2022年7月7日
ジョンソン元首相 イギリス ヨーロッパ

なぜ?イギリス ジョンソン首相辞任へ 後継者選びどうなる?

相次ぐスキャンダルで、就任からおよそ3年で辞任に追い込まれたイギリスのジョンソン首相。
いったい何が起きたのか。
早くも始まっている後継者選びに向けた駆け引きは。

詳しく解説します。 

ジョンソン首相 辞任表明で何を語った?

ジョンソン首相は7日、ロンドンの首相官邸で声明を発表し、与党・保守党の党首を辞任して、首相の座からも退くことを明らかにしました。

ジョンソン首相は、2020年のEU=ヨーロッパ連合からの離脱や新型コロナウイルスのワクチンの接種などの実績を強調し「世界で最もすばらしい仕事を手放すことがどれほど残念かわかってほしい」と無念さをにじませました。一方で、相次ぐスキャンダルへの言及はなく、謝罪もありませんでした。

後継者選びのスケジュールは?

新しい党首を選ぶ選挙はこれまでの例に従えば、3人以上が立候補した場合は議員による投票を繰り返して2人に絞り込んだうえで、全国の党員による投票が行われます。

イギリスのメディアは、議会が夏の休会に入る7月後半までに候補者が2人に絞り込まれ、ことし9月以降に最終的な投票が行われる見通しを伝えています。ただ、党内からはジョンソン首相が秋までそのポストにとどまることに反発して、手続きを急ぐべきだという声もあがっています。

誰が後継者になりそう?

保守党では7月12日、党首選の立候補の受け付けが締め切られ、8人による選挙戦が始まりました。主な立候補者は次の通りです。

スナク前財務相(42)

スナク氏は、インド系の両親のもとに イギリスで生まれました。ジョンソン政権で財務相の要職にありましたが、今月5日、辞表を提出し、ジョンソン首相が辞任を表明するきっかけとなりました。8日には、党首選に立候補する考えを表明するとともに、ホームページを立ち上げ、動画の中で、「この国を正しい方向に 導きたい」などと述べ、新型コロナウイルスの感染が拡大するなか財務相として責務を果たしてきた 実績を強調しました。

スナク前財務相

トラス外相(46)

トラス外相は、ジョンソン政権で外相のほか国際貿易相もつとめていて、2020年には日本との経済連携協定をめぐる交渉で合意し署名しました。立候補する考えを表明した際に公表した動画では、国内外で公務をこなす様子をアピールし豊富な経験を強調しています。またイギリスの新聞「テレグラフ」に寄稿し、「首相に就任したら 初日から減税を実施する」 と表明するなど生活費の高騰で大きな影響を受けている国民や経済のために対策を実施する 考えを明らかにしました。

トラス外相

モーダント通商政策担当相(49)

モーダント氏は、2019年に女性で初めて国防相に就任したことでも 知られています。ジョンソン首相からは距離を置いていて前回、2019年の党首選では ハント元外相を支持しました。保守党系のウェブサイトが11日発表した保守党の支持者を対象に行った調査では、モーダント氏が 最も高い支持を得ています。

モーダント通商政策担当相

トゥゲンハット議会下院 外交委員会委員長(49)

トゥゲンハット議会下院 外交委員会委員長

イギリス政治が専門のロンドン大学クイーンメアリー校のティム・ベール教授は、政党が党首を交代させる際には前任者と異なるタイプを選ぶ傾向があるとして、保守党は判断や行動が予測可能で信頼できる人物を選ぶだろうという見方を示しました。ただ、「候補者は大勢いるが、十分なカリスマ性を備えた人物はおらず、明確な後継者と言える候補がいないのが保守党の問題だ」として、後継者選びが難航する可能性もあるという考えを示しています。

イギリス政界では何が起きたの?

辞任したスナク財務相(左)とジャビド保健相(右)

7月5日、財務相と保健相が辞任したのです。また、6日には、ウェールズ担当相が辞表を提出しました。40人を超える政府高官が次々に辞任を表明しています。さらに、6日には、ウェールズ担当相が辞表を提出しました。

さらに、これまでにおよそ50人の政府高官などがすでに辞任を表明していて、新たに登用できる人材が足りなくなっているとも指摘され、政権運営にも影響が出る事態となっていました。

なぜ閣僚らの辞任が相次いだの?

ジョンソン首相を巡る一連の問題を受けてです。これまでに、以下のようなことなどに対して、批判が高まっていました。

・新型コロナウイルスの厳しい規制が続く中、首相官邸などでパーティーが繰り返された。
・ジョンソン首相が任命した与党・保守党の幹部が性的なスキャンダルで辞任した。
・議会下院の2つの選挙区の補欠選挙で、与党・保守党がいずれも大差で敗れた。

与党幹部の性的なスキャンダルでは、首相が、この与党幹部が過去にも同じような問題を起こしていたにもかかわらず、虚偽の説明などをしていたことがわかり、批判がさらに高まりました。

こうしたことを受けて、2人の主要な閣僚が辞任に踏み切ったことで、首相を「見限る」動きが一気に広がったのです。

辞任表明までの経緯は?

ジョンソン首相は6日、議会で行った答弁で続投する意向を重ねて表明していました。

一方で、保健相を辞任したジャビド氏は「問題は組織のトップにあり、このままでは変わらないという結論に達した。どこかの時点で『もうたくさんだ』と判断すべきで、今がそのときだ」と強く辞任を迫りました。

みずからを支持する閣僚、さらには側近からの説得にも応じてきませんでしたが、任命したばかりの財務相からも辞任を求める書簡を公表される事態となったほか、閣僚や政府高官も次々と辞任。ジョンソン首相が職を続けたいと思ってもついてくる人もわずかで、辞任を選ぶしかないという状況に追い込まれ、7日の辞任表明となりました。

市民の受け止めは?

ロンドンでは、辞任を歓迎し次のリーダーに期待する声が多く聞かれました。

60代の女性
「辞任は本当に喜ばしいことだが、彼の辞任の演説を聴いていると、本心からそう思っているとは到底思えない。彼はすべての責任を他人のせいにしている」

19歳の男性
「パーティーの問題にしても、国民に対する気遣いのなさにしても、最低のリーダーの1人ではないか。次のリーダーには国民を代表して私たちを正しい方向へ導こうという人が望ましい」

40歳の男性
「新型コロナウイルスの感染拡大の際にはワクチン接種やロックダウンの実施など、本当によくやってくれた。しかし議会であまりにも多くのうそをつき、国民の信頼を失ってしまった」

そもそもジョンソン首相とは?

ジョンソン首相は、EUからの離脱が最大の争点になった2019年の総選挙で与党・保守党を圧勝に導き、離脱を実現させるなどその実績をアピールしてきました。

また、2022年2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻して以降は、プーチン大統領に対して一段と強硬な姿勢を示してきました。

一方で、ウクライナの首都キーウをたびたび訪問して、ウクライナへの積極的な支援を打ち出すなど存在感をアピールしてきました。

しかし、いわゆる「パーティー問題」が表面化し、最大野党・労働党にも支持率でリードされる状況となるなど、保守党内でもジョンソン首相に対する圧力はいっそう強まっていました。

国際ニュース

国際ニュースランキング

    世界がわかるQ&A一覧へ戻る
    トップページへ戻る