スマートコンタクトレンズ 開発はどこまで?実用化はいつ?

目に入るほどの小さなレンズにさまざまな情報を映し出す「スマートコンタクトレンズ」と呼ばれる機器の開発が進んでいます。実用化すれば、どんなことができるようになるのでしょうか?

アメリカのスタートアップの試作品 性能は?

7月下旬、スマートコンタクトレンズを開発しているアメリカのスタートアップ企業「Mojo Vision」の担当者が日本を訪れ、最新の試作品を披露しました。今回はのぞいてみるだけですが、将来的には実際に目につけることを目指しています。

取材した記者が特別に体験させてもらうと、実際の風景の手前に、飛行機の搭乗案内の画像が見えました。

スマートコンタクトレンズを通して見える画像のイメージ

開発中の今は、パソコンとレンズをコードでつないでデータを送っています。

レンズの中には、超小型化したLEDディスプレーやバッテリー、センサーなどが埋め込まれています。ディスプレーの大きさは0.48ミリメートルで、ここに画像が表示される仕組みです。

会社はスマートフォンなどで見ていた情報を直接視界と一体化させることで、目的地への移動中に情報を得たり、運動中にタイムや心拍数などの情報を得たりすることが、手ぶらでできるようになると考えています。

アメリカのスタートアップ企業 マイク・ウィーマーCTO
「スマートコンタクトレンズが普及して、健康でよりよい生活ができる未来を思い描いている」

このアメリカの企業は、日本のコンタクトレンズメーカー「メニコン」と共同で開発を進めています。

10年以内の実用化を目指し、人が安全に装着できるレンズの素材や形状を検証していくことにしています。

日本の液晶ディスプレー技術でスマートコンタクトを

こうしたスマートコンタクトレンズの分野に、日本のものづくり技術で参入しようという動きもあります。

光工学が専門の東京農工大学大学院の高木康博教授は、小型の液晶ディスプレーを使って画像が立体的に見える技術を研究しています。「今は大きいが、将来的にはコンタクトレンズに入るぐらい小さいものにしたい」と考えています。

今後スマートコンタクトレンズの市場が広がるとみて、日本メーカーと協力して超小型ディスプレーの開発を急ぎたいとしています。

東京農工大学大学院 高木康博 教授
「日本は液晶技術を筆頭にしてディスプレー技術に関して世界に誇れる技術があった。またディスプレー技術の先頭に立ってほしい」

安全性は?

スマートコンタクトレンズを実用化するには、安全性を確認したうえで国の承認を受ける必要があります。

取材したアメリカの企業は、スマートコンタクトレンズで視界に入ってくるいろいろなものをくっきり浮かび上がらせるなどして、視覚に障害がある人の支援にも活用したいとしています。
(経済部 記者 寺田麻美)
【2022年8月23日放送】