僕は日本を背負いたい

堂安律

サッカー #迷っているとき

サッカー日本代表はワールドカップカタール大会で優勝経験のあるドイツとスペインを破って決勝トーナメント進出を決めた。
その立て役者の1人が、この2試合で同点ゴールを挙げた堂安律だった。

初めてのワールドカップは「小さい頃から憧れていた舞台だったが、思っていた2倍も3倍も上をいっていた。今まで出たことのないアドレナリンが出るのを感じて眠れなかったほどだった。みんなが何年もかけて出場したいと思うのもわかるようなすばらしい大会だった」

ただ、ワールドカップへの道のりは決して平たんなものではなかった。
アジア最終予選では日本代表の主軸を担うと期待されたが、同じポジションの伊東純也の台頭もあって出場機会は減った。
一時、メンバー外となる苦境も味わった。

それでも、去年夏に加入したドイツ1部リーグのフライブルクでは攻撃的な右サイドとして、すぐにレギュラーに定着。強豪がひしめくドイツ1部リーグの中でワールドカップ開幕前までリーグ2位だったチームを主力として引っ張っているという自信が落ち着きをもたらした。

限られた出場時間であっても必ずチャンスはものにできると信じていた。
そして、ドイツ戦とスペイン戦に途中出場すると、いずれの試合でも値千金の同点ゴールを挙げた。

とりわけスペイン戦ではゴール右でボールを持つと左足を豪快に振り抜き、時速120キロを超える強烈なミドルシュートをゴールネットに突き刺した。
これは1次リーグで決まったシュートで2番目の速さだった。
ワールドクラスと言ってもいい。

「あそこは俺のコース。世界で一番練習している自信があった。練習したことが出るんだと再認識できたし、苦しいときでも歩みをやめずに1歩でも2歩でも進めば何かいいことがあるというのを肌で感じた」

実りの多かった大会だったが、どうしても頭から離れないシーンがあるという。
先発出場した決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦。
1点リードの後半、クロスボールからのヘディングシュートで相手に追いつかれた場面だ。
「ボールがゴールに吸い込まれていくシーンが僕の角度からすごく見えたので、頭に焼き付いている。クロスボールからの失点はスペイン戦でもあったので、もっとコミュニケーションを取っていれば、あの失点はなかったのにとか、今振り返ればもっと突き詰められた」

そして大会後、これまでいつかは実現したいと思っていた目標を明確に掲げるようになった。

「日本代表のエースになって、リーダーになる。背番号10を付けたいし、キャプテンもやりたい。それくらい今の僕は日本を背負いたいと思っている。負けて日本に帰ってきて国民の皆さんから『おめでとう、よく頑張った』と言われたが、自分はすごく悔しくて逆に申し訳ない気持ちだった。あれだけ応援してくれて背中を押してもらったのは初めてだった。国民の皆さんが日本を誇りに思えるような、もっと素晴らしい景色を見せたいという思いが強くなった」

カタールで見ることができなかった「新しい景色」を見るために。
2023年はよりいっそうみずからを追い込み、高みを目指すと誓っている。

「次のワールドカップでベスト8以上に行くためにはヨーロッパチャンピオンズリーグに出られるようなビッグクラブでプレーすることが選手たちに出された宿題だ。簡単ではないことは分かっているし、年明けからすごく辛い日々が続くと思うが、今回見られなかった景色を見るために、今はその覚悟ができている」

サッカー #迷っているとき