2023年5月3日
チャールズ国王 イギリス

イギリス チャールズ国王 戴冠式 見どころは?参列者は?

5月6日に行われるイギリスのチャールズ国王の戴冠式。
エリザベス女王の時以来、70年ぶりとなる戴冠式の見どころや参列者は?
わかりやすく解説します。

そもそも戴冠式って?

イギリス王室は戴冠式について「宗教的な儀式であると同時に、君主の即位を祝福する機会でもある」としています。

エリザベス女王の戴冠式(1953年)

チャールズ国王は去年9月、エリザベス女王の死去に伴って国王に即位しましたが、戴冠式は君主の頭に王冠を授けるという象徴的な儀式によって、即位したことを国内外に印象づける意味があります。

戴冠式は1000年以上にわたりほぼ同じ形で続けられ、今も行っているのはヨーロッパではイギリスだけとされています。

今回の戴冠式はいつ?どこで?

現地時間の5月6日午前11時、日本時間の午後7時から、イギリスの首都ロンドン中心部のウェストミンスター寺院で行われます。

ウェストミンスター寺院

1066年以来、イギリス国王の戴冠式が行われてきたウェストミンスター寺院。1953年のエリザベス女王の戴冠式をはじめ、これまでに38回の戴冠式が行われています。

具体的なスケジュール、ルートは?

戴冠式の当日、チャールズ国王とカミラ王妃はバッキンガム宮殿を出発し、ウェストミンスター寺院で戴冠式を行ったあと、再び宮殿に戻ります。

国王夫妻は馬車に乗って近衛兵などの列とともにバッキンガム宮殿を出発し、宮殿の中央ゲートを通って祭典や儀式などが行われる「ザ・マル」という通りを進みます。
そして、1912年に完成した歴史的な建造物「アドミラルティ・アーチ」をくぐって首相官邸や政府機関の建物が建ち並ぶ「ホワイトホール」という通りを南下。
議会の周辺を通り、ウェストミンスター寺院に入ります。

戴冠式の見どころは?

イギリス王室に伝わる数々の伝統の宝物ほうもつが見どころの1つです。
戴冠式では、チャールズ国王が誓いを述べたあと、イギリス国教会の最高位の聖職者であるカンタベリー大主教によって、聖なる油がチャールズ国王の手や頭に塗られ、その後、王冠が授けられます。

聖エドワードの王冠

チャールズ国王が戴冠するのが「聖エドワードの王冠」です。1661年につくられたもので、エリザベス女王にも戴冠式で授けられました。

ルビーやアメジスト、サファイア、ガーネットなど大きな宝石で彩られ、重さは2キロほど。上部にある十字架と宝珠はキリスト教の世界を象徴しているとのことです。

そして70年前も、エリザベス女王が両手に持っていたしゃく

エリザベス女王が持っていた笏

十字架がついているものと、白いハトがついているものの2本。

「公平」と「慈悲」など王室の役割を象徴しています。十字架の下にある大きなダイヤモンドは、世界最大の原石「カリナン」から切り出された貴重なものです。

式典では、こうした貴重な宝物の数々が披露されるということです。

両手に笏を持つエリザベス女王(1953年)

使われる馬車は2種類?

バッキンガム宮殿からウェストミンスター寺院に向かう際に乗るのが「ダイヤモンド・ジュビリー・ステート・コーチ」。
そして、戴冠式のあと宮殿に戻る際に乗るのが「ゴールド・ステート・コーチ」です。

「ダイヤモンド・ジュビリー・ステート・コーチ」は、2012年のエリザベス女王の即位60年を記念してつくられ、これまで女王をはじめ、イギリスを訪れた各国の首脳などが使用してきました。

「ダイヤモンド・ジュビリー・ステート・コーチ」

内装には、バッキンガム宮殿やウィンザー城、それに、16世紀にフランスとの海戦で沈没した船「メアリー・ローズ号」など、イギリスの歴史にゆかりがある建造物の木材や金属が使われています。

長さは5メートル超、重さは3トン以上だということで、6頭の馬が引きます。中にはエアコンが取り付けられているほか、窓は電動で開閉できるということです。

一方、宮殿に戻る際に使用される「ゴールド・ステート・コーチ」。

「ゴールド・ステート・コーチ」

1831年の国王ウィリアム4世の戴冠式以降、すべての戴冠式で使用されていて、エリザベス女王の即位70年を記念する去年の「プラチナ・ジュビリー」でも登場しました。

金ぱくが施された豪華けんらんなデザインが特徴で、長さは約7メートル、高さは3.6メートルあります。重さが4トンあり8頭の馬で引きますが、歩くようなペースでの移動になります。

乗り心地について、エリザベス女王がかつて「ひどい。あまり快適でない」と回想した、とも言われています。

戴冠式の招待状も話題に?

