子どもたちの心のケア 身近なあなたにしかできない4つのこと

2024年1月1日に起きた能登半島地震で日常生活が一変する中で、子どもたちの心の状態が心配です。

子どもの命や権利を守る活動をしているユニセフ=国連児童基金は、「災害時の子どもの心のケア 4つのポイント」を示しました。

専門家やボランティアではなく、ふだんから一番身近にいる大人のあなたにしかできないことがあると呼びかけています。

(国際部記者 小島明)

子どもの心のケア 4つのポイントとは?

「あらゆる自然災害で最も困難な状況におかれてしまうのは子どもたち」ー

世界各地で子どもたちのために活動を続けるユニセフは、日本の被災地の子どもたちの心の傷口を少しでも小さくしたいとの思いから、子どもの心のケアの4つのポイントをまとめました。

1 「安心感」を与える
2 「日常」取り戻すことを助ける
3 被災地の映像繰り返し見せないで
4 子どもは自分で回復する力を持っている

1「安心感」を与える

子どもたちに寄り添うことを大切にしてほしいと呼びかけています。

いつもよりも少し意識して、一緒にいる時間やスキンシップを増やすことが大事だといいます。

子どもが不安がったときは訴えに耳を傾け、「いまはもう大丈夫だよ」とか「みんなが守ってあげるから大丈夫だよ」と伝えながら、疑問や心配に思っていることには、簡単なことばで穏やかに答えてほしいとしています。

答えが分からないときも、「分からないけれど、様子を見てみようね」などと大人の側が正直に答えるのがよいということです。

また、ことばを使ったコミュニケーションができない子どもにも同じように声をかけることで、表情やしぐさが子どもたちの安心感につながるとしています。

2「日常」取り戻すことを助ける

どんなささいなことでもいいので、「ふだんどおり」を保つことが子どもたちを安心させることにつながるとしています。

具体的には食事や歯磨き、着替えや睡眠時間、それに遊びをあげています。

特に遊びに関しては、安全が確保できる場所であればどこであっても、おもちゃや遊びに使えるものを用意し、そうしたものがなければ、体を使いながら歌ったり、指相撲をしたりするなど、道具を使わない遊びも楽しさや、やすらぎにつながるということです。

3 被災地の映像 繰り返し見せないで

乳幼児は映像や画像の伝える事実を十分に把握できず、大きな衝撃を受ける可能性があるほか、過去のできごとを、いま起こっているととらえてしまい、「同じようなことが自分の近くでもすぐに起きるのではないか」とか、「自分のせいでこの災害が起こってしまったのではないか」と思ってしまうことがあるということです。

また、自発的に情報を得ることができるようになる小学3年生から4年生以上の子どもでも、コントロールできないほど感情移入してしまうことがあり、注意が必要です。

日頃、子どもがよく見ていたテレビ番組やDVDなどがあれば、そういうものを見せたほうがいいとアドバイスしています。

4 子どもは自分で回復する力を持っている

一方、子どもたちの回復力に大人が自信をもつことも大事だと指摘しています。

災害を経験したり、被災地の映像を繰り返し見た子どもの中には次のような様子がみられるといいます。

<子どもの変化>
いつもより元気がない
イライラしたり興奮しやすくなる
好きなことをしなくなる
災害のことばかり気にする
怖い夢を見たり、眠れなくなる
食事をとらない
頭痛や腹痛など体の不調が現れる
学校などに行きたがらない
家族と離れたがらず、甘えがちになる

こうした行動や様子は、近くにいる大人にとっては「病気ではないか」と不安になってしまいがちですが、ユニセフでは一時的なものであれば、自然で正常なことだと説明しています。

子どもが信頼できる身近な大人に働きかけて、みずからの心の状態を回復しようとしている過程だとしていて、大人は一時的なものであれば見守ってほしいとしています。

ただ、数週間続くようであれば、専門家の助けを求めるよう呼びかけています。

「ごっこ遊び」も気持ちの整理方法

また、子どもが地震や避難の絵を描いたり、被災した様子の「ごっこ遊び」をすることもあるそうですが、これも遊びを使って気持ちを整理したり、表現したりするために必要なことなのだそうです。

いきなりやめさせたりせずに、様子を見守りましょうとアドバイスしています。

“安らぎ”が回復力左右する

この4つのポイントの作成に関わった元ユニセフ職員で、臨床心理士の本田涼子さんは次のように話しています。

本田涼子さん
「子どもたちの日常が一変したこと、友達や先生といった今までの『つながり』が切れてしまい、いつ再会できるか分からないことは、被災地も世界各地の紛争や災害の現場も似ています」

子どもたちは大人が余裕がないことも気付いていて、その分、我慢してしまうこともあるといいます。

余裕がなく、話を聞いてあげられないときも、遮るのではなく、「今は聞けないけど、夜ご飯のあとに話してね」などと具体的に説明するなど、子どもたちを尊重してほしいといいます。

そして、本田さんは大変な状況の中でも、大人同士も「疲れているよね、休んでいてね」となどと声をかけあい、フォローしあうこと、自分自身をケアすることを忘れないでほしいと訴えています。

そうしたやりとりの中から生まれる小さな余裕が、子どもたちに安心感を与えることにつながるというのです。

世界の紛争の場で見てきたからこそ

ユニセフは世界各地で起きる紛争や災害で苦しむ子どもたちに向き合っています。

パレスチナのガザ地区では子どもたちに栄養補助食品を提供したり、飲料水や毛布を配布したりしています。

能登半島地震で厳しい状況に置かれている子どもたちを少しでも支援したいとして、次のようにコメントしています。

「安らぎは心のケアの第一歩であり、その第一歩が子どもたちの回復力を左右する。大人であるあなたの力で子どもたちに安らぎを与えてほしい」