部屋の状況を全部確認してもらったうえで泊まってもらうことになったということです。

「景色にがく然と…でも少しずつ」

受け入れを始めた思いについて坂下さんは。

坂下学さん

この民宿は父親の代からずっと50年以上、みなさんのおかげでここまで続けてこられたという思いがあります。みなさん困っているなかで大変な状況なんですが、支援に来ていただいている方に泊まってもらい、側面から輪島市、そして能登のためになるようにと思って受け入れています。

断水も続き、まだまだ再開の見通しは立っていません。

とりあえず水ですね。水が出れば少しは前に進めるかなと思います。お風呂も自分はまだおおみそかにお風呂入ってからそれ以来入ってないです。ひげもそってないです。

生まれ育って慣れ親しんだ地域が一変してしまった景色を見ると、気持ちが沈みます。
それでも今後、本格的な再開を目指したいと考えています。

もうがく然とするだけですね。変わってしまった周囲をみると気持ちは沈みますけど、発災当日の夜、空を見たときに星がいつもと変わりなくきれいだったのが印象的で、瞬間的に気持ちが癒やされました。復興には程遠いですけど、もとに戻れるといいなと思います。もとに戻れるようにできることを少しずつやっていこうと思います。

穴水町大町 台湾からのボランティア

穴水町大町の避難所「さわやか交流館プルート」には、約120人が身を寄せています。

ここでは台湾を拠点に活動する慈善団体が、今月12日から毎日、昼食の炊き出しを続けています。

食事をしていた女性
大変だと思うけどありがたいねえ。ありがとうございます。それしかないです

18日もボランティアのメンバーたちは、中国語でやりとりをしながら、手際よく野菜の皮をむいたり具材を切ったりして調理に取りかかっていました。

メニューは、にんじんや白菜、それに大豆ミートを使った中華丼。体が温まるようしょうがを入れたり、子どもや高齢者でも食べやすいよう食材を一口サイズにカットするなど工夫したということです。

「あたたかいごはん、おいしいです」

食事を受け取った人たちは。

避難所で生活する男性
私の家はもう倒壊です。全部つぶれています。さきほど仮設住宅に申し込みをしてきました。でもここでは十分なんでもそろっています。お水とかそんなのもたくさんありますし、喜んでいます。

ボランティアが台湾から来たことについては。

台湾の方が来られてるんですか。遠いところからわざわざボランティアに来てくれて、申し訳ないです。あたたかいごはんはやっぱりおいしいです。

「台湾でも地震よく起きるので」

台湾の慈善団体の職員の女性は「台湾でも地震はよく起きるので、私たちはその怖さがよく分かります」と、通訳を介して話してくれました。

だからこそ、被災した人たちの力になりたくてボランティアに来たといいます。

台湾慈善団体の職員 周利貞さん
ここで被災された方々になにか手助けをしたいという思いで来ました。地震による被害の大きさは私たちはよく分かります。テレビで地震が起きたときの映像を見ました。とても心配で気にかけています。

ボランティアで情報を集めて分かったのは、今はとても寒いので最も必要とされるのはあたたかい食事を提供するということです。あたたかい食事は体と心をあたためて元気を取り戻すことができます。できるかぎりみなさんの助けに、力になりたいと思っています。

今後はできればほかの被災地でも活動したいと話していました。

テレビで珠洲市や輪島市も被害が大きいので、ただ今は交通も寸断されていろいろ不便だと思いますが、可能であればそちらでも炊き出しの活動をしたいと思っています。そういう機会があれば幸いです。

輪島港「業務も全然できていない状況」

輪島市鳳至町にある輪島港は、地震の影響で地面のいたるところに大きなひび割れができるなど、大きな被害を受けました。

例年なら今ごろの時期は、ズワイガニやたらの水揚げが最も盛んな時期ですが…。

石川県漁協輪島支所 上浜敏彦 統括参事
1月1日の震災からひびが入って車も入れない状態で、もう業務も全然できていない状況です。

「輪島の漁業がだめになってしまう」

港に停泊する船は、海底の地盤が隆起して水深が浅くなったため、約200隻が港から出ることができないままです。港の復旧工事をすることになっても、船を移動させる場所もないといいます。

水揚げ場では、地面がひび割れている所が多く、水揚げの作業を行うことも難しい状況になっています。

さらに停電のため、製氷機や魚を保管する冷蔵庫、それに約20トンの餌が貯蔵されている冷凍庫が使えなくなっています。停電がさらに長引けば、すべての餌を廃棄せざるを得なくなるということです。

上浜 統括参事
もう漁協だけで解決できる問題ではないです。人力では絶対に無理なので。復旧を早急にしていただきたいという思いです。そうしないと輪島の漁業がだめになってしまう。

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