アジアプロジェクトとは
前々回、前回のワールドカップは日本代表のキャプテンとして臨んだリーチ選手。
日本のトップ選手として「ワールドカップ優勝」を目標に、日々厳しいトレーニングを積んでいます。
その一方で取り組んでいるのが「アジアの人材育成」です。
所属する東芝ブレイブルーパス東京が立ち上げた「アジアプロジェクト」。
アジアの選手やスタッフに日本ラグビーが積み上げてきた知見を伝え、レベルアップを図ろうというものです。
リーチ選手は、このプロジェクトを通じて、選手やスタッフを発掘し、育成や普及などに携わっていこうとしています。
これまでアジアの選手の可能性に目をつけ、みずから選手の発掘を行ってきたリーチ選手は、チームとともに、さらに活動の場を広げようとしています。
(リーチ マイケル選手)
「1人でやっていた活動は限界がありましたが、チームと協力してプロジェクトを立ち上げることができました。海外から選手やコーチを受け入れることは、お互いにとってプラスになる。アジアの選手やスタッフがレベルアップし、自分たちも新たな文化に触れることができる。すごくいいサイクルだと思います」
アジアサミットで交流
実際、どんな活動を行っているのか、現場を取材しました。
1つは去年12月に行われた「アジア ラグビー インターナショナル オンラインサミット」。東福岡高校や桐蔭学園といった日本の高校の強豪チームの選手たちとアジアの学生たちをオンラインでつなぎ、ラグビー部の活動を紹介するなどして交流しました。
海外から参加したのは韓国、タイ、マレーシア、ブルネイの4か国の選手やコーチなど。リーチ選手は「大舞台では、どのようなマインドで臨めばいいか」と質問され、「どれだけ自分を信じきれるかが大事。試合前に一つ一つ不安を消していく」と答えていました。
サミットは、ラグビーを通じた交流の場となり、トップ選手のアドバイスを聞ける貴重な場にもなりました。
留学生の受け入れも
3月には、プロジェクトの一環として選手の受け入れも行いました。
参加したのはリーチ選手の母校、札幌山の手高校の卒業生でモンゴル出身の留学生、ダバジャブ・ノロブサマブー選手。ブレイブルーパスの練習に招かれ、トップレベルのプレーを肌で感じました。
この春から大学でもラグビーを続けるノロブサマブー選手にとって、貴重な経験になりました。
(ダバジャブ・ノロブサマブー選手)
「レベルが本当に高くてびっくりしました。リーグワンを『10』とすると高校のラグビーは『4』ぐらい。試合中のコミュニケーション、タックルのスピード、体もすごかった。練習中に『ここは、こうしたほうがいいよ』と教えてもらい、いろいろ学ぶことができました」
2週間余りの受け入れ期間、ノロブサマブー選手が宿泊していたのは、リーチ選手の自宅。リーチ選手と家族が食事などの生活を全面的にサポートしました。
取材した日のランチは、リーチ選手の手作りの“しょうが焼き丼”。ノロブサマブー選手は、練習の合間に「おいしい」と言いながら豪快に食べていました。
(ダバジャブ・ノロブサマブー選手)
「リーチ選手は日本のおやじみたいな人ですね。いつか日本代表になってワールドカップで優勝したいです。大学を卒業してリーグワンのチームに入れたら、リーチ選手と違うチームで対戦したり、同じチームで戦ってみたいです。それが夢です」
目指すはモンゴル代表監督?アジアに可能性を感じて
現役生活のかたわら、シーズン中にこうした受け入れに力を入れる選手は異例です。
日々の練習、トレーニング、体のケア…、選手としてやるべきことが多い中、なぜここまでするのか。
率直な疑問をぶつけました。
(リーチ マイケル選手)
「常にモチベーションを探しているんです。彼(ノロブサマブー選手)が来ることで僕もたくさんエネルギーをもらえるし、まわりの選手も結構、刺激をもらっていると思う。彼の学ぶ姿勢や成長していく姿が好きですね。忙しいかもしれないけど、彼が来ることで僕も元気にやっていけるんです」
自身もニュージーランドからの留学生として日本でラグビーを学んだリーチ選手。アジアの選手は、大きな可能性を秘めていると語ります。
(リーチ マイケル選手)
「ヨーロッパと比べるとアジアのレベルは全然違います。ただ、アジアの選手は体が強くて我慢できる力があります。ここから50年先を見れば、絶対いい選手がどんどん出てくると思います。長いスパンで考えて、いちばんやりたいのは、日本でアジアの選手がラグビーできる環境を作ること。大学や高校への留学、そしてリーグワンでアジアの選手がプロ契約しやすい環境をどんどん作っていきたいと思っています。将来、モンゴル代表の監督もやりたいし、アジアを回って日本で学んだスキルを教えたい。どんどんコーチを日本に呼びたいし、アジアと日本の距離を縮めたいですね。やりたいことはいっぱいあります」