教えて先輩! うんこミュージアム仕掛け人 面白法人カヤック 香田遼平さん

“うんこ”を輸出した男の発想法とは?

2020年01月24日
(聞き手:伊藤七海 勝島杏奈 田嶋あいか)

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うんこ。私たちに身近な存在でありながら忌み嫌われてきましたが、その価値観が変わり始めています。2019年には「うんこミュージアムYOKOHAMA」がグッドデザイン賞にも選ばれました。ターゲットとして選んだのは、子どもではなくて、若い女性です。ヒットの裏にある戦略を、仕掛け人の1人、香田遼平さんに聞きました。

うんこミュージアムって一体・・・

右も左もカップルであふれ返る2019年のクリスマスイブ。女子大生リポーター3人が向かったのは、東京・お台場にある「うんこミュージアム TOKYO」です。うんこをデザインの力で、愛すべきポップでカワイイ存在にしようと登場したこの施設。

カラフルなものや、ネオンなどフォトジェニックな空間で写真を撮ることができます。

大声で「うんこー」と叫ぶ声量を競うゲームなど、いわゆる「くそゲー」も楽しめます。2019年3月に横浜でオープンすると、半年で30万人以上が来場。その後8月には東京、10月には中国・上海への海外進出も果たしました。その仕掛け人の一人が、面白法人カヤックのプロデューサー香田遼平さんです。

うんこミュージアムができるまで

学生
勝島

そもそもなんで、うんこミュージアムを作ろうと思ったんですか?

もともと、横浜に「アソビル」という新しいエンターテイメント施設を作ろうという相談があったんです。何か面白い企画をといわれた時に、うんこを題材としたイベントを持って行ったら、「なんかこれだ!」ってなって。

香田さん

学生
田嶋

その場で!

うちの会社では、もともと、「うんこ演算」っていう算数アプリを2011年に発表していたんです。

かなり前ですね。私たちは、「うんこ漢字ドリル」の印象が強いですが。

うちはその6年前です。京大の数学科を卒業した人がガチで作ったので、小学生向けなのに、算数じゃなくて数学だったんです(笑)だから、あまりウケなかった。

うんこを出せば子どもは喜ぶんじゃないかって思っていたんです。でも、それは既存の価値観の延長線上でしかなかった

それより、新しいターゲットに向かおうということで、女子大生とか女子高生に向けて新しい価値観を提供していけば、ヒットするんじゃないかと。

学生
伊藤

具体的なアイデアはどうやって出していったんですか。

それはね、ロサンゼルスに行きました。

えー、すごい!

ロサンゼルスで29ROOMSっていう、部屋を集めたフォトブースが大流行していたので見に行ったら、そこがめちゃくちゃよくて。

最初にめっちゃ盛り上げるような仕組みがあって、もう部屋に入った時には楽しむ気持ちができているというか。実は、うんこミュージアムは、ロスのエッセンスが詰まっているんです(笑)

最初にみんなで、「メリーうんこ!」って叫んで入場しましたもんね(笑)

あと音楽も盛り上がる大事な要素だと気づかされたので、曲にもめちゃめちゃこだわっています。

日本の“うんこ”は海外へ

あと2019年10月には中国・上海にも進出したんですよ。

上海のポスター うんこミュージアムは、アカツキライブエンターテインメントとの共同企画

なんでまた、上海なんですか?

日本で成功したのって、文化的に日本人ってうんこに慣れ親しんでいるところがあると思うんです。あっ、アラレちゃんに出てきてたよね、みたいな。中国でも日本の漫画は読まれているだろうし、近いところがあるかなと。

あと、都市としてデカいというのもありますね。中国というこれから伸びていく市場で旗揚げすることができたし、反響もよかったと思います。

日本と上海で、うんこへの考え方って違うんですか?

色々調べたんですが、うずまきの形は世界中で一緒だし、「くそ野郎」っていう言葉の、「くそ」の部分は同じ事を差していて。

スペインのカガネル人形 約300年前うんこが最高の肥料だった時代、幸せが実るお守りとして生まれたそう・・・

絵文字の使い方についても調べたんですが、ちょっと小馬鹿にする時に使うという扱い方は世界中どこでも一緒でしたね。

ターゲットは子どもじゃない

昔は、うんこを肥料にしたり売買したりして、割と大切にしていたんです。でも、トイレができて、「汚いからトイレの中でしましょう」と変わり、「汚いものだ」と思うようになった。

でも、もともと子どもの時はうんこを楽しんでいるんですよ。それが大人になると、恥とか衛生観念とかを気にして楽しめなくなる自分がいたりする。

そんな自分を解放して、大人も無邪気に童心に返って、楽しいものは楽しもうって。

なるほど。

子どもがうんこを好きだからといって子ども向けの施設にしてたら、あんまりはやっていなかったかもしれないですね。

こういう施設を作るのは初めてだったので、人が入るか、めちゃめちゃ不安でしたよ。ヒットしなかったらもう終わりだと思いながら、やっていました。

ヒットしたと感じたのはどんなときですか?

自分の親が知った時ですかね。基本的に情報は、皆さんのような若い方がキャッチして広まっていくんですが、どこかに壁があって止まるんです。その壁の先にいる親世代が知っていると、相当、広まったなと思いますね。

“うんこ”だけじゃない香田さん

どうして今の会社に入ろうと思ったんですか?

