NEW2022年03月16日

ロシア国債 デフォルト?

ロシアの国債が債務不履行=デフォルトに陥るという見方が強まっています。ウクライナへの軍事侵攻をめぐる欧米各国などからの厳しい経済制裁が科されたことによるものです。そもそも、デフォルトって何?デフォルトしたらどうなるの?教えて!

ロシア国債がデフォルトしそうだというニュースを聞きました。そもそも「デフォルト」って、何ですか?

デフォルトとは、債務不履行=借りたお金の元本や利子の返済を約束した条件どおりに払えなくなることです。

国債のデフォルトは、国が発行した国債の元本の返済や利子の支払いをできなくなることで、金融市場でその国の信用が失われることを示します。ロシアの政府や企業にとっては、ドルやユーロなどによる資金調達が極めて難しくなります。

ロシアの国債は、なぜデフォルトになりそうなのですか?

ウクライナへの軍事侵攻をめぐる欧米各国などからの経済制裁が大きく影響しています。

石油や天然ガスの輸出国であるロシアは、ドルなど巨額の外貨準備を持っているので、本来は支払うことは難しくありません。

しかし、軍事侵攻をめぐる欧米各国などからの経済制裁で、外貨準備の半分近くにあたるおよそ3000億ドル(日本円で35兆円相当)が凍結されていて、外貨で支払うのが難しくなっていると見られています。

実際にどういう状況になったら、デフォルトになるのですか?

世界各国の国債や企業の社債などについて、支払い能力などを調査をしている「格付け会社」が認定するかどうかで決まります。

ロシアは、3月以降に国債の利払いなどの期限を相次いで迎える予定で、このうち3月16日にはおよそ1億1700万ドル(日本円でおよそ138億円)のドル建ての国債の利払いが必要になります。

4月4日は21億ドルの元本返済の期限となっています。

外貨凍結の後、ロシア政府はドル建ての国債について、自国通貨のルーブルで支払う方針を示していますが、価値が急落しているルーブルでの支払いは一方的な返済条件の変更にあたるとして、格付け会社からデフォルトにあたると認定される可能性があります。

大手格付け会社は、すでにロシア国債の格付けをデフォルトの一歩手前の水準まで引き下げています。

仮に16日の利払いができない場合、30日間の猶予期間が設けられているため、この間に状況に変化がなけければ4月中旬までにデフォルトと認定される可能性があります。

ロシア国債がデフォルトしたら、どんな影響が考えられますか?

専門家の間では世界の国債マーケットにおける規模はそれほど大きくないことから、金融システムへの影響は限定的だという見方が出ています。

ただし、ロシアの外貨建ての国債の残高は、およそ200億ドル(日本円でおよそ2兆4000億円)で、デフォルトになれば、保有する金融機関や投資家が損失を被る懸念があります。

たとえば、公的年金の積立金を運用しているGPIF=年金積立金管理運用独立行政法人は、2021年3月末時点でロシア国債をおよそ280億円保有しています。

また、ロシア国債は、投資信託にも組み入れられていて、投資信託協会によりますと、3月7日時点で20本以上の投資信託が新たな買い付けや解約による換金が停止されています。

その資産総額はおよそ200億円で、いずれもロシアの国債や株式への投資比率が高く、一連の制裁措置で国債などの売買が事実上できなくなり、投資信託の価格を算出することができない状態だということです。

一部の資産運用会社では、ロシア国債の評価をゼロにし、損失を計上する動きも出ています。

デフォルトになる前からもう影響が出始めているのですね。

さらに影響が広がる懸念もあります。

国債のデフォルトは、市場でのロシアの信用が失われることを示しますから、一連の制裁措置もあいまって、対ロシアのビジネスがやりにくくなることにつながります。

国際決済銀行によると、日本の金融機関全体でロシア向けの貸し出しなどの与信残高は、去年9月末時点で1兆円余りにのぼっています。

大手銀行では今後の返済などに影響がでないか慎重に見極めたいとしています。

実は1998年にもロシア国債は一度デフォルトしています。

その時には、アメリカの大手ヘッジファンド・LTCMが破綻し、市場に少なからぬ動揺を与えました。

LTCMは当時、ロシア国債の価格が大きく下落する中で、逆の方向に大きなリスクをとって投資していたため損失が膨らみました。

みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「見えているデータ以外にも、ノンバンクやファンドなどがレバレッジをかけてロシアに投資しているかもしれない。金融市場や世界経済への影響は、これから注視していく必要がある」としています。