オリンピックは本当にすてきな場所

住吉輝紗良

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オリンピックの舞台に初めて立った21歳の住吉輝紗良。
北京オリンピック代表に内定したとき、自身のSNSに残したことばがある。

「立ち直り、強くなり、自分を愛することを知りました。生き方考え方を変え、今後の人生を美しくするであろうきっかけになりました」

住吉は前回ピョンチャン大会で初めてオリンピック代表の座を争った。
しかし、選考基準を満たすことができず落選。
ショックは大きく代表を逃したその日から、自分を見失ったという。

「動けない、寝られない、涙が止まらない」

当時をそう振り返った住吉。小学生の時からの夢“オリンピック”はみずからを追い込むものに変わっていた。

「4年間、ずっと何にも楽しくなくて。4年前から、あしたが来るのがつらくて怖かった」

それでも「出場しなければ次もない」と自らを奮い立たせた。
北京に出場することを目指して海外に遠征し勝負を続けた。
そして、つかんだ初めてのオリンピックの切符、ついに夢の舞台に立った。

「今回、順位はもうどうでもいいと決めていた。後悔はないように。たぶん普通に抑えて滑ったら後悔する。応援をしてくれる人も悔いのないように滑ってと言ってくれていたので」

「攻め続ける」そう誓って臨んだ準々決勝。
住吉は持ち味の力強いターンでこぶを積極的に攻めた。
体勢を崩しそうになっても、持ちこたえた。

そして、フィニッシュ。得点は71.52で15位。
準決勝には進めなかったが、涙ながらに滑る楽しさを語った住吉の表情に悲壮感はなかった。

「ただ楽しくて。ずっと楽しいことがなかったから。本当に久しぶりに、滑っていて楽しいなと思って。それだけで本当に良かったです。オリンピックは本当にすてきな場所だなと、それだけを思いました」

一度は諦めかけた夢の舞台。
それでも必死に立ち向かってたどり着いたその場所に、住吉の挑戦の証が確かに刻まれた。

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