僕、大学卒業後に、盆栽が好きでWEBメディアをやっていたんです。大学2年の時にはまって、成長記録を書いたり、海外の盆栽事情をまとめたり。それで1回バズって有名になって。

そろそろ就職するかと思ったときに、先輩が「向いているよ、この会社」っていうので、面白そうだと思ってカヤックだけ受けました。

1社しか受けていないんですか。

そうですね。大学時代は、夢も目標もなくふらふら生きていて、卒業したもののどうしようという感じだったので。

周りが就職していく中で、不安はなかったですか。

なかったです。多分、ガソリンスタンドのアルバイトをしていたので、バイトしときゃ大丈夫だろうと思っていましたから(笑)

カヤックは、一応クリエイターの会社なので、作った作品を持ってこいといわれて、盆栽を8鉢ほど持って行きました。これが松で・・・みたいな。

直感で人生を決めるのって怖くないですか。

キャリアは偶発的なものだと思っているんです。上手な人はキャリアを積み上げていけると思うけど、キャリアは自分が関わる人によって変わってくるので、わりとなるようにしかならない

最終的にこうなりたいというのが自分の中でぶれていなければ、直感で行くのをおすすめします。僕は盆栽をやってるときも、面白いことをしたいと思っていたから、面白そうな方に行こうって。

これまでの印象的な仕事について教えてください。

2019年6月の山形県沖地震の時、鶴岡市の酒蔵ではラベルを貼る前の瓶がめちゃめちゃに倒れて、混ざってしまったんですよ。どれが値段の高い純米大吟醸で、どれが普通酒なのかも分からなくなって。

地震で瓶が割れなかったにも関わらず、値段をつけるときには一番安い普通酒の値段でしか販売できない状況になっていたんです。

それは大変でしたね。

酒蔵の人たちも困っていると聞いたので、逆にラッキーボトルとして販売することにしたんです。もしかしたら、中身は純米大吟醸が入ってるかもしれないよと。

ラベルには山形の方言で、すみません、ありがとうという意味の「もっけだの鶴岡」とつけました。すると、すぐに完売するなど反響があったんです。

仲間と一緒に「fukko design」という社団法人を作って、今も各地の災害の復興支援につながる活動を続けています

一人でも多くの声に

面白いアイデアを集めるための情報源は何ですか?

Twitterですね。誰かのツイートから他の誰かのツイートに飛んで、それをずっと見ている感じですね。こういうのが話題になるんだとか思って、スクリーンショットに撮ったり。

皆さんも気になったニュースがあったら、Twitterで生の声を見た方が良いですよ。いろんな人の考え方を知っておいた方が良い

似たような人の意見を見て、終わっちゃうかもしれないですが。

たくさん情報を入れた上で、自分でそれに対して考えればいいんですよ。流れてきたニュースをただ見ても、それは事実でしかないので。

私はアイデアを出してくださいっていわれても、結構困るんです。ありきたりな発想になっちゃって、ぶっ飛んだ発想ができなくて。

世の中のアイデアって、何でも既存のアイデアの組み合わせなんですよ。

うんこ×漢字とか、うんこ×カワイイ。あと、あんパン×ヒーローとかね。れをできるように、普段から情報を入れていくということになるんです。

言われてみるとそうですね。

新しいものを考えようとしているから、何にも出てこないんですね。

アイデアってすぐに出ないから、いっぱい出すんです。3週間後にアイデアを出さなきゃいけないなら、1週目に50案、2週目に50案。

そしたら、ある程度自分の中で、いいなと思うものが出てくるので、その中で組み合わせたりして、最終案を作っていくんです。

質より量ですよ。僕は思いついたら、iPhoneに書き出しています。

例えば、どんなことを書いているんですか。

「Amazonがすごいんじゃなくて、宅配業者がすごい。」

「ボージョレ・ヌーボーの解禁の解禁ってなんだ。何でも解禁とつけたら、待ち遠しい感じは作れるのか。」

確かに、何々解禁って、ほぼ誰も待ち望んでいないですよね。でも、毎年やってくるっていうのがきっと面白いんです。

ふだんから頭をフル回転させているんですね。

ふだんはボケッーとしていますよ。でも、自分は夜遅くまでアイデアを考えるのが好きなので、そういうところはやっぱり向いていると思いますけど。

仕事とは 遊ぶコト

香田さんにとって仕事とは何ですか。

遊ぶコト」かな。

仕事とプライベートを分けないということですか?

仕事も遊ぶという感覚になってもらったほうがいいなというところだと思います。仕事の面白さ、自分でこうやった方が楽しいんだっていう風に作っていくというか。

僕も自分の中で納得がいって面白いものをやっている、仕事しているという感覚じゃないときに一番良い仕事ができるなっていう感覚があるので、遊ぶっていうくらいの方がいいかな。

就活生からすると、仕事で遊ぶってちょっと難しいような気もしますが。

仕事は真面目にやった方がいいかもしれないですよ。ただ、学生生活よりも社会人生活の方がずっと長いので、面白くない仕事をやっちゃうとやっぱり苦痛でしかない

他の人がこう言ってるみたいなもので決めるんじゃなくて、自分がいいと思うことを大事にしてほしいなと思いますね。他の人が色々言ってくるんですけれど、全て無視して。

できるできないじゃなくて、やりたいかやりたくないかで判断するっていうことですか。

それでいいと思いますよ。その方が長生きできます、ははは。

3人

ありがとうございました。

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