無理なら無理と教えて… 転校か 再開待つか 小学生の親たちは

「家族の拠点をどこに置けば…」
「“無理なら無理”とはっきり伝えて」

学校が始まらない。めどすら立たない。

集団避難や転校を考え始める小・中学生の親たちも。

発災から2週間、能登半島で暮らす親子たちの戸惑いが見えてきました。

“友達と離れたくない…”

「『友達と離れたくない』と息子が話しているので、やりたいようにさせてあげたいと思っていますが、学校再開のめどが立っていないので何も決められない状況です」

珠洲市の避難所に身を寄せている宮口智美さんは、小学4年の息子を祖父母の家がある静岡県に一時的に避難させています。

珠洲市で小学校再開のめどがたっていないことから転校させることを考えています。一方で、息子からは「転校したくない」と打ち明けられているということです。

取材では、“家族の拠点をどこに置けばいいのかわからない”と不安の声も聞かれました。

輪島市の40代の母親は、中学1年の娘を市から示された県南部の白山市の県立施設に集団避難させることを決めました。

しかし、ほかにも小学3年生の娘と保育園に通う娘がいます。

輪島市の40代の母親
「小学校も再開のめどがたっていないし、中学校も4月の新学期からどういう態勢になっていくのか説明がないので不安です。今後の方針について早めに決めて教えてくれたら、家族で避難するかどうか決断できる。子どもたちが輪島で勉強するのが“無理なら無理”とはっきり伝えてほしいです」

高校生 2次避難所はあるけれど

石川県は被災した高校生を対象に、金沢市内のホテルを2次避難所として確保し、高校生たちは15日から、金沢市内のホテルに2次避難を始めました。

避難している間、ホテルの会場のほか、近隣の県立高校の空き教室でも勉強できるということです。

生活環境が改善されるまで当面、避難する予定で家庭の事情を踏まえて、随時、帰宅もできるということです。

県教育委員会は、希望者数が増える場合、新たな2次避難先の確保を含め検討することにしています。

一方、こんな声も聞かれました。

高校1年の男子生徒(七尾市・自宅で生活)
「友達や家族と離れて暮らしたくないので金沢に行きたくありません。ここにみんなでいるほうが安心できます」

別の高校1年の男子生徒(七尾市・自宅で生活)
「ペットと離ればなれになるのはいやなので金沢には行きたくないです。水が止まっていてトイレが使えなくて不便ですがそれでもここにいたいです」

親が先生の代わりに

小学校再開の見通しが立たない石川県輪島市の避難所では、保護者が先生の代わりになろうと、子どもに勉強を教える姿も見られました。

自宅が被災し、輪島市の輪島中学校に家族4人で避難している松本石根さんは、小学校が再開しない中、小学4年と1年の息子の勉強をみずから教えています。

松本さんは「自分の子どもの学年では何を学んでいるのかインターネットで把握し、できる範囲で自分たちで教えて、子どもの学習を支えていきたいです」と話していました。

分かれる決断 離れる人、残る人

石川県輪島市では、小学校再開のめどが示されない中、保護者たちの中には避難するか、輪島市に残るか、悩みを抱えている人も。

離れる人
避難所に身を寄せている輪島市の保下春奈さん(43)は、小学5年と2年の娘、それに、ことし4月に小学校に入学する息子がいます。

小学校再開のめどが示されない中、子どもの健康への不安や学習への影響を懸念して2次避難を検討しています。

保下さんは「食事の事情が悪く子どもの栄養が心配です。早く学校に通わせてあげたいですが、2次避難先から学校に通えるのかも分からない状態で不安です」と話していました。

娘の小学5年の湖心さんは「勉強が遅れてしまうと思うので学校が再開しても勉強についていけるか心配です。できれば早く学校に行きたいです」と話していました。

残る人
一方で、小学1年の娘とことし4月に小学生に入学する息子、それに3歳の息子がいる舟見奈津香さん(34)は、学校の再開が見通せないものの、自宅は何とか住むことができる状態のため今後も輪島市に残ることを考えています。

舟見さんは「このまま学校の再開の連絡を待つしかないと思っています。学校も大変な状況だと思うので、しばらくは家で勉強させようと思います」と話していました。

再開のめどが立たない地域は

今回の地震で、石川県内の公立の小学校や中学校などでは被害が大きかった能登地方を中心に、再開のめどが立たない状況が続いています。

このうち、七尾市の14校と輪島市の12校、珠洲市の4校、穴水町と能登町のそれぞれ3校の、あわせて36の小中学校と義務教育学校は、再開のめどが立っていません。

一方、内灘町と中能登町、能登町のあわせて14の小学校と中学校では、15日から新学期が始まりました。

志賀町と内灘町、能登町のあわせて7つの小学校と中学校では、今月22日から新学期が始まる予定です。

6日遅れの始業式 恐怖で来られない子も

今月1日の地震で震度6弱を観測した石川県中能登町。小中学校4校で休校が続いていました。

鹿島小学校も一時、避難所になっていましたが、校舎の安全が確認でき水道も復旧したことなどから、6日遅れの始業式が行われました。

「おはようございます」
「あけましておめでとうございます」

子どもたちは午前7時ごろから登校し、久しぶりに会った先生や友達とあいさつしていました。

始業式では、地震で亡くなった人たちに黙とうをささげたあと、宮下慶子校長が「鹿島小学校の児童は誰もけがをしていなくて安心しました。協力して地震を乗り越えましょう」と呼びかけました。

6年生の男子児童
「冬休みで会えなかった友達の元気な顔を見て安心しました。4月には中学生になるので、3学期は勉強などに全力で取り組みます」

学校によりますと、全校児童およそ350人のうち、15日は16人が欠席し、なかには、被災した恐怖から親のそばを離れることができないという連絡もあったということです。

宮下校長は「時間がたってから恐怖を思い出すかもしれないので、子どもたちに寄り添って見守っていきます」と話していました。

「今、やりましょう!」

穴水町にある穴水中学校は、地震の後避難所になっているほか、生徒の多くが町外に避難していることもあって授業を再開するめどが立っていません。

こうした中、受験を控える3年生を対象にオンラインで授業を始めることになり、15日は教員が模擬授業をしながら生徒が見やすいカメラの位置の調整などを行っていました。

準備が順調に進めば17日からオンライン授業を行うということで、今後、ほかの学年でも実施することにしています。

穴水中学校の廣澤孝俊校長は「子どもたちは今不安だと思いますが、この授業を通じて大きな安心感を子どもたちに与えたいたいです」と話していました。

【子どもたちのケアは】