イギリス王室が公開した招待状には、盾にライオンやユニコーンなどをかたどった国王の紋章のほか、色とりどりのイギリスの草花が描かれ、中央には「チャールズ3世国王とカミラ王妃の戴冠式」と書かれています。

戴冠式の招待状

話題となったのは、カミラ王妃の肩書きです。

カミラ王妃についてはこれまで英語で「国王の配偶者」を意味する「クイーン・コンソート」という称号が使われていましたが、初めて「クイーン」という称号が使われました。

カミラ王妃をめぐっては、慈善活動に取り組む姿勢が評価される一方で、チャールズ国王がかつてダイアナ元皇太子妃と離婚したあとに再婚した経緯などから、王妃と名乗ることに抵抗感があるという声は根強くあります。

チャールズ国王とカミラ王妃

エリザベス女王も生前「その時が来たら、カミラ夫人が『クイーン・コンソート』と名乗ることが心からの望みです」という声明を発表していましたが、公共放送BBCは「王室は今回『クイーン』という称号を使うことで、亡き女王の意向よりさらに一歩踏み込んだ」と報じています。

戴冠式の参列者は?

秋篠宮ご夫妻

日本からは秋篠宮ご夫妻が参列されるほか、アメリカからはバイデン大統領の夫人、ジル氏が参列する予定です。
また、オランダのウィレム・アレキサンダー国王、スウェーデンのグスタフ国王、スペイン国王のフェリペ6世など、イギリス王室の親類にあたる王族の参列が予定されています。

イギリスのメディアは、戴冠式に他国の王を招くことは異例で「900年の伝統から離れることになる」などと伝えています。

バッキンガム宮殿 (2018年7月)

王室メンバーでは、ウィリアム皇太子やキャサリン皇太子妃などが参列するほか、3年前(2020年)に王室の公務から退き、現在はアメリカで生活している次男のハリー王子も出席する予定だとイギリス王室が明らかにしています。一方、妻のメーガン妃は欠席するということです。

また、ウィリアム皇太子夫妻の長男ジョージ王子は「ページ・オブ・オナー」として少年7人とともに国王夫妻の長いローブのすそを持つ役目を務めます。

今回の戴冠式の特徴は?

伝統的な儀式が行われる一方で、エリザベス女王の時と比べて規模を抑えたものになっています。

BBCなどによりますと、エリザベス女王の戴冠式では、臨時の席を設けるためにウェストミンスター寺院を5か月間閉鎖して準備にあたるなど、1952年2月の即位から1年以上の準備期間を経て、1953年6月に行われました。

前回の参列者は8000人以上でしたが、今回は2200人程度になる見通しだということです。また、式典の時間も、エリザベス女王の時より短くなる見込みだと伝えられています。

社会の多様性反映する戴冠式に

さらに今回の戴冠式では、チャールズ国王の希望で現代のイギリス社会に存在するさまざまな宗教やコミュニティーに配慮するよう計画が練られているということです。

イギリス王室によりますと、戴冠式に招待された2200人以上の参列者の中には、新型コロナウイルスの感染拡大の際に生活に困窮した人の支援に尽力した人なども含まれているということです。

また、式典にはイスラム教やヒンドゥー教、シーク教やユダヤ教を信仰する議員も出席して戴冠式に必要な「戴冠宝器」の一部を届ける役割を担うということで、キリスト教徒以外がこうした役割を担うのは初めてだと伝えられています。

チャールズ国王の戴冠式についてイギリス王室は「長い伝統に根ざすとともに、現代の王室の役割を反映し、未来を見据えたものになる」としています。

チャールズ国王の課題は?

最大の課題は、イギリス王室の存在意義について国民からの理解を引き続き得られるかどうかです。

バッキンガム宮殿

大手調査会社「ユーガブ」が4月に行った調査で「イギリスにとって君主制は良いか、悪いか」という質問に対し、「良い」と回答した人は全体の53%で「悪い」の14%を大きく上回りました。

ただ、4年前の調査と比べると「良い」は7ポイント減ったのに対し、「悪い」は4ポイント増え、その差は縮まっています。特に若い世代ほど君主制を疑問視する人の割合が多くなっていて、18歳から24歳まででは「悪い」が21%と2割を超えています。

背景には、記録的なインフレが続き国民の多くが生活費の高騰に苦しむ中、王室はばく大な不動産収入や税制の優遇措置などによって優雅な生活を送っているという批判の高まりがあります。

メーガン妃とハリー王子

さらにチャールズ国王の次男・ハリー王子と妻のメーガン妃が王室内で人種差別的な発言をされたと述べたことや、王室に長年仕えてきた補佐官が黒人女性に人種差別的な対応をしたとして辞任を余儀なくされたことも、イメージの悪化を招きました。

また国外でも、イギリスの君主を国家元首としてきたイギリス連邦の一部の加盟国では、エリザベス女王の死去をきっかけに立憲君主制を廃止し、共和制に移行するべきだという声が高まっていて、国際社会におけるイギリスの存在感の低下に拍車がかかる可能性も指摘されています。

当時のチャールズ皇太子とエリザベス女王(2022年)

70年にわたって君臨した母親のエリザベス女王が築いてきた伝統と信頼を受け継ぎながら「新たなイギリスの顔」として時代に即した王室像を国内外に示していけるかが注目されます。

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