世界的なレジェンドになる

鈴木雄介

陸上

2019年9月29日、カタールのドーハで行われた陸上世界選手権、男子50キロ競歩は、気温31度、湿度74%という過酷なコンディションの中で始まった。

鈴木雄介は、もともとは20キロ競歩のスペシャリストだ。
美しく無駄のないフォームで、2015年には20キロ競歩の世界記録を樹立。
しかし、その後は長くけがに苦しめられ、2016年リオ五輪には出場できなかった。

「東京オリンピックには是が非でも出場したい」
「何事にも挑戦し、高みを目指していく」

鈴木は痛めた股関節に負担の少ないフォームを模索。
そのうえで、新たなフォームをより生かせるように、50キロへの挑戦を決めた。

世界選手権。鈴木は、スタートから飛び出して「ひとり旅」を続ける。
しかしドーハの過酷なコンディションは着実に鈴木の体力を奪っていた。
40キロ過ぎの終盤。

「脱水のような症状があり、歩きながら飲むのがきつかったので戦略的にペースを落とした」

給水ポイントで、鈴木は異例の行動にでる。
給水の度に足を止めるという思い切った戦略。
ギリギリの状況の中で、冷静に、そして懸命に体力の回復をはかった。
両手を高く突き上げながら、フィニッシュテープを切った鈴木。
世界選手権、オリンピックを通じて、競歩で日本選手初の金メダルに輝いた。

「世界の主役になったかのような最高の瞬間だった」

ケガからの完全復活とともに、50キロ挑戦というみずからの決断が間違っていなかったことを証明した。

「競歩の世界的なレジェンドになる」

東京オリンピックで同じ景色を見るため、さらなるレベルアップを誓った。

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