クイックコマース 買い物が変わる?

「クイックコマース」=「速い・商取引」。コロナ禍で在宅時間が増え、ネット通販やネットスーパーを利用する人が増える中、「注文当日の配達ですら待てない、今すぐ届けてほしい」という消費者のニーズを見いだし、クイックコマースに参入する企業が増えています。

食品・日用品を10分で配達 「御用聞き」目指す

東京都内のベンチャー企業「OniGO」が運営する目黒区にあるクイックコマースの拠点には、生鮮食料品や日用品など約1600種類の商品がそろえられています。

客からアプリで注文を受けると、すぐに商品を集めて自転車で配達。拠点から半径約1.5キロの地域を対象に、指定された場所へ10分で届けます。配達手数料は1回300円です。

重いものでも、雨の日でも、今欲しいものがすぐに届くことからリピーターが徐々に増えているといいます。

利用客

「ちょうど足りなくなったトイレットペーパーと、お米5キロを頼んだ。ちょっと外に出たくないなという時にもすぐに持ってきてもらえるので助かる」

会社では客の声をアプリのチャットで集め、品ぞろえの要望などにも迅速に対応しています。食洗機専用洗剤の取り扱いがないとの要望を受け、拠点に置くようにしました。

この会社は2021年8月に1号店をオープンし、現在3店舗まで拡大しました。今後も東京都内を中心に出店していく計画です。

梅下直也社長

「昔『御用聞き』が各家庭を回っていったような、地域にとって『いるだけでプラスだよね』という、そういった存在を目指していく」

注文後に野菜を収穫・配達 「近所産近所消」をアピール

速さ」に「新鮮さ」をプラスしてクイックコマースに参入した企業もあります。21年12月に福岡にオープンした店は、棚に水耕栽培の野菜が並んでいます。

光や温度などを24時間管理しながら8種類の葉物野菜を無農薬で育てています

ネットで注文が入ると、必要な分だけ野菜を収穫します。店から半径約5キロの範囲を対象に30分ほどで受け取れるように配達しています

この店を運営する「GG.SUPPLY」の國村隼太社長は「都会に畑を持ってきてデリバリーするので、いちばん新鮮」と話しています。

小売店で買うより割高ですが、遠くの産地から輸送するよりも二酸化炭素の排出を抑えられることに共感した消費者の注文も増えているそうです。

今後、東京などほかの大都市への出店も目指しています。

國村社長

「われわれは『地産地消』を超えた『近所産近所消』と呼んでいる。これを日本だけでなく世界のベーシックにしたい」

「すぐに届けてほしい」というニーズは一定数あるとみられ、ネット通販大手やコンビニ大手もこの分野に参入し、競争が始まっています。

半径数キロという限られたエリアを配達して回るこのビジネスは、昔ながらの街の小売店の商売とも重なります。地域密着でお得意さんをどれだけ増やせるかが、今後のカギになりそうです。

(福岡局 記者 下京翔一朗)

【2022年2月21日放送】