悔しい気持ちがまた次の4年につながる

樋口新葉

フィギュアスケート

2017年12月の全日本選手権。
16歳の樋口新葉は、ピョンチャンオリンピックに近いと言われながらも得意だったはずのジャンプでミスをしてその切符を逃した。
悔し涙が止まらなかった。
直後、SNSにつぶやいた。

「この先どんなに辛いことがあっても今日のことがあったから頑張れるって思えるようにこれから倍返しの始まりだ」

それから4年間、代表を勝ち取った選手たちはスポットライトを浴び、年下の選手が次々と台頭してきた。

樋口は大技のトリプルアクセルを自分の武器にしようと徹底的に向き合ってきた。成功率を上げるだけではなく、高得点につながる出来栄えでも評価されるために踏み切りや着氷、前後の流れにもこだわり続けた。
苦い経験は「勝たないと意味がない」と気の強さが出すぎることもあった樋口の精神面にも成長をもたらした。

「自分は勝つためだけにスケートをやっているわけではないと思い始めるようになった。それからはつらいことがあっても、それもおもしろいと全部をポジティブにとらえられるようになった」

2021年12月の全日本選手権は4年間の結集だった。
挑戦したトリプルアクセルはやや着氷が乱れたが、4年前とは異なりミスを引きずることはなかった。
2位でオリンピックへの切符を勝ち取ると4年前の悔し涙はうれし涙に変わった。

迎えた北京オリンピック。
ミスが命取りになる前半のショートプログラムからトリプルアクセルを組み込んだ。

「勇気のいる選択」

樋口はみごとに成功させた。
そして後半のフリーでも再びトリプルアクセルを成功させた。

「4回転を跳んでいる選手がたくさんいる中で、自分はアクセルを跳ぶという目標に向かってずっと突き進んできた。迷いもあったが自分の目標を達成することができたのですごくうれしかった。夢だった舞台でしっかりとアクセルを跳べて自分の経験になった」

初めてのオリンピックは5位入賞(2月20日時点、暫定)。
いつも安定しているジャンプで転んだり点数が思ったより伸びなかったりしたことが元来の負けん気に火をつけた。

「本当はこのオリンピックが挑戦できる最後かなと思ったが、リンクで滑ってみてすごく楽しかったし、今までにないような経験ができた。今回のオリンピックでうれしい気持ちと悔しい気持ちの両方を味わえた。この悔しい気持ちがまた次の4年につながる。4年間頑張ってまた戻ってきてリベンジしたい」

新たな悔しさを糧に次の4年がスタートした。

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