輸入小麦の価格引き上げ、その背景や仕組みは?
パンやパスタ、うどんなど身近な食品に使われている小麦。政府は4月から輸入した小麦を製粉会社などに売り渡す価格を引き上げることを決めました。価格は過去2番目の高値だそう。なぜ価格がこんなに上がるの?政府が製粉会社に売り渡すってどういうこと?意外に知らない小麦のこと、農林水産省を担当する川瀬直子記者、教えて!
値上げのニュースにはうんざりですが、輸入小麦の価格が上がるって、消費者にとっては痛いですよね。
川瀬記者
さまざまな食品に使われていますからね。パンや麺類、菓子などに欠かせない穀物です。
家計調査によりますと、2人以上の世帯で小麦関連の支出は年間6万5000円余り。このうちパン類には年間で3万7000円余り、麺類には1万9000円余り支出しています。
食品全体の支出に対する割合はおよそ7%と、それほど多くないと感じるかもしれませんが、値上げとなると家計への負担は小さくはないのではないでしょうか。
どれぐらい値上げになるのか、気になります。
川瀬記者
農林水産省は試算を発表しています。
今回の価格見直しで、価格上昇は小麦粉は1キロ12.1円(+4.4%)、食パン1斤が2.6円(+1.5%)、外食のうどんやラーメンで1杯1円程度(+0.1%から+0.2%)と見込んでいます。
ところで小麦の価格、どうして政府が発表するのですか?例えば牛肉の価格とか、さばの価格とか政府は発表しませんよね?
川瀬記者
それには理由があります。小麦は実は9割が輸入なんです。
国産でまかなえるのは1割のみ。輸入が滞ったり、質が低下したりして国内の企業が困らないようにと政府がまとめて輸入を行っているんです。
「国家貿易」といいます。
国がまとめて輸入しているんだ!
川瀬記者
製粉会社などが求める小麦の銘柄を国が商社を通じて買い取り、その後、製粉会社などに売り渡す仕組みになっているんです。
このときの価格、売り渡し価格は主な5つの銘柄については年2回、4月と10月に見直されます。
価格はどうやって決まるんですか?
川瀬記者
過去6か月に、政府が商社から買い付けた価格を元に計算されているんです。
今回発表されたことし4月からの売り渡し価格は、去年9月第2週から3月第1週、3月4日までの週の平均買い付け価格をもとに算出されました。
3月第1週ということは、ロシアによるウクライナ侵攻の影響も含まれているんですか?
川瀬記者
日本はロシアやウクライナから直接は小麦を輸入していません。
ただ、ウクライナ情勢の影響は一部、受けているんです。
こちら、国際的な指標となっているシカゴ商品取引所の小麦の先物価格のグラフです。
2月下旬から急上昇していますよね。今、少し価格は下落しましたがそれでも歴史的な高値です。
ロシアもウクライナも世界有数の小麦の輸出大国です。
1月以降、ウクライナ情勢が緊迫化。2月下旬にはロシアによる軍事侵攻が行われ、小麦の供給が世界的に滞るのではないかとの不安が一気に高まり、先物価格が上昇したと農林水産省は見ているんです。
先物価格は日本政府の売り渡し価格と関係しているんですか?
川瀬記者
間接的に影響しているといえるでしょう。
政府の売り渡し価格に反映されるのは買い付け価格。実際に買い付けるときの価格ですが、指標となるシカゴ市場の先物価格の影響も受けてしまうんですね。
ウクライナ情勢だけで価格が上がったんですか?
川瀬記者
いいえ、それより大きいのは主産地であるカナダやアメリカの不作の影響です。
去年夏、カナダとアメリカで高温、乾燥が起きたことで小麦は不作となり、それが実際の買い付け価格に影響したというんですね。
今後、いつぐらいから小麦製品の価格が上がるのでしょうか?
川瀬記者
製粉