令和おもちゃ事情 ~進化するロングセラー~
ミニカーやお人形、それにブロック…みなさんが子どものころに遊んでいたおもちゃが、令和の時代に、大きな進化を遂げています。新型コロナの影響で3年ぶりの開催となった「東京おもちゃショー」。最新のおもちゃのトレンドについて流通業界を取材する佐野裕美江記者、教えて!
「東京おもちゃショー」はどういう展示会ですか?
国内最大級のおもちゃの展示会です。
1962年から毎年開かれていましたが、新型コロナの影響で、おととしと去年は中止となりました。
ことしは3年ぶりの開催で、国内外のメーカー96社が、およそ2万点のおもちゃを展示しています。
ことしの傾向はどのようなものですか?
定番おもちゃが、一段と進化しています。
例えば、こちらの1980年発売のミニカー。
ゼンマイ式で、後ろに引いて手を離すと勢いよく走るのが特徴ですが、ことし夏に発売予定の新商品には、そのなじみの動きを残しつつ、車を引く回数に応じてターンやスピンなど、これまでなかった走り方ができる仕組みです。
モーターを使うことで、独特の動きを可能にしました。
メーカーによると、EV=電気自動車が広く普及してきたことも商品開発の際には意識したそうです。
また、6つの面のパネルの色をそろえていく立方体のパズルでは、見る角度によって、パネルの色が変わる仕掛けに。
私自身、普通のキューブでも上手に色を揃えられませんが、この新作は、視覚が惑わされて難易度がぐっと上がっています。
いずれも、大人がなじみのある商品ですが、どうしてメーカーは定番商品に力を入れているのですか?
背景にあるのは少子化です。
子どもの数が減る中で売り上げを伸ばそうとすれば、ターゲットを子どもだけに絞らず、幅広い年齢層に買ってもらう必要があります。
大人のユーザーを増やすことが各メーカーとも大きな課題で、商品性やブランドが広く浸透している定番商品をうまく進化させ、魅力を高めることがそのカギを握ると考えているのです。
おもちゃの市場規模はどうなっていますか?
子どもの数が減っているにもかかわらず、拡大しているんです。
業界団体の日本玩具協会によると、家庭用ゲームなどを除く、おもちゃ業界の市場規模は、昨年度(2021年度)8946億円でした。
前の年度より8.5%増え、今の形で調査を始めた2001年度以降で過去最高となりました。
コロナ禍で自宅で過ごす時間が増え、子どもと一緒に大人も遊ぶ機会も増えたことや、カードゲーム・トレーディングカードの人気が高まっていることも要因だと業界団体は分析しています。
おもちゃは時代の動きを反映しているんですね。
その点では、環境など、社会の課題について考えるきっかけにしてもらおうという商品の開発も進んでいます。
例えば、大手メーカーでは、プラモデルを組み立てたあと不要になる、部品をつないでいた枠の部分を、全国で回収する取り組みを昨年度から始めています。
集めたものは、商品の生産過程で出される端材とともに、別のプラモデルの材料に使われ、環境に配慮した商品として販売しています。
また、廃棄されるコメを素材に活用したブロックを開発し、8月下旬から発売するというメーカーもあります。
実際に取材してみると、ほんのり、おせんべいのような香りがするのも印象的でした。
さらに、性別に関わる固定的な意識をなくしていこうという動きも出ています。
発売から30年になる定番の人形シリーズでは、男の子の赤ちゃんをモデルにした人形を発売しました。
これまでほとんどのモデルが女の子だったそうですが、今後も時代の流れにあわせた商品開発を検討していきたいとしています。
業界団体も、毎年行っているすぐれたおもちゃを表彰する催しで、去年から、男の子や女の子向けの商品を表彰する部門を廃止しました。
多様な価値観を尊重する商品づくりに業界をあげて取り組む姿勢が鮮明になっています。
ところで気になるのは、おもちゃの値段です。
原材料価格の高騰などでさまざまなものの値段があがる中、おもちゃはどうなのでしょうか?
定番のおもちゃでも、一部の製品では、金属や樹脂などの原材料費や物流費の高騰を理由に、値上げの動きが出てきています。
日本玩具協会の伊吹文昭専門委員は、「メーカーにとっては、円安や原油高、原材料費の高騰、それに運送コスト上昇などで二重苦、三重苦、四重苦と大変な状況で、それらに耐えるのも限界になってきている」と話し、この冬のクリスマス商戦も見据えてメーカー各社の間では、商品を値上げする動きが広がるという見方を示しています。
伊吹専門委員によれば、メーカーもただ値上げするのではなく、新たな機能を加えるなど付加価値をつけることで、消費者の理解を得ようとしているということでした。
懐かしのおもちゃが、時代に合わせて次はどう進化するのか、注目ですね。
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