2019年08月02日
(聞き手:工藤菜摘 田嶋あいか 西澤沙奈 )
夢と公言していた「さいたまスーパーアリーナでの単独ライブ」を実現したシンガーソングライターの岡崎体育さん。ただ、ここまで決して順調だったわけではありません。大学を卒業後、就職先を退職。引きこもり生活も経験。そしてメジャーデビューまでの苦闘。そこから生まれた「岡崎体育」さんの人生の教訓、学生リポーターが聞いてきました。
京都在住の男性ソロプロジェクト。実家の学習机でつくった音楽は、等身大の世界を秀逸なセンスで表現する歌詞と音楽性にハマる人が続出。ライブではPCひとつで単独ステージに立ち、観客席を熱狂と爆笑に包む。「さいたまスーパーアリーナでワンマンライブ」という夢をこの6月に実現した。
今までで、いちばん大変なことってなんでしたか?
脱サラして最初の1年間は自分の音楽活動の方向性を定めていくというか…、どうしたらメジャーのレコード会社の人の目につくんだろうって模索してて…
その1年間はすごく、試行錯誤しました。お客さんにずっと毒吐きまくってたりとか、悪態つきまくってたりとかした時期もあったし、本当に1秒たりとも歌わへんライブとか。
えー。それライブなんですか(笑)
ライブじゃないですね、もはや。先に家で録音して、それに合わせて当て振りするだけとか。
あっ、話題の。
その話題のやつをやってた時期もあったんですけどね。これで大丈夫なのかって…最初の1年間は感じましたし、相当辛かった、しんどかったですね。
当初は、そういう時期もあったんですね。
いろいろ考えて、僕の実力ではギターを片手に弾き語って歌うだけでは芽は出ないだろうなと自己分析して、なので、ちょっと特殊な形のライブをやっていこうと決めましたね。
話題になった口パクは、きっかけがあったんですか?
きっかけですか?それは、ライブハウスに出るギリギリになって新曲を思いついた時があって、けど歌詞が覚えられへんなって。
「ライブやのに歌詞が覚えられへん、どうしよう」ってときに思いついたのが、録音して口パクやって自分でばらす曲を作ってみようと。
面白いですね(笑)
ピンチから生まれた発想というか…。口パクを公言するって、たぶん、音楽業界ではなかったことなんで。
そうですよね。
それを面白いと思ってくれたお客さんやライブハウスの人がいて、「岡崎体育っていう変な事してる奴がいるぞ」って話題になって、レコード会社にまで伝わったっていう流れですかね。
口パクのライブ、すごい話題になりましたよね。
そうですね、音楽番組でもやらせてもらって、タモリさんが面白いって言ってくれて。タモリさんが面白いっていったら面白いだろうって、強力な味方というか、自信につながりましたね。
就職先を辞めて、ひきこもってからメジャーデビュー、その原動力というか自分はできるっていう自信はありましたか?
どうせ脱サラしたし、貧乏でもいいから、やりたい事をやる人生にしようと思って、ミュージシャンを目指したので、結構吹っ切れてたかな。
でも、「4年間でメジャーデビューできなかったら、普通に一般企業に就職」っていう親との約束があったんですよ。
期限付きだったんですね。
だから、タイムリミットの中でやりたい事をやって、目標にどうつなげるか、というのを考えてやっていましたね。
そういう意味では、期限を設けてもらってよかったんですよ。期限がないとダラダラいつまでもやっちゃうだろうし。
それって不安じゃなかったんですか?私は不安に感じちゃいます。どうなっちゃうんだろうって…。
それもその通りで、もう毎日不安ばっかりだったんですよ。
でも音楽やってると、ほんまに煮干ししか晩飯食わへんみたいな、むっちゃカツカツの生活の中で音楽やってる人とか、お金ないのに全国回ってツアーしてるバンドとかいて、周りが一生懸命頑張ってる姿を見てきたんで。
デビューできるかどうかは不安でしたけども、将来に対する不安みたいなのは、特にはなかったですね。
4年間、計画的に行動して、メジャーデビューしてて凄いなって思ったんですけど、コツはありますか?
