漠然としていたワールドカップが明確に見えてきた

李承信

ラグビー #やっぱ好きだなぁ ラグビーワールドカップ2023

ラグビー日本代表の21歳、李承信にとってのチャンスは、ある日突然やってきた。
2022年7月、当時、世界ランキング2位の強豪フランスとの試合を翌日に控えチームルームで映像を見ていた李。
代表戦でこれまで先発したことはない。
そこにチームメートのベン・ガンターが寄ってきて「頑張れよ」と声をかけてきた。

「ん、何が?」

なんのことか、さっぱりわからなかった。
だが、あとからそれがフランス戦の先発出場を知らせる合図だったと知った。
司令塔とも言われる重要なスタンドオフ。
先発予定の選手が新型コロナの検査で陽性となったため急きょ、大役が巡ってきたのだ。

「キャプテンズランの朝に(試合前日の練習)初めて先発出場すると聞いて頭が真っ白になった」

突然の知らせに「不安が頭をよぎった」

それでも開き直ってやるしかなかった。
李は、がむしゃらにプレーした。
得意のランや正確なパスで攻撃をけん引。
さらにキックでは日本の得点の半分以上となる得点をマークして、フランスを相手に初めてフル出場を果たした。
思いがけず確かな手応えをつかんだ。

「フランスはけっこう格上の存在と思っていた。でも、アタックのところなど自分が思ったよりできた部分もあり、けっこう自信になった」

そして首脳陣の信頼も勝ち取った。
ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは「すべてにおいて期待以上の働きをしたことが彼の最大の成果だ。非常に大きな潜在能力を持っている」と評価した。

その後、行われたフランスとの2戦目でも活躍し、突然訪れたチャンスをものにした。
ただ、同じポジションには経験豊富な選手たちがひしめき、同じように虎視眈々とレギュラーの座を狙っている。

「正直、ポジション争いで自分はまだまだ全然下だと思う」

謙遜する李だが、それでも先輩たちを押しのけて夢の舞台に立つ覚悟は固まっている。

「この夏を迎えるまで、ただ漠然と『自分の夢はワールドカップに出場することです』と言葉だけ発している感じだった。でも、その夢が本当に明確に見えてきて、ジャパンで試合に出たことによって、もっともっとワールドカップに出たいという思いが強くなってきた」

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