Q.「ファイザー」「モデルナ」「アストラゼネカ」のワクチンとは?

A.

ファイザー

アメリカの製薬大手ファイザーはドイツのバイオ企業、ビオンテックと共同でワクチンを開発し、2020年12月からイギリスやアメリカなどで接種が始まりました。

アメリカでは2020年12月に緊急使用の許可が出され、接種が進められてきましたが、2021年8月23日にFDA=食品医薬品局が正式に承認しました。

日本国内では厚生労働省が2021年2月14日に承認したあと、2月17日から医療従事者を対象にした先行接種が始まり、4月12日からは各地で高齢者の接種、そして現在は12歳以上に接種が行われています。

政府は年内に9700万人分の供給を受ける契約を結んでいます。

mRNAワクチン

このワクチンは、遺伝物質のメッセンジャーRNAを使っていて、メッセンジャーRNAワクチン、もしくは頭文字をとって「mRNAワクチン」と呼ばれています。

新型コロナウイルスが細胞に感染するときの足がかりとなるスパイクたんぱく質を作るための遺伝情報を含む物質、「mRNA」を投与する仕組みです。

「mRNA」はいわば設計図のようなもので、体内の細胞によってスパイクたんぱく質が作られ、その後、免疫の仕組みが働き、ウイルスを攻撃する抗体を作るよう促します。

実際のウイルスは使っておらず、ワクチンを接種することで新型コロナウイルスに感染することはありません。

接種方法、回数

接種方法は筋肉注射で、皮下脂肪の奥にある筋肉に打つ注射の方法で、肩に近い腕の部分、上腕部に注射針を直角に刺して接種します。

1回目の接種のあと、通常、3週間あけて2回目の接種を受けます。

保管方法

ファイザーのワクチンは当初、マイナス90度からマイナス60度の超低温の冷凍庫での保管が必要とされてきましたが、現在は、マイナス25度からマイナス15度の状態で最長で14日間保管する方法が認められています。

接種前に解凍すると、2度から8度の冷蔵庫で保管し、5日以内に使い切る必要があるとされてきましたが、厚生労働省がファイザーから新たに提出されたデータをもとに検討した結果、保管できる期間は1か月間に延長されました。

有効性は

このワクチンは、臨床試験だけでなく、実社会での接種の有効性も示されてきています。
▼臨床試験の結果をまとめた論文によりますと、発症を予防する効果が95%で
▼接種が速いペースで進むイスラエルでの接種の結果をまとめた論文によりますと、
▽発症を予防する効果が94%、
▽重症化を防ぐ効果が92%、
▽無症状の人も含めて感染を防ぐ効果が92%だったということです。

また、ファイザーとビオンテックは2021年4月1日にプレスリリースを出し、接種から6か月たった時点で解析した発症を防ぐ効果は91.3%で、重症化を防ぐ効果は100%だとしています。

変異ウイルスに効くのか

日本国内でも広がっている変異ウイルスには高い有効性が見られています。

2021年7月にイギリスの保健当局が国際的な医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した論文によりますと、このワクチンを2回接種した後で発症を防ぐ効果は、
▼イギリスで確認された「アルファ株」に対しては93.7%、
▼インドで確認された「デルタ株」に対しては88.0%だったとしています。

副反応は

2021年8月4日にワクチンの副反応の専門部会で示された厚生労働省の研究班の資料によりますと、主な副反応は2回目の接種を終えた時点で
▼うずくような痛み、疼痛(とうつう)が出た人が1回目の接種後は92.6%、2回目の接種後は89.5%、
▼けん怠感が出た人は1回目の接種後は23.2%、2回目の接種後は68.9%、
▼頭痛が1回目の接種後は21.4%、2回目の接種後は53.1%、
▼かゆみが1回目の接種後は8.0%、2回目の接種後は11.9%、
▼38度以上の発熱が1回目の接種後は0.9%、2回目の接種後は21.3%などとなっています。

また、アメリカのCDC=疾病対策センターのウェブサイトによりますと、副反応は通常は接種後数日で消えるということです。

また、ほとんどが軽症から中等度で、日常生活に影響が出るほどの副反応は少数だったということです。

(2021年8月24日時点)

モデルナ

アメリカの製薬会社、モデルナのワクチンは、2020年12月以降、アメリカなどで接種が始まりました。

日本政府は2021年9月までに2500万人分のワクチンを供給する契約を交わしています。

接種の対象は12歳以上となっていて、東京と大阪に設けられている自衛隊の大規模接種会場や各自治体の大規模接種会場、それに企業や大学など職域での接種を中心に使用されています。

mRNAワクチン

このワクチンは、ファイザーのワクチンと同じタイプで、遺伝物質のメッセンジャーRNAを使っていて、メッセンジャーRNAワクチン、もしくは頭文字をとって「mRNAワクチン」と呼ばれています。

