ロシアへの制裁 各国比較すると

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まっておよそ1か月。国際社会は「重大な国際法違反」とロシアを厳しく非難し、軍事侵攻を停止するよう求めています。日本や欧米諸国はロシアに対して、厳しい経済制裁を次々と科しています。複雑に入り組んでいるので山元康司記者、教えて。
まず、主な経済制裁、どのようなものがあるのでしょうか。
山元康司記者
主な経済制裁は、5つ。
1、国際的な決済ネットワークSWIFT(スウィフト)からロシアの特定の銀行を除外、ロシア中央銀行の資産凍結。
2、ロシアへの輸出規制
3、ロシアからの輸入規制
4、最恵国待遇の取り消し・撤回
5、プーチン政権と蜜月な関係の富豪たち(オリガルヒ)の資産凍結
主な制裁の項目ごとに、国際社会がどのような制裁を科しているのか、まとめました。
金融制裁、効果は?
山元康司記者

金融制裁の効果は強力です。
貿易などの送金でも使われるSWIFTからの排除は、実質、世界経済からの退出を意味します。ただ、天然ガスの多くをロシアに依存するEUは、最大手の銀行や政府系ガス会社のグループ銀行を対象から除外し、抜け穴があるとも言われています。
実は専門家のあいだではSWIFT排除よりも強力だとみられているのがロシア中央銀行の資産凍結です。ロシアの中央銀行は通貨安を防ごうとドルやユーロを売ってルーブルを買いたいところですが、この外貨売りが縛られてしまい、政策金利を20%に引き上げて対処していますが、通貨防衛が思うようにできていない状況なんです。
輸出規制の狙いは?
山元康司記者

各国からの輸出を規制してロシアの軍需産業などに打撃を与え軍事侵攻を早期に終わらせる圧力につなげたい考えです。
反戦ムードを高める狙いもあるとみられています。
輸出規制に含まれるのは、
▽トラックやトラクターに使われる高出力のディーゼルエンジン、
▽産業用機械の制御に関わる半導体、
▽それに半導体製造装置、
▽通信装置やセンサーなどが含まれます。
もともと2014年にロシアがウクライナ南部のクリミアを併合したことに対する措置として、工作機械や炭素繊維など230余りの品目は軍事用途のものを輸出禁止にする措置をとってきました。
輸入規制の狙いは?
山元康司記者

ロシアからの輸入を規制することで、ロシアが外貨を獲得するのを防ぎ、国内経済に打撃を与えるのが狙いです。
資源自給率が高いアメリカは、ロシア産の原油などの輸入を禁止。ロシアの主要産業であるエネルギーの禁輸に踏み出し、圧力を一段と強める狙い。
ただ、ヨーロッパや日本など、ロシアから石油や天然ガスを調達している国は、なかなか踏み込めていません。
制裁に各国で大きな差が出ている分野です。
日本はロシア極東・サハリンでの石油天然ガスプロジェクトに国や大手商社も深く関わっていて、その関係がどうなるのか懸念されていましたが、現時点では、エネルギー安全保障の観点から事業からは撤退せず、石油天然ガスの輸入は継続する見通しです。
最恵国待遇の取り消しってニュースで聞くけど、待遇の取り消しって?
山元康司記者

最恵国待遇とはWTO=世界貿易機関の協定の基本原則のひとつで、関税などでいずれかの国に与える最も有利な待遇をほかのすべての加盟国にも与えなければならないというルールです。
それを取り消すというのですから異例の厳しい警告といえるでしょう。
オリガルヒとは?
山元康司記者

政権に近い立場を利用して巨万の富を築いたロシアの超富裕層を意味します。2月23日の時点で、ロシアは、総資産が10億ドル、日本円でおよそ1190億円以上の超富裕層が保有する資産のGDPに占める割合が21%に達しています。
プーチン大統領との個人的なつながりが深く、かつての同僚や昔からの柔道仲間などで、プーチン政権を経済面で支えているとみられていて、この超富裕層たちへの制裁を通じてプーチン大統領に圧力をかける狙いです。
一方のロシアの対抗措置は?
山元康司記者
日本やアメリカ、EU、イギリス、韓国、台湾などの48の国と地域を「非友好的な国と地域」に指定。
通信や医療機器、農業機械、鉄道車両など200以上の品目を輸出禁止にしました。
また、イギリスやドイツ、フランスなどヨーロッパの主要国やカナダなど36の国と地域の航空会社を対象に、ロシアへの運航を制限しています。
こうして見てくると、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、厳しい経済制裁とその応酬で、世界を巻き込み、先行きが全く見通せない状況です。
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