世界を見据えて生活しないと、この差は一生埋まらない

渡邊雄太

バスケットボール

小学生のころ、渡邊雄太はNBA(=アメリカプロバスケットボール)のスター選手、コービー・ブライアントに憧れていた。高校卒業後、夢の実現のため、たった1人でアメリカに渡った。

「英語もしゃべれない。誰も知っている人がいない中でも、諦めたり、努力をやめたりすることは一度もなかった」

強い意志と、たゆまぬ努力。わずかなチャンスも逃すまいとバスケットの本場で自分を磨き続けた。
そして3年前。NBA選手となり、夢の扉を開いた渡邊は、当時もう1つの目標を語っていた。

「NBA選手としてオリンピックに出場し、日本の勝利に貢献したい」

その東京オリンピック。45年ぶりの勝利を目指す日本代表で、キャプテンの1人を任された。

「NBAのスタープレーヤーからリーダーシップを学んだ」

合流前からチームメートの練習や試合の動画を取り寄せてプレースタイルなどをチェックした。大会直前の練習で声が出ていないと感じると、選手だけでなくコーチやスタッフにも「気合いを入れよう」と呼びかけた。
そして試合。NBAでプレーする八村塁とともに好守にわたって走り続け、ベンチに下がった場面でも常に立ち上がって仲間を鼓舞し続けた。
しかし、結果は予選リーグ3戦全敗。2人のNBA選手を擁し“史上最強”と呼ばれても、世界の壁はさらに高かった。

渡邊は8月1日の最終戦のあと、ベンチにうずくまったまま動けなかった。ミックスゾーンで「次につながる」と前向きに話す選手もいたが、渡邊が赤く目を腫らして語ったのは、危機感だった。

「自分たちに力がなかった。この悔しさを忘れず、日頃から世界を見据えて生活しないとこの差は一生埋まらない」

飽くなき向上心で世界に挑み続けてきた、彼のことば。自分だけでなく、チームメートやこれからともに戦うことになる若い選手たちにも向けられたものだった。
日本代表のリーダーに成長した26歳は、悔しさを胸にきょうも練習場に向かっているだろう。

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