ラグビーW杯 サモア戦のポイントは?田中史朗選手が解説!

ラグビーワールドカップフランス大会、1次リーグに臨んでいる日本代表は、日本時間29日の午前4時からサモアと対戦します。日本にとって1次リーグ突破の行方を左右する重要な一戦となります。

この試合の見どころについて、ワールドカップに3大会出場し、今回、NHKの試合の解説を務める田中史朗選手に聞きました。

サモア戦 負けられない一戦へ

日本が入った1次リーグのプールDは、イングランドが3連勝で決勝トーナメント進出に向け大きく前進していて、日本とサモア、それにアルゼンチンが1勝1敗と混戦になっています。

世界ランキング13位の日本は、世界12位のサモアと日本時間29日の午前4時から対戦します。日本は、この試合に勝てば2大会連続の1次リーグ突破に前進することになりますが、負ければほかのチームの試合結果や点差などによるボーナスポイントにも左右され突破の条件が厳しくなります。サモア戦は日本にとって今後の行方を左右する重要な一戦になります。

日本代表 試合前日の練習

素早い攻撃が持ち味の日本に対し、サモアはフィジカルを生かした力強いプレーで対抗する展開が予想されます。

日本は副キャプテンでスクラムハーフの流大選手がコンディション調整のためとして前日練習に姿を見せませんでしたが、第2戦のイングランド戦とほぼ同じメンバーで臨む予定です。

イングランド戦ではスクラムが安定

試合のポイントのひとつとなるのがスクラムなどのセットプレーです。サモアは強力なフォワードを前面に出してくることが予想されます。日本は前のイングランド戦で見せたような統率のとれたスクラムで互角に渡り合うことが重要になります。

また、体をぶつけ合う局面で力勝負にくるサモアに対し、日本は強化してきたタックルでときには2人がかりで粘り強く相手の前進を止め続けることもポイントになります。

イングランド戦でも粘り強くタックル

日本のディフェンス面を担当するジョン・ミッチェルアシスタントコーチは「サモアは1対1になる局面を作りたがると思う。最初のフェーズのディフェンスが大事になってくる」と話し、相手の最初の攻撃から確実に止めることが重要だと強調しています。

流大選手が相手の裏へキック

一方、攻撃面ではキックを有効に使った戦術がカギを握ります。日本としては、相手のディフェンスラインの裏へのキックを織り交ぜて守備の陣形を崩し、優位なエリアでプレーを継続したいところです。

フルバックで先発出場するレメキ ロマノ ラヴァ選手は「アタックをしかけるのは敵陣22メートルラインの中に入ってからで、それ以外は自分たちのフォワードのエネルギーをセーブして、サモアの大きなフォワードを走らせたい」と、持久戦を視野に入れたプランの一端を明かしています。

《【解説】田中史朗選手に聞く 試合のポイントは?》

1次リーグ突破にむけ重要な一戦となるサモア戦について、元日本代表でワールドカップに3大会出場し、今回、NHKの試合の解説を務める田中史朗選手に聞きました。

田中史朗選手(京都府出身・38歳)

試合の先を読む能力が高く、判断良く正確なパスを出し、巨漢選手にも果敢にタックルする勇敢なスクラムハーフとして日本代表の中心として活躍した。

<経歴>
伏見工業高校(京都)→京都産業大→三洋電機(現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)→ハイランダーズ(ニュージーランド)→キヤノンイーグルス→NECグリーンロケッツ東葛

<日本代表歴>
▽通算75キャップ
▽2011年、2015年、2019年とワールドカップ3大会連続出場

「日本はイングランドに負けて、崖っぷちな状態なので、まずはサモアに絶対に勝って、決勝トーナメントへの望みをつなげないといけない。そしてサモアに勝つことによって、日本代表としての自信というものをつかんで欲しいです」

サモア代表

今大会のサモアは、これまでとは一味違います。

2022年にラグビーの国際統括団体「ワールドラグビー」の選手がプレーする代表チームを1回だけ変更できるというルールができたことで、強豪のニュージーランド代表やオーストラリア代表でプレーした選手が加わり、戦力を大幅に強化。ベテラン選手が名を連ね、チームに豊かな経験が加わりました。

「日本が対戦した2015年、2019年のワールドカップと比べてパフォーマンスはあまりかわっていないと思う。ただ、元ニュージーランド代表とか元オーストラリア代表の選手がサモア代表に入ったことによって少しスマートにゲームを動かすようになった印象があります。相手はパワフル。前に出る一人一人の個人の能力がすごく印象的なチームなので、そこをどう日本が止めるかがキーになってくると思う」

スクラムハーフとしてフォワードを間近で見ながらプレーしている田中選手。試合のカギとなるのは「スクラム」だと言います。

「サモアのスクラムも強い印象ありますけど、日本はイングランド戦で本当に素晴らしい、世界的にもトップレベルのスクラムを見せたので今回の戦いでも大丈夫だと思います。日本は持久力があるので長い時間いいスクラムを組むことができる。特に後半、いいスクラムを組んで相手を崩していけると思っています」

世界ランキングが13位の日本と12位のサモア。今大会はともに1勝1敗、2試合のデータも似ています。試合展開を予想してもらいました。

【今大会データ(2試合合計)】
▽得点数:日本 54/サモア 53
▽失点数:日本 46/サモア 29
▽トライ数:日本 6/サモア 6

▽PG数:日本4/サモア 5

「前半は我慢の時間だと思います。イングランド戦はラスト20分我慢できなかったから負けてしまったので、今回はそのラスト20分を頑張りきれば、日本の勝利が見えてくると思います」

スタンドオフ 松田力也選手

田中選手が、サモア戦のキーマンとして挙げたのが司令塔、スタンドオフの松田力也選手です。日本の持ち味の展開の早いラグビーをするための生命線となります。

「松田選手のゲームコントロールがすごく大事。キックでエリアをとってしっかり相手の陣地で攻める。そして早いパス回しで、しっかりボールを外側に運ぶ。日本はバックスにトライをとれる選手がそろっているので、いい状態でボールを外に回すためにも松田選手がキーポイントになると思う」

サモア代表 クリスチャン・リアリーファノ選手

一方、サモアで警戒すべき選手は、こちらもスタンドオフ。元オーストラリア代表のクリスチャン・リアリーファノ選手を挙げました。

「7月のテストマッチで日本がサモアに負けた時もリアリーファノ選手のゲームコントロールがあった。パスであったりキックであったり、すべてでやられていたので、彼にプレッシャー与えて正常な状態で判断できないような状況を作るのが大事だと思います」

日本代表 試合前日の練習

この試合に中5日で臨むサモアに対し、日本は中10日と試合間隔が空いているため、選手の体力回復や準備の面でアドバンテージがあります。接戦となった場合、日本は終盤に運動量で上回り、得点を重ねていけるかも重要な要素になります。

田中史朗選手
「中5日は正直、ワールドクラスになるとかなりきついスケジュールだと思います。日本は中10日あり体が最高にフレッシュした状態でプレーできるので、絶対に勝たないといけないスケジュールだと思います」