新型コロナウイルスが細胞に感染するときの足がかりとなるスパイクたんぱく質を作るための遺伝情報を含む物質、「mRNA」を投与する仕組みです。

「mRNA」はいわば設計図のようなもので、体内の細胞によってスパイクたんぱく質が作られ、その後、免疫の仕組みが働き、ウイルスを攻撃する抗体を作るよう促します。

実際のウイルスは使っておらず、ワクチンを接種することで新型コロナウイルスに感染することはありません。

接種方法、回数

接種方法は筋肉注射で、皮下脂肪の奥にある筋肉に打つ注射の方法で、肩に近い腕の部分、上腕部に注射針を直角に刺して接種します。

1回目の接種のあと、通常、4週間あけて2回目の接種を受けます。

保管方法

モデルナのワクチンは、マイナス25度からマイナス15度の冷凍庫で保管するとしています。

また、ワクチンの添付文書によりますと2度から8度の冷蔵庫で30日間保管でき、接種を行うときには室温などで解凍し、使用前の場合は8度から25度の室温で使える状態を最長12時間保つことができるとしています。

有効性は

臨床試験の結果をまとめた論文によりますと、発症を防ぐ効果が94.1%だったということです。

また、モデルナとアメリカの国立アレルギー感染症研究所などが2021年4月6日に発表した論文によりますと、初期の臨床試験に参加した人のうち、33人について2回目の接種から6か月後に抗体の働きを示す数値を測ったところ、
▼18歳から55歳、
▼56歳から70歳、
▼71歳以上のいずれの年代でも抗体の量は減少したものの、十分あったとしています。

変異ウイルスに効くのか

モデルナなどが発表した論文によりますと、細胞を使った実験で
▽イギリスで見つかった変異ウイルスに対しては効果に目立った変化はありませんでしたが、
▽南アフリカで見つかった変異ウイルスに対しては、抗体の働きを示す値がおよそ6分の1に、
▽ブラジルで見つかった変異ウイルスに対してはおよそ3分の1になったということです。

ただ、会社では抗体の働きを示す値はいずれの変異ウイルスに対してもワクチンとして必要なレベルは上回っていたとしています。

また、2021年7月にアメリカのエモリー大学などのグループが国際的な医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に出した論文によりますと、デルタ株に対する抗体の値は、モデルナのワクチンを接種した人からとった血清でも、ファイザーのワクチンを接種した人からとった血清でも十分だったとしています。

さらに、2021年8月にアメリカの国立アレルギー・感染症研究所などのグループが国際的な科学雑誌「サイエンス」に発表した論文によりますと、研究グループで新型コロナウイルスの特徴を再現したウイルスを使ってワクチンの効果を調べたところ、モデルナのワクチンの2回目の接種から半年後でもウイルスを抑える効果がみられたのは
▼変異ウイルスが流行する前の新型コロナウイルスに対しては100%、
▼アルファ株では96%、
▼デルタ株でも96%などとなったということです。
一方、
▼南アフリカで確認されたベータ株に対しては54%と低くなっていたということです。

副反応は

2021年8月4日にワクチンの副反応の専門家部会で示された厚生労働省の研究班の資料によりますと、
主な副反応は2回目の接種を終えた時点で
▼うずくような痛み、疼痛(とうつう)が出た人が
1回目の接種後は86.5%、
2回目の接種後は88.2%、
▼けん怠感が出た人は
1回目の接種後は26.8%、
2回目の接種後は83.9%、
▼頭痛が
1回目の接種後は17.4%、
2回目の接種後は67.6%、
▼かゆみが
1回目の接種後は5.3%、
2回目の接種後は13.7%、
▼38度以上の発熱が
1回目の接種後は2.1%、
2回目の接種後は61.9%などとなっています。

アメリカのCDC=疾病対策センターによりますと、通常は接種後数日で消えるということです。
また、ほとんどが軽症から中等度で、日常生活に影響が出るほどの副反応は少数だったということです。

(2021年8月24日時点)

アストラゼネカ

イギリスの製薬大手、アストラゼネカは、オックスフォード大学と共同でワクチンを開発し、2021年1月からイギリスなどで接種が始まりました。

アストラゼネカのウェブサイトによりますと、2021年7月28日の時点で緊急使用も含めて世界80の国と地域で承認されているということです。

日本国内でも2021年5月21日に厚生労働省が承認しました。

接種の対象は18歳以上で、日本政府は年内に6000万人分を供給する契約を結んでいて、厚生労働省が承認すれば国内の製造拠点から4500万人分以上が供給される見通しです。

厚生労働省は2021年7月30日、新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、このワクチンを公的な予防接種に加えることを決め、
2021年8月23日から大阪市など一部の自治体で接種が始まりました。

