教えて先輩! プラレーラー 松岡 純正さん

“プラレーラー”という生き方

2019年11月15日
(聞き手:工藤 菜摘 佐々木 快)

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子どもたちが大好きな電車のおもちゃ、「プラレール」。それ一本で生計を立てているのが、“プラレーラー”こと、松岡純正さん(32)です。何度も転職を繰り返し、失敗したらホームレスになることも覚悟したという松岡さん。人生のレールを自分で敷くことを選んだ、その生き方とは?

プラレーラーってどんな仕事?

松岡さんは、「プラレールの宿」というHPを立ち上げ、YouTubeでレイアウトや塗装方法の紹介、駅を再現した動画などを公開。企業などの依頼を受け、イベントにあわせた展示を行うほか、毎月、さいたま市で体験型展示会「プラフェス」を開催。プラレールが収入源になっている。

学生
佐々木

プラレーラーって他にない職業だと思うんですけど、どんなことをしているんですか?

プラレーラーってメディアの皆さんが呼んでいるだけなんですけど(笑)。ざっくり言うと、YouTubeの動画を作って、新商品とか昔の商品とかを紹介したり、駅などのレイアウトをこうやって作るんだよと配信したりするのがまず一つ。

松岡さん

もう一つは、企業に頼まれて商業施設などでのイベント用にレイアウト設営を請け負うという感じですね。

YouTubeの収入ってどういう仕組みなんですか?

動画をアップして、Googleさんと契約しているスポンサーの広告主さんからちょっともらうって感じですよね。収入は、波があるので一概には言えないですね。

多いときでは月にどれくらいもらえるんですか?

月によって本当、ピンキリですよ。例えば、動画の広告収入以外にも企業のイベントを請け負った時などは、最大で100万円を超える月もあります。

おぉー。

学生
工藤

どうしてYouTubeで食べていこうと思ったんですか。

僕、あまり将来のことを考えてなくて、どちらかというと流れに身を任せてるんです。僕、大学卒業したあと、1年で4回も転職しているんです。

4回も?

転職した理由は、パワハラとか、給料の未払いとか外的要因が大きかったんですが、体調が悪化して睡眠障害になっちゃって。あまり働けない感じになり、当時働いていた大学職員の契約も切られちゃいました。

だから、ユーチューバーになりたくてなったわけじゃなくて、仕事がなくなったので、じゃあ本業にという流れなんです。

誰もやっていないことを!

最初は大変だったんじゃないですか?

めちゃくちゃ大変でした。もし失敗したら、ホームレスになろうという覚悟でした。そういう人生もあるでしょうしね。

何だろう、振り切ってみようみたいな。人生棒に振るならフルスイングで!

お金が足りないので、テレビは売りましたし、あとは人間関係も断捨離しました。収入が100万円に届くまで、誰とも会わない、飲み会にも行かない、家族にも会わないって。あと、コンビニ行かない、Amazonで物を買わないとかね。

すごい覚悟ですね。

1年に4回も転職しているし、みんなと同じ事をやっていてもダメだと。逆に、みんなと違うことをやってうまくいかないんだったら、自分で納得できると思ったんです。

その時に、1年間でプラレールの動画を1000本作ろうって目標を立てて。それで何が起きるか実験してみようと。

なぜプラレールをやろうと思ったんですか?

もともとは、プラレールをやっていた人間ではないんですよ。ずっと音楽活動をしていて、いろんな動画を作るのが好きだったんです。でも、音楽は著作権の問題があるし、他の動画はウケないし。

大学時代ブックオフでバイトをしていた時に、たまたまプラレールの本をちらっと見て、そのページに、「プラレールの専門家は、今いない」みたいなことが書いてあったのを思い出したんです。

仕事を辞めたときに、ネットで検索しても、やっぱりいなくて。俺がやればいけるんじゃないかみたいな、ノリですよね。

広告収入以外に、企業など外部からのお金が入ってくるようになったのが今から3年前。日々、勉強中です。

鉄道ファンだけじゃなく地元の人も意識

松岡さんが主催するイベントの特徴は、自由にプラレールを走らせることができること。自宅ではなかなか体験できない大がかりなコースを自由に走らせることができるとあって、大人から子どもまで多くの人が集まる。入場料は1000円。

イベントのこだわりを教えてください。

あんまり学校っぽくならないように、制度やルールは作らないよう心がけています。

子どもってこっちが思っている以上に真剣で、プラレールに見入った5歳児から「尊い」って言葉が出てきたりするし。すごい楽しいですよね。

色々な駅の再現もしていますが、どんなことを意識していますか。

再現した東京駅

鉄道ファンだけでなくて、その駅を利用している人のことを意識して作っていますね。ファンだけだと、見る人が限定されちゃうんで。

電車のことを全然知らなくても、駅を利用する地元の人に見てもらえるようにと思っています。

ポイントはしっかり押さえるようにしています。例えば、新幹線が上で、在来線が下という構造の駅が、逆になっていたら嫌じゃないですか。

あと、地元の人にとって欠かせない踏み切りや鉄橋は、ちゃんと盛り込むとか。

佐々木

奥が深いんですね。

なぜここに駅ができたか、歴史も調べますしね。そこを理解しておかないと、適当に作る感じになっちゃうし、何でこれがないのって言われちゃう。

お客さんに、「これ、家でもできる」って言われたら終わりなので。

バズらせる秘けつは?

