強い意志があれば 自分の行きたいところにいける

大橋悠依

競泳

2020年1月2日。この1年にかける抱負を尋ねると、大橋悠依は色紙に「志」としたためた。
そして、力強く書き込んだ、そのひと文字を手にしながら彼女は語った。

「強い意志があれば、自分の行きたいところにいけると信じている」

”自分の行きたいところー” その意味をかみしめていた。

2019年は大橋にとって、悔しさしか残らないシーズンだった。
韓国で開催された世界選手権。東京オリンピックの前哨戦とされた大会を前に、自分自身の泳ぎを見失っていたのだ

「なんでこんなに練習してんのにうまくいかないんだろう、無駄じゃんみたいな。やっていることも意味あるのかなって」

迎えた世界選手権で大橋は、400m個人メドレーの銅メダルを獲得する。
それでも『競泳ニッポン女子のエース』『東京五輪の金メダル候補』、そんな風に呼ばれるようになった彼女は満足できなかった。

見失った自分の泳ぎを探す日々に光が差したのはことし、スペインで行っていた高地トレーニングでのことだった。

「背中を使えていないのでは?」

突然ひらめいたイメージを彼女は水中で確かめた。

「こういうことだったのか」

これまで積み重ねてきた練習は一つも無駄では無かったのだ。

「2月27日」「背中記念日ですね」

その日付まではっきりと言えるという大橋。
その瞳には 間違いなく自信が宿っていた。

東京オリンピックは延期された。
しかし、1年という期間は、みずからの泳ぎを取り戻した大橋にとって、さらなる飛躍のための猶予期間を与えられたことを意味する。

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