注目の経営者に日本経済の未来に向けたヒントを聞く「2024 ニッポンの勝ち筋」。2回目は、大阪の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」をはじめ数々のテーマパークなどを再生させたことで知られる、マーケティング会社「刀」代表取締役CEOの森岡毅さんのインタビューです。
観光産業をどう盛り上げて経済活性化につなげるのか、神子田章博キャスターが聞きました。
勝ち筋①「眠れる資産を生かす」
10年以上にわたりテーマパークの再生、運営に携わってきた森岡さんは2024年、新たなチャレンジに乗り出します。3月に東京・お台場に、これまでにないテーマパークをオープンさせるのです。
このテーマパークのキーワードは「没入型」です。観客自身が、上演される演劇の中に登場人物の1人となって入り込み、殺人事件を目撃するなど物語に巻き込まれながら非日常の体験ができるといいます。
神子田章博キャスター
―「没入型テーマパーク」をニュースで見て、楽しみにしている人も多いと思いますが。
マーケティング会社CEO 森岡毅さん
「(没入型は)全く新しい、すごく刺激の強い、おもしろい、ライブエンターテインメントの究極のエンターテインメントとして、いま人気がどんどん出ている。自分が犯人にされたり、自分が持っている重要な情報を誰かに届けるとストーリーが変わってきたり」
さらにこのテーマパークは少し変わった特徴があります。2022年3月に営業を終了した商業施設「ヴィーナスフォート」のヨーロッパ風の内装を再利用したのです。
これが、森岡さんの勝ち筋の1つ目「眠れる資産を生かす」ということです。
森岡さんはこれまでも、兵庫県三木市にある保養施設を、自然を満喫できるレジャーランドにしたり、埼玉県所沢市の老朽化した遊園地を「昭和」を体験できるテーマパークによみがえらせたりするなど、使わなくなった施設を再利用して再建してきました。
森岡さんは、日本には再利用できる資源がたくさんあると考えています。
「私がいちばん大事にしているのは、費用を抑えながら集客施設をおもしろくしていくためには、もともとの集客施設が持っている特徴をうまく活用すること。設備投資費用をできるだけ落として需要を上に上げていく。そのためにいちばん重要なのはアイデアで、やることは特徴をできるだけ使っていくこと」
勝ち筋②「消費者ニーズの徹底分析」
森岡さんは新たなアイデアで、沖縄の自然や文化を生かしたテーマパークづくりにも取り組んでいます。
沖縄本島北部の「やんばるの森」に、森林を一望できる気球や、森の中で恐竜から逃げるアトラクションをつくる予定です。
森岡さんが森に注目した背景には、もう1つの勝ち筋「消費者ニーズの徹底分析」があります。
沖縄は、東アジアから東南アジアまで20億人のマーケットがあります。分析の結果、消費者の多くが、沖縄の海だけでなく森や山に魅力を感じていることに着目したのです。
「自分たちが言いたいこと、見せたいものを見せるのではない。来ていただくお客様、消費者の視点で、見たいようにおもしろいようにどうやってつくり直していくかが大事」
「もっと日本は観光で稼げる」
森岡さんは今後、全国各地で地域の魅力を生かしたテーマパークをつくっていきたいと考えています。
「もっと各地域がそれぞれの魅力を消費者の価値として提案できたら、インバウンドの皆さんも含めた消費者にとって彩りある選択肢になりうる」
「もっともっと日本は観光で稼げる国。なぜならばダボス会議で言われたように、日本は観光の魅力世界一なので、もっともっと観光産業が人々を集めて、人々のために糧を稼ぎだす産業にならなければいけない」
森岡さんは、地域の魅力を生かしたテーマパークを核にして全国各地で観光産業を盛り上げていくことが、一部の地域に観光客が集中するオーバーツーリズムの解消にもつながっていくと話していました。
インタビューを通じ、消費者視点の観光戦略がインバウンド市場をさらに拡大させていくと感じました。
【2024年1月12日放送】
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