コツは、細かく目標を立てることですね。
いちばん大きい目標を1つ立てるのは前提としてね。
メジャーデビューが最終目標だとしたら、いついつまでに、CDをリリース、いついつまでに東京でライブ。いついつまでにレコード会社の人たちが見てるショーケースライブに出るとかね。
そうやって細かい目標を決めて、実現していくことをずっと意識していましたね。
それから、目標を立てるだけじゃなくて、自分の夢とか目標を伝えること。例えばSNSで拡散したりする、そうすると、もう後戻りできなくなるじゃないですか。
人に言っちゃうんですね。
人に言うと、諦めるとちょっと恥ずかしいなと思っちゃうタイプなんで、だから人に伝えて退路を断つというのは大事でしたね。
細かく目標を立てるスタイルは昔からですか?
そこまで明確な意識は持ってなかったですね。ただ、夏休みの宿題とか、比較的早く終わらせるタイプだったんで、もしかしたら潜在的にやってたかもしれないですけど。
参考にします!
あと、やっぱり1番大切なのは、自己分析ですね。客観的に自分を見る事ができるかどうか、というのは大きいですね。
僕の場合、容姿がイケてるわけでもないし、歌唱力が高いわけでもないので、レコード会社からしたらマイナスと捉えると思うんですよ。
でも、そういう理由でダメと思われたくなかったんで、自分の容姿とか、歌唱力のこととか逆手にとったつぶやきとかもしましたね。
なかなか自分で言うのも辛かったりするんですけど、ピエロになり続けるというか。
エンターテイナーとして、パフォーマーとして、人にいい意味で笑われても悪い意味で笑われても、それを貫き通すのは精神力というか、強い心がやっぱり必要なので。
僕も最初こういう道を進んだ時にすごく恐怖を覚えたし、不安でしたけど、どこかで覚悟を決めないとできないし。
今のやり方で良しとしてくれた昔の自分に、本当に感謝の気持ちはありますね。
最後に「仕事」とは?と「情報」とは?をボードにお願いします。まずは仕事とは。
ちょっとカッコよく横文字でいこうかな。
はい。これで。これは本当に大事ですね。
試行錯誤って意味ですけど、絶対失敗するんですよ、最初は。仕事で失敗した方がいいですし、失敗で終わるんじゃなくて、どれだけトライできたかということ。
どんな仕事であれ、やりがいを持って、何回もトライできる仕事に出会う事が大切だと思うんで、こう書かせてもらいました。
失敗してもトライすることが大切ってことですね。
そうですね。僕も何度も本当に失敗してきましたし、ライブハウスでだだスベリした事も何回もあるんで。
何曲も何曲もつくって、これがウケるとか、これはまあウケへんなとかわかると、ライブハウスでやっていく曲が固まっていきました。
そういう積み重ねで、こういう方向性でやっていけばいいんだって学べると思うんで、やっぱり試行錯誤が大切ですね。
では「情報」とは?もお願いします。
情報か…。そろそろボケなあかんかな。
「情報」って、なんで情けないっていう字なんですかね?情けなく報われてるっていう。
まあ僕の場合・・・、こうしようかな。
「情けなくても、報われるもの」。これ、めちゃくちゃかっこよくないですか!
僕は、活動の中でたくさんつらい経験もして、俺は駄目だなと思う事がたくさんあったんですけど、自分で情報収集して、こういうのはウケるって探してきたんで。
僕、スーパーマーケットでバイトしてたんですけど、バイトの大学生に、学校でどんなことが流行ってるのか聞いたりもしてました。泥臭くね。
泥臭くて情けなくてもやっぱ情報を集めていくと、最終的に報われるんだなってすごく感じました。
深いです!
「情けなくても報われるもの」。めちゃくちゃかっこよく決まったところで京都に帰ろうと思います。
ありがとうございました(笑)