インボイス 課題を聞く
消費税の納税額の正確な把握を目的とした「インボイス」制度が10月、スタートしました。新たに納税が必要となる小規模事業者はもちろん、インボイスの発行や会計処理の事務作業が増える幅広い事業者にも、根強い懸念や不安が広がっています。制度の定着に向けた課題や国に求められる取り組みについて、税理士資格も持つ岩品信明弁護士に聞きました。
※インボイス制度の詳細はこちらから。
サクサク経済Q&A「インボイス制度とは わかりやすく説明します」2023年09月06日
インボイス制度の導入で国や事業者にはどんな変化が予想されますか?
制度の導入によって、国からすれば、違法な仕入れで納税額の控除を受けるなど脱税行為が減っていくとみられるほか、課税事業者が増えて税収も増えるというメリットがある。
一方で、国民にとっては請求書の変更や登録番号の確認などの負担が大きい。登録後に実際に何をしなければいけないか十分理解されていない人が多いのが現状で、当初は、事務の間違いが多数出ることが予想される。
事業者側には制度への根強い不安や懸念もあります。
消費税の申告や納税の方法などに関する説明や手当てをしっかりしないと、納税漏れが多数生じる可能性がある。
特に免税事業者から課税事業者に転換した小規模事業者向けの対応を、改めててこ入れする必要がある。
これらの事業者は、これまで消費税を納めてこなかったので、そもそも知識を持ち合わせていない状況だ。
こうした懸念が顕在化するのはいつごろになりそうですか?
免税から課税に転換した小規模事業者には個人事業主も多いが、そうした事業者は12月末までの売り上げにかかる消費税を3月31日までに申告することになる。
そうなると、来年の1月から3月にかけては申告書の書き方といった申告の方法が分からなくて悩む人も多くなり、税務署でも対応に追われることになる。
これまでも消費税を納めてきた課税事業者の場合はどうでしょうか?
こうした事業者も税務申告の時に問題が生じる可能性がある。
多くの企業が3月決算で5月末に消費税の申告期限が来る。
その申告の前に「この取り引きは仕入れ税額控除を受けられるのかどうか」といった問い合わせが増えてくると思う。
制度の定着に向けて国に求められる取り組みは?
小規模事業者へのケアが特に重要だ。
国税庁も2~3年前からホームページやパンフレットなどで周知しておりその点は評価できるが、免税事業者にはおそらくあまり届いていない。
例えば免税事業者が課税事業者に変わった場合、3年間は、納税額を売り上げで受け取った消費税の2割に抑えられる「2割特例」という制度があるがそれも十分周知されていない可能性もある。
メリット、デメリットを十分理解してもらった上で、課税事業者として登録するのかどうか早く判断してもらい、不安を解消していかなければならない。
実際の税務の現場でも丁寧な対応が必要ですね。
税務署に相談窓口を増やしたり申告の方法をわかりやすく伝えるたりするなどいっそうきめこまかい対応が求められる。
税務調査でも軽微な間違いをことさら指摘しないなど、国としても「多少の間違いは仕方ない」と割り切ってもらうしかないと思う。
納税する側に導入当初から100%完璧な対応を求めるのは難しく、だんだんと完成度を高めていくという方針が一番いいのではないか。
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