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ジェイミー・ジョセフHCに問う ラグビー日本代表 ワールドカップをどう戦う

ラグビー日本代表の快進撃に何度も心を揺さぶられた2019年ワールドカップ日本大会。そして2023年、舞台はフランスへ。目指すのは悲願のベスト4。昨年、日本代表はテストマッチを重ね強化に乗り出すが勝利の2文字は遠かった。ワールドカップまであと半年。日本はいかにして戦うのか、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチに豊原謙二郎キャスターが問う。 (2023年3月12日放送)

ラグビー日本代表 進化への道筋

豊原キャスター:きょうは今後わたしたちが日本代表を見ていく上で、どういうところを注目していったらいいのかというヒントを伺いたいと思っていまして。

ジェイミー:世界のラグビーは日本とは全く異なる。日本のプレースタイルは(素早く展開する)継続ラグビーだ。この継続ラグビーこそ最善の方法だ。しかしこれ一辺倒だと体力がもたないのだ。

指揮官がまず語ったのは、「日本の伝統的な戦い方は世界の中ではかなり特殊である」という指摘だった。ジェイミーが日本代表のヘッドコーチに就任してから7年間、継続ラグビーに効果的なキックも織り交ぜるスタイルを模索してきた。その成果は早くも前回大会で現れていた。

去年10月に行われたニュージーランド代表とのテストマッチでは、日本はキックを織り交ぜた攻撃に一段と手応えを掴んだ。相手のいないスペースを狙って、さらに相手のミスを誘う。効果的なキックで度々チャンスを作り、ラグビー王国オールブラックス相手にワントライ、ワンゴール差に食い下がる大健闘を演じた。

新しい日本の戦い方は数字にも現れていた。ボールを持って走った回数を示すボールキャリーは、日本はニュージーランドのおよそ半分。一方でキックの数は日本が僅かに上回った。つまり、日本はニュージーランドの厳しい攻撃に晒されながらもキックを駆使する事で善戦したのだ。

ジェイミー:私たちはキックでプレッシャーをかけ多くの点を取った。広いスペースがあればロングキックで攻撃。スペースを見極め、状況に応じて自分たちのキックの技術を使っていく。こうしたプレーを選手たちが自信を持ってできるかどうかが大切だ。

オールブラックスとの戦いで手応えを掴んだ日本。しかし、直後に行われたイングランド代表とのテストマッチでは、課題を突きつけられることになった。

ワールドカップ本大会でも戦うイングランド。フィジカルを武器に力強いプレーで、相手に圧力をかけるのが特徴だ。この試合も、キックを織り交ぜる攻撃で挑もうとした日本。しかし有効な攻撃につながらない。むしろ相手にボールを渡してしまい、劣勢に立たされる場面が目立った。日本は次第に蹴るのを止め、ボールを継続するパス中心の戦い方に移行。僅かワントライに留まり大敗した。なぜ効果的なキックを蹴れなかったのか。指揮官が理由に挙げたのは、キックの攻防とは一見無関係に思えるプレーだった。

ジェイミー:スクラムで4回、私たちはペナルティーを犯すリスクがあった。そこから選手たちが自信を失い、ほころびが生じた。

前半11分のファーストスクラム。日本はスクラムを崩したとしてペナルティーをとられた。その後もスクラムで反則を繰り返した日本。スクラムでの攻防が日本の戦い方に大きな影響を与えたというのだ。

ジェイミー:相手の強いプレッシャーを選手たちが感じ(キックとパスの)バランスが崩れた。こうした状況に直面すると、日本はボールを保持しようとしすぎる傾向がある。ミスにもつながってしまうため、そこを改善する必要がある。

キックを封印してしまった日本。一方で相手のイングランドはキックを多用してきた。中でも密集近くでボールをさばく役割を務めるスクラムハーフ。狙い澄ました高いキックで味方を走らせる「ボックスキック」を何度も蹴ってきた。相手陣内に効率的に進入する戦術として、ここ数年、世界の強豪チームが取り入れている。そのデータを比較してみると、回数・距離ともに日本は大幅に下回っていた。

イングランドのプレッシャーが強烈だったため、スクラムハーフが自由にキックを蹴れない状況に陥っていたのだ。

豊原キャスター:スクラムハーフに対するプレッシャーを軽減するためには、今後どういうことが必要になってくるでしょうか?

ジェイミー:(スクラムや密集で)フォワードが勝てていないのに、一体スクラムハーフに何ができると言うのか。まずはフォワードがしっかり戦うことが必要だ。(ワールドカップで)イングランドはスクラムなどで主導権を奪いにくることは間違いない。その強烈なプレッシャーに対処し、できるだけ早く打ち破ることができれば、技術や速さ、体力で勝っている私たちが優位に立てるはずだ。フィジカルをより高め、より良い状態を作り出すための準備の時間を十分にとれれば、万全の状態でワールドカップを迎えられる。

4年前、「ONE TEAM」というスローガンのもと快進撃を見せた日本。今大会は、どんな景色を見せてくれるのか。

ジェイミー:イングランドなどの強豪より体格が小さい私たちには、「継続ラグビー」という"DNA"が刻まれている。それを失ってはならない。そのためにもキックをバランスよく織り交ぜることが大切なのだ。

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