2022年7月7日
新型コロナ アメリカ

「息が続かない」“コロナ後遺症”アメリカ感染者の2割とも

息が続かない、味覚がなくなる、頭に霧がかかったような症状も。

今、アメリカでは、新型コロナウイルスに感染し、発熱などの症状が回復した後になって、こうした症状に悩まされる人たちが、少なくありません。

新型コロナウイルスとの関連が指摘される、いわゆる「コロナ後遺症」です。

アメリカでは、新型コロナウイルスに感染した人の、約5人に1人が経験しているというデータもあります。

「コロナ後遺症」とは?取材しました。
(アメリカ総局記者 添徹太郎)

「コロナ後遺症」とは?

新型コロナウイルスに感染し、回復したあともさまざまな症状が現れることで、明確な症状の定義は確立していませんが、WHO=世界保健機関は、感染してから2か月以上にわたり、ほかの病気では説明のつかない症状が続くとしています。

長期化することもあるため、英語では「Long COVID」(ロング・コビッド)とも呼ばれています。

具体的にはどんな症状が出るの?

「コロナ後遺症」に悩まされたという、アメリカ人を取材しました。

東部ニュージャージー州に住む、リマ・サマンさんは、去年3月、新型コロナに感染し、その後、味覚や嗅覚の低下、せきの発作などの症状が1年以上続いているといいます。

リマ・サマンさん

また、会話をしたり笑い声を上げたりすると息が続かず、ぜんそくの吸入器を使っているとも話していました。

ほかにはどんな症状があるの?

特に、サマンさんが悩まされているというのが、頭に霧がかかったような症状です。

言いたいことがあってもすぐに言葉が思い浮かばなかったり、何年も一緒に暮らすパートナーの名前を忘れたりしたこともあり、生活に支障が出ることもあるといいます。

サマンさんは「長い文章を読むのが難しく、大好きな読書もできなくなりました。体調も感染する前の状態に戻らず、不安です」と話していました。

「コロナ後遺症」だと診断できるの?

いわゆる「コロナ後遺症」には明確な定義がなく、はっきりと診断すること自体が難しいのが現状です。

後遺症と判断する上では、新型コロナへの感染が原因なのか、あるいは新型コロナで持病が悪化したのか、それとも全く別の病気なのかを判別することが重要ですが、さまざまな症状が同時に出るため、総合的な症状から「コロナ後遺症」だと判断するしかありません。

検査でわかるようになるのが理想ですが、現時点では、血液や細胞のどんな数値を調べるべきかも、まだわかっていません。

なぜ「コロナ後遺症」が出るの?

イギリスの研究チームが2022年に発表した論文によりますと、新型コロナの感染後、平均で4か月あまりたった人の脳のMRI画像を調べたところ、感染しなかった人に比べて、わずかに萎縮している傾向がわかったということです。

イギリスの研究チームが発表した論文

特に、嗅覚をつかさどる部分や、記憶に関する部分での萎縮が顕著だったとしています。

感染の影響は、神経や精神の状態にまで及んでいる可能性もあり、症状が4週間以上続いた人を対象にした研究では、感染から6か月以上たった時点でも「疲労」「けん怠感」「認知機能障害」などの症状を訴える人が多くみられたということです。

原因はわかっているの?

脳や神経疾患のリハビリが専門のデビッド・プトリノ博士に取材をしたところ、博士は「コルチゾール」と呼ばれるホルモンの分泌が関わっている可能性に着目していると明らかにしました。

コルチゾールは、通常、朝目が覚めたときに血中の濃度が大きく上昇し、血糖値や血圧が上がり活発な行動が可能になりますが、「コロナ後遺症」とされる人は、目覚めたときのコルチゾールの濃度が大幅に低いことが分かったということです。

デビッド・プトリノ博士

なぜ、コルチゾールの濃度が低くなるのかは分かっていないということで、プトリノ博士は研究を続けています。

「コロナ後遺症」はなぜ長期化するの?

「コロナ後遺症」の研究をしている、イエール大学の岩崎明子教授(免疫学)は、いまのところ、4つの仮説が有力だといいます。

これらの要素が組み合わさり、さまざまな症状を起こしていると岩崎教授は考えているということです。

・せきや熱といった初期の症状が治まっても、残ったウイルスやその断片が長期にわたって炎症を起こしている。
・本来、体を守るはずの免疫が自分の体を攻撃している。
・感染によってダメージを受けた臓器の修復が長引いている。
・ヘルペスウイルスなど、以前から体に存在していたウイルスが再活性化している。

重症化した人が発症するの?

岩崎明子教授

岩崎教授によると、後遺症とみられる症状が出るのは、必ずしも新型コロナで重症化した人に限らないということです。

感染して無症状だった人でも、2、3か月後に後遺症とみられる症状が出た人もいたそうです。

実際に、アメリカで行われた研究では、長期にわたって症状を訴えた人の75%が、新型コロナ感染時に入院治療を受けていない人でした。

後遺症を防ぐ方法はあるの?

岩崎教授は、いわゆる「コロナ後遺症」のリスクを下げる上で重要なのは「そもそも新型コロナに感染しないこと」だとして、「経鼻(けいび)ワクチン」の開発に取り組んでいるといいます。

「経鼻ワクチン」とは、鼻からワクチンを吸い込み、主に鼻や喉の粘膜で抗体を作ります。鼻や喉に入り込んだウイルスに効果があり、感染そのものを防げると考えています。

対策はあるの?

ワクチンや経口治療薬の開発で重症化や死亡を防ぐことは可能になってきましたが、感染そのものを防ぐことは難しいままです。

ですので、マスクの着用や人混みを避けるといった、基本的な感染対策の重要性は変わりません。

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