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インボイス


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2023年10月に始まる「インボイス」制度で影響を受ける小規模事業者の負担軽減のためどういった措置を導入するかが焦点となっていました。

インボイスとは事業者の間で消費税の税率や税額を証明する公式な請求書にあたり、消費税の控除や還付を受ける際に必要となります。

インボイスを発行するために税務署に登録すると現在は消費税の納税が免除されている年間の売り上げが1000万円以下の事業者も「課税事業者」となり、新たに納税しなければなりません。このため、今回の税制改正ではこうした事業者を対象に負担軽減策が導入されます。

消費税の納税額は、売り上げにかかる税額から仕入れの際などに支払った消費税を差し引いて計算します。

例えば事業者が税率10%の商品やサービスを販売して700万円を売り上げた場合、売り上げにかかる税額は70万円となります。その際、事業者が仕入れなどで40万円の消費税を払っていたとすると、70万円から40万円を引いた30万円がこの事業者の納税額となります。

今回の税制改正では、売り上げが1000万円以下の事業者が「課税事業者」になった場合、仕入れなどで払った消費税がいくらであろうと、売り上げにかかる消費税のうち、一律で2割だけ納めればよいという軽減措置を導入します。つまり、売り上げが700万円、消費税率が10%だった場合、納税額は70万円の2割=14万円となります。

政府・与党はこの措置によって、新たに課税事業者となった人たちが税額を計算する手間が大幅に省けるうえ、多くの場合、納税額も抑えられると見込んでいます。この軽減措置は、2023年10月の制度開始から3年間適用されます。

また、インボイスを発行するため「課税事業者」として登録するための手続きも柔軟にします。これまでは、制度が始まる2023年10月1日に登録を受けるためには、原則として3月末までに申請書を提出するよう求め、4月以降に申請する場合「困難な事情」があることを記載するよう求めていました。

しかし、事業者の準備状況を考慮して「困難な事情」の記載がなくても4月以降に登録ができるよう改めます。

また、年間の売り上げが1億円以下の事業者に対する負担軽減措置も導入します。仕入れ額が1万円未満であれば、インボイスは不要とする措置を2023年10月から6年間実施します。

事前登録をする動きも

札幌市に住む恒川恵さんは、10年前に全国通訳案内士の国家資格を取得し、北海道を訪れるアメリカやフィリピンなどの外国人観光客に対して、英語を使ってガイドの仕事をしています。

新型コロナの感染拡大後は、通訳の仕事がない状況が続いていましたが、水際対策の緩和に伴って9月から仕事が入り始め、今後の外国人観光客のさらなる回復に期待を寄せています。こうした中、恒川さんは、インボイス制度が始まるのを前に12月、税務署に対してインボイスの発行事業者となるための登録申請を行いました。

恒川さんは現在、年間の売り上げが1000万円以下で消費税の納税を免除されているため、発行事業者になれば、新たな税負担が生じ、手取りが減る可能性がありますが、旅行会社との取り引きが減ることを懸念し、登録を決めたということです。

恒川さんが取り引きする旅行会社のなかには、インボイス制度の開始に備えて、すでに精算に使用する書類に発行事業者に付与される登録番号を記入する欄を設けている会社もあるといいます。

恒川さんは、インボイス制度について、「手取りの収入が減る可能性があることや事務手続きの負担が増えることに抵抗があるが、国の税制で決まったことなのでしかたがない」と話しています。

そのうえで、小規模事業者に対する負担軽減策について、「一時的にでも負担が減ることに加え、制度に慣れるまでの時間ができるのはありがたい。取引先との精算にどういう影響があるのか、観光地の下見や資料の購入の際にかかった消費税をどう扱うか、確定申告の際にどういう手続きが必要かなど、具体的な対応についてわからない点が多いので、今後、確認していきたい」と話していました。

「インボイス」制度の理解が課題に

消費税のインボイス制度について都内のIT企業が個人事業主900人余りに2022年9月にアンケート調査を行った結果、「制度を理解している」と回答したのは14%にとどまりました。

アンケートは都内のIT企業がフリーランスや自営業者などの個人事業主926人に実施しました。「インボイス制度を知っているか」聞いたところ…

「制度の内容を知っていて、理解している」…14.4%
「名前は知っているが制度の内容はなんとなくしか知らない」…32.6%
「名前を聞いたことがある程度で制度の内容は全く知らない」…26.3%
「聞いたことすらなかった」…26.7%

インボイス制度に対応する登録申請書や請求書を作成するサービスを無料で提供しているIT企業「freee」の尾籠威則さんは「インボイス制度についての認知度はあがってきていますが具体的にどう対応すれば良いのかわからないという人が多いと感じます。インボイス制度の開始で請求書の保存に関しては電子化やペーパーレス化のニーズも高まると思う。手続きなどが複雑だと思うのでサービスの提供でそうした負担が減らせるようにしたい」と話していました。