このワクチンは、極めてまれに血栓が生じるリスクがあるとされていることなどから、原則、40歳未満には接種しないことになっていて、
▼ほかのワクチンの成分にアレルギーがある人や、
▼海外ですでにアストラゼネカのワクチンの接種を1回受けた人などが対象になります。

日本政府は、台湾やベトナムなどにこのワクチンを提供していて、2021年7月には国際的な枠組み「COVAX(コバックス)ファシリティ」を通じて、イランやバングラデシュ、ネパール、それに、太平洋の島しょ国などの15か国に対し、日本で製造したアストラゼネカのワクチンを提供する方針を明らかにしています。

ウイルスベクターワクチン

このワクチンはウイルスベクターワクチンという種類で、ウイルスの表面にあるスパイクと呼ばれる突起部分のたんぱく質を作る遺伝子を無害な別のウイルスに組み込み、そのウイルスごと投与します。

すると、人の細胞に無害なウイルスが感染して、新型コロナウイルスのものと同じスパイクたんぱく質が作られるようになり、それを受けて免疫の働きで抗体が作られます。

実際のウイルスは使っておらず、ワクチンを接種することで新型コロナウイルスに感染することはありません。

接種方法、回数

接種方法は筋肉注射で、1回目の接種のあと通常、4週間あけて2回目の接種を受けます。

間隔は8週間以上おくのが望ましいとされています。

保管方法

2度から8度の冷蔵庫で6か月間保管できますが、開封したあとは6時間以内に使う必要があります。

有効性は

イギリスやブラジルなどで行われた臨床試験の結果をまとめた論文によりますと、発症を防ぐ効果は
▼計画通りの量のワクチンを2回接種した人では62.1%だったのに対し、
▼1回目だけ半分の量にして2回ワクチンを接種した人では90.0%、平均で70.4%だとしています。

副反応は

ワクチンの添付文書によりますと2万4000人あまりを対象にした臨床試験の解析から主な副反応は
▼疲労が1回目の接種後は49.6%、2回目の接種後は26.8%、
▼頭痛が1回目の接種後は48.6%、2回目の接種後は26.7%、
▼筋肉痛が1回目の接種後は40.3%、2回目の接種後は18.9%、
▼38度以上の発熱が1回目の接種後は7.1%、2回目の接種後は1.2%などとなっています。

変異ウイルスに効くのか

アストラゼネカのワクチンについてオックスフォード大学などのグループが医学雑誌「ランセット」に発表した論文によりますと、イギリスで見つかった変異ウイルスに対するワクチンの有効性は70.4%だったとしています。

一方、南アフリカで見つかった変異ウイルスについては、南アフリカの大学などのグループが発表した論文によりますと、臨床試験では発症を防ぐ効果は10.4%で、効果は見られなかったとしています。

また、ブラジルで見つかった変異ウイルスについては、オックスフォード大学が2021年3月18日に抗体の働きを示す値は一定程度下がっているものの、効果はあるとするプレスリリースを出しています。

さらに、2021年7月にイギリスの保健当局が国際的な医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した論文によりますと、
このワクチンを2回接種した後で発症を防ぐ効果は、
▼「アルファ株」に対しては74.5%、
▼インドで確認された「デルタ株」に対しては67.0%だったとしています。

血栓との関係

このワクチンをめぐって2021年3月、EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局などから接種後に血の塊、「血栓」などが確認されたケースが報告され、ドイツやフランスなどヨーロッパ各国で予防的な措置として一時、接種を見合わせるなどの動きが出ました。

2021年4月7日に公表されたEMA=ヨーロッパ医薬品庁の調査結果によりますと、接種後に血栓が起きたケースの多くは接種から2週間以内の60歳未満の女性で報告されているということです。

ワクチンの免疫反応が関係している可能性はあるものの極めてまれなため、新型コロナウイルスに感染するリスクを考えると接種する利益のほうが上回るとしています。

また、イギリスの規制当局は、2021年5月12日までにイギリス国内でこのワクチンを1回接種した人が2390万人、2回接種した人は900万人いてこのうち、血小板の減少を伴う血栓症になったのが309人、そして56人が死亡したと報告しています。

血栓が起きる頻度は接種100万回あたり、12点3回だとしています。

血栓は若い世代の方が頻度が高く、イギリス政府は2021年4月7日、30歳未満に対しては別のワクチンの接種を勧めると発表し、その後、2021年5月7日には予防的な措置として、対象を10歳引き上げて40歳未満には他社のワクチンの接種を勧めると発表しました。

WHO=世界保健機関は2021年4月16日の声明で、感染が続く国ではワクチンを接種するメリットはリスクをはるかに上回るとした上で、各国は感染状況やほかのワクチンを入手できるかといった事情を考慮して判断すべきだとしています。

(2021年8月24日時点)