松岡さんのある一日のスケジュールを教えてもらいました。

注目を集めるための仕掛けは、どうやって思いつくんですか。

本に面白い一文があったら覚えておいたりとか、ツイッターでバズっていることをチェックしたりしています。こういう文章の書き方でバズっているのかと。

やっぱり国語力って大事。何事も伝え方ですね。

あとは、日々のニュースをチェックして、新しく「高輪ゲートウェイ駅」ができるから、山手線の全駅を完全再現しようとか。イベントをやるときも色々と試しながらやっています。

印象に残っているイベントはありますか?

この前、新幹線の駅を東京から鹿児島中央まで、全駅再現したときに、レールを1本だけ写真を撮って、1リツイートにつき、1本ずつ繋げますってツイートしたんです。

面白そう!

そしたら、みんながどんどんリツイートしてくれて、最後は5万ぐらいまでいったのかな。それで結果的に、鹿児島までつながりました。

でもバズっていったけれど、この手法はもう使えないよなって。次はもっと違うことを考えないといけないので、それが難しいですよね。

来年は、東京から北を目指して、函館までの新幹線全駅再現をしようと思っているんです。また、仕掛けを考えなくちゃいけないですね。

僕、東北出身なのでうれしいです。

でも、作る方は大変ですよ。準備期間が3日間なので、駅が60駅だったとしたら、一日に20駅ずつ。朝9時から夜9時までずっとプラレールをやっていると、もう嫌いになりますよ(笑)

佐々木

会社員の時の自分と比べて、今の自分はどうですか?

何が違うかというと、会社員の仕事って時給なんですよ。1時間、1日いくらって決まってるんですけれど、僕の今の働き方って、自分で自分の給料を決めるので、そこが難しいですよね。

企業のイベントでレイアウトを制作する松岡さん

例えば、自分でイベントをやるにしても入場料をいくらにするか考えなきゃいけないし、レイアウトを頼まれた時も、いくらで作るみたいな。自分の値段が問われるんです。

線路がたくさんあれば、いっぱい走れる

就活生に向けてアドバイスはありますか?

僕も就活の時は、80社受けて3社しか受からなくて、マジかと(笑)。でも就活しないと自分と向き合う期間って、そもそもないじゃないですか。大事なのはそこかな。自分が何が好きで何が嫌いなのかを見つけて欲しい。

会社に受かって途中で辞めても、それはいいじゃない。例え会社に受からなかったとしても、それは悪いことじゃない。難しく考えないで欲しいですね。だってみんな転職すると思うよ。

失敗しても、転職しても、自分に合うものが見つかればいいと。

そうそう。キャリアって自分で考えても、そんなに考えたとおりにならないし、向こうからやってくる感じです。そこがキャリアの難しいところ。自分で考えて、その道を行く人もいるけれど、それは超少数派だと思うんです。

僕は、就活しつつ、自分でYouTubeのチャンネルを始めていたんです。本の転売もしたし、転職活動をしながら、音楽活動も、バイトも。結構、色んな事やっていました。

バンドで演奏する松岡さん

すごい、多様ですね。

だから、別に一つに絞らなくても良いんじゃないかな。やりたいこととか、やってみたいことを片っ端からやってみるのはありだと思う。

線路が一本だと電車はぶつかるじゃん。線路がたくさんあれば、いっぱい走れるでしょ。そんな感じでいいのかなと。いろんなことをやって、色んな事を見て。

挑戦する気持ちが大事なんですね。

僕のイベントを手伝いに来てくれる人にいつも、「どんなレイアウトを作れば良いんですか」って聞かれるんです。

僕が答えるのは一緒で、「ツイッターで1万リツイート」もしくは「YouTubeで100万回再生される」レイアウトを作ってねと言ってます。

さすがに難しくないですか?

めちゃめちゃハードで難しい。でも、そう言った方がクリエイティブに作ってくれるんです。圧倒的に考えさせる、自分で考えてって。

正解がないから、良いも悪いもないので、大丈夫。もし、間違えたらごめんなさいっていえばいいだけの話。でも、子どもはできるんだけど、大人はできないんだよね。

失敗したからって、誰も責めたりしないからね。むしろ、この人挑戦したんだ、やるじゃんって思うし。だからどんどん挑戦すればいいと思う。

仕事とは、「人を楽しませる事」

最後に、松岡さんにとって、仕事とは。

人を楽しませることだね。

誰かからお金をもらうっていうのは、人の悩みや問題を解決するか、人を楽しませるかのどっちかしかなくて。

根本的なところで人を楽しませることができれば、活気づくし、うまく信用が回ってくるから、それで仕事の流れができる。人を楽しませることができれば、何でも仕事になるよって。

おすすめの方法はありますか?

尊敬できる人、技術を学びたい人を片っ端から見つける。今、インターネットやSNSがあるから、いろんな人がいっぱいいるし、すごいと思う人を見つけることかな。

しゃべり方はこの人、知識はこの人みたいなね。そういう感じでメンターというか、師匠を見つけて、参考にできるところは参考にすると。

吸収できれば良いけれど、吸収には時間がかかるので、まずはマネをするところから始めてみましょう

ありがとうございました。

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