「怖い…でも我慢してここにいようと」【被災地の声 15日】

「こんな状態だから、行っても迷惑がかかる」

被災地では依然1万9000人あまりが避難所に身を寄せていますが、中には被災した自宅にやむをえずとどまり続けている人たちもいます。

地震から2週間。石川、富山、新潟で、取材にこたえてくださったみなさんの声をまとめました。

石川・珠洲市 「在宅避難」続ける人も

石川県珠洲市野々江町の鹿間秀雄さん(89)と妻の節子さん(85)も、やむをえず自宅で生活しています。

2人とも足が不自由な上、節子さんは寝起きに介助が必要なことから避難所での生活は難しいということです。

鹿間節子さん
私ら2人とも障害者なんですよ。私の場合は足腰が痛くてどこも行かれんし、座ることもできないし、転んだらもう起きることもできない。そういう状態だから避難所行っても寝起きできないし、この人(夫の秀雄さん)もそうなんです。

2人でこんな状態だから行ってもみなさんに迷惑かかると思って、住み慣れたところがいいかなと思ってここに住んどるわけなんです。

「怖いのを我慢してここにいようと」

それでも、今も余震が続く中「地震が一番怖い」と話しています。

もちろん怖いです。みなさんと避難所に行って話していれば気分も紛れるかもしれない、そういう気持ちもあるが、行っても自分がトイレに行くのも不自由だと思って、ちょっと危険やなとは思っていますが、怖いのを我慢してここにいようと思っています。

「めまいがするような傾き」

また、同じ珠洲市野々江町の山下一二さん(84)と妻の美恵子さん(79)も娘と3人で、被災した自宅で生活しています。

地震が発生した今月1日は自宅周辺にも津波が到達する可能性があるということで、近くの避難所に泊まりました。

しかし停電や断水が続く中、衛生環境も心配で次の日には自宅に戻ったということです。

自宅は傾いたり外壁がはがれるといった被害を受けています。

山下美恵子さん
ひどいですよ。戸がこうして折れて、はずれて立てられない状態です。床も下がっているところと上がっているところがあって、座っていてもめまいがするような傾いている状態なんです。でもまだしばらく座っておれるだけでもいいかなと思ってます。

しばらくは車中泊を続けたものの寒さで眠れず、現在は、被災した自宅の中のスペースが確保できる部屋に家族3人で布団を敷いて寝ているということです。

断水で水が使えず、風呂に入れないことが一番の悩みだということです。

「命があってこうしていられるだけでも」

自宅での避難生活が続く中、相次ぐ余震に不安を感じています。

私らはまだ命があって、こうしておれるだけでもいいのかなと、いいように解釈して暮らさないとと思っております。今度大きい地震が来たらもうこの家だめだなと思っていますが、迷惑もかけたくないし、この先はこの家が崩れるまで自分たちができるだけのことをして、ここにいようと思っています。

被災地ではこうした「在宅避難者」が各地にいるとみられますが、石川県や被災した自治体では、在宅避難をしている人たちの状況把握や調査は進んでいません。

今後、ますます寒さが厳しくなる中、こうした避難者の健康管理なども課題となっています。

石川・穴水町 仮設住宅建設へ作業開始

石川県は15日から穴水町と能登町でも仮設住宅の建設に向けた作業を始めました。

穴水町の川島児童公園では、担当者が設計図と照らし合わせて寸法を測っていました。

2月中旬に完成予定で、家賃は光熱費を除き無料、入居できる期間は最長2年となっています。

「金沢はあまりに環境違う」

申し込みに来た70代の男性に聞きました。

70代男性
家はほとんど全壊なので住むとこもないし、とりあえずきょうからということで一応、申し込みだけしておこうと来ました。夫婦2人、できれば一応、家の近くにいたほうがいいかなという感じです、気持ちは。

男性は金沢市で暮らす子どもから一緒に暮らすよう提案されているということですが、いざ金沢へ出て行くのもなかなか難しいと言います。

子どもが金沢だもんで「来い」って言うけど、こんな田舎に住んどって金沢へって、ちょっとなかなか難しいものですから。仮設の抽せん当たらなきゃどうしますかね。今のとこに小屋みたいなの建てて住むか。子どもの金沢のとこは環境があまりに違うんで、行っておれるかどうかわかんないし。2人ともとりあえず元気だから仮設に2年おってその間にちょっと考えようかと。

