NEW2023年01月18日

日銀 なぜ動かず?

日銀は、18日まで開いた金融政策決定会合で、今の大規模な金融緩和策を維持することを決めました。日銀が前回の会合で金融緩和策を修正し、長期金利の変動幅の上限を引き上げたことをきっかけに市場では、日銀が金融緩和策をさらに修正するのではないかという観測が広がり、金利の上昇圧力が高まっていました。今回なぜ日銀は市場の思惑どおりには動かなかったのでしょうか。金融業界の取材を担当する下村直人キャップに聞きます。

今回の緩和策の維持、どういったねらいがあったのでしょうか?

市場の観測を打ち消し、まだまだ緩和を続けて景気を支える姿勢を明確する、そういったねらいがあったと思います。

前回は大規模な緩和策が長期化し、副作用を無視できなくなったので、それを是正するため、政策を修正しましたが、日銀があくまで優先するのは景気だ、というわけです。

というのも日銀は今回、再来年度までの物価上昇率の見通しを示しましたが、2023年度、2024年度は目標の2%を下回るとみています。持続的で安定的な2%の物価上昇を実現するために、この春闘を前に、賃上げの動きを金融緩和で後押ししたいというのが日銀の思いです。

ここで市場の思惑どおりに、長期金利の変動幅の上限を引き上げるなどした場合、住宅ローンや企業向けの融資の金利が上がって、景気を冷やすことになりかねません。そういう事情もありました。

下村記者
下村記者

日銀の現状維持の決定を受けて市場も大きく反応しました。今後、市場はどう動くと見ていますか?

金利はひとまず低下しましたが、それがいつまで続くかはわかりません。というのも市場は、日銀がいつまでも、今の大規模な緩和策を続けられるとは思っていないんです。

ですので、今後も緩和策の修正観測は、くすぶり続けるとみられ、再び市場と日銀の攻防が激しくなる可能性はあると思います。

SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは、「今のところ金利は急低下しているが、政策変更の思惑が残るかぎり金利が上がり日銀が定める上限に達してしまう可能性はある。今後も日銀と市場との攻防は繰り返されるだろう」と話しています。

下村記者
下村記者

黒田総裁は4月に任期満了を迎えます。今後日銀はどう対応していくのでしょうか?

このところ、日銀の会合のたびに、市場の変動が大きくなっています。特に今回は、日銀と市場の激しい攻防が起きました。

緩和策の長期化による副作用も無視できなくなっていますが、それをなんとか抑えながら、ねばりづよく緩和策を続けていくことが基本になると思います。次回の金融政策決定会合は、3月9日と10日です。

4月に任期満了を迎える黒田総裁にとっては、これが最後の会合となります。

これについて大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、「黒田総裁がこだわっていたのは賃金の上昇だったが、これは3月中旬の春闘の集中回答日を待たなければいけない。これは黒田総裁として最後の決定会合の後になる。ファンダメンタルズを踏まえて日銀が政策修正や政策点検をするには、もう少し時間がかかるのではないか」と述べています。

黒田総裁としては、賃金の上昇を伴った2%の物価安定目標の実現に向け、ある程度、道筋をつけたうえで、バトンタッチしたいと考えていると思います。

みずからが推し進めてきた大規模な金融緩和策を次の総裁にどういう形で引き継ぐかが問われることになりそうです。

下村記者
下村記者