珠洲市 漁港被害「普通にある場所がない」

珠洲市蛸島町にある「蛸島漁港」の施設では石川県漁協すず支所の関係者およそ20人が集まり、漁の再開に向けて協議しました。

支所によりますと珠洲市では約1000人が漁師をしていて、この時期はズワイガニ漁やタラ漁のシーズンです。

しかし今回の地震や津波で岸壁が損傷し、100隻以上の漁船が沈没したり転覆したりしたということです。

県漁協すず支所運営委員長の上野和春さんに、漁港の被害について聞くと。

上野和春さん
見てのとおり、普通にある場所というのがないですね。もうみんな段差があったり、割れ目があったり。大変です、これからやっていくのが。

「一歩一歩やらないと」

漁師の多くが避難生活を送っているほか、製氷の設備や漁船の給油施設も被害を受けて使用できない状態だということです。

石川県漁協すず支所の話し合い

さらに、きょうの話し合いでは別の問題も指摘されていました。

「早く漁ができる状態にしなければ、漁師が離れてしまう」というものです。

このためすみやかに支所の業務を再開させるとともに、氷や燃料を被害の少ない地域から調達できないか検討することを申し合わせました。

職員も半分くらいは金沢などに避難されていて、若い人は避難したついでにここを辞めて向こうに行きたいということになると支所自体がもたなくなりますので、できるだけ早く仕事は再開したいです。

船が被害を受けて廃業を考えたりしている方もいますので、できるだけ早く再建が進むように後押ししたいですね。一歩一歩ですけどやらないと。待っとってもだめなもんですからね。

富山・氷見市 被災地に大谷選手のグローブ

届いたグローブ3個

一方、住宅などへの被害が相次いだ富山県氷見市北大町にある比美乃江小学校には、大リーグで活躍する大谷翔平選手が贈ったグローブが届きました。

中野聖子校長
みなさん、おはようございます。きょうは少しずつ元気を取り戻しているみなさんにうれしいお知らせがあったので、集まってもらいました。実は比美乃江小学校にプレゼントが届きました。では、誰から届いたのかクイズをしたいと思います。

第1問、男の人です。
第2問、犬を飼っています。

誰かわかりますか。みんなで言ってみましょうか。せーの。

児童たち
おおたにしょーへい!

中野聖子校長
大谷翔平選手は以前ニュースで『挑戦することを楽しんでいます』と言っていました。どこかで聞いたことばですね。

比美乃江小学校は『楽しんで挑戦する比美乃江の子どもたち』です。みなさん、このグローブと共に楽しんで挑戦していきましょう。

「地震が怖い気持ちが、少し楽に」

さっそくキャッチボール

グローブは大谷選手が全国すべての小学校に贈っているもので、右利き用が2つ、左利き用が1つで、大谷選手のサインもプリントされています。

子どもたちは早速、順番につけてキャッチボールを楽しんでいました。

6年生の女の子
野球が少し好きになりましたし、大谷選手を応援したいなと思いました。地震が怖い気持ちもあったけど、これを通してなんか少し気持ちが楽になった気がします。

3年生の男の子
憧れの選手は大谷さんです。ちょっと元旦の地震でがっかりしとったけど、大谷さんのグローブのおかげで元気になりました。野球をしているので、大谷さんのために試合に勝ちたいと思いました。

被害を受けた建物 氷見市内

新潟・上越市「時間がたって現実が」

一方、津波による浸水被害を受けた地域の復旧も進んでいません。

今月1日の地震で新潟県上越市には津波が押し寄せ、市内を流れる関川の河口付近にある港町1丁目ではこれまでに1棟が床上浸水したほか、14棟で床下浸水したことが確認されています。

このうち、川沿いにある安田みさ子さんの住宅は、床から70センチあまりの高さまで浸水し、居間にあった畳やこたつなどが水につかったほか、玄関の扉も壊れました。

玄関は板でふさいでいますが、冷気が部屋に流れ込んでくるということです。

自宅に併設された経営するスナックの店舗は被害がなかったことから今月8日に営業を再開しましたが、自宅の修復はまだ行えていないということです。

安田さん
最初はあっけにとられるばかりでしたが、時間がたって改めて被害の現実が見えてきて気持ちが落ち着きません。自宅の方はまだ手付かずで、その様子をみると落ち込んでしまいます。早く元に戻して少しでも安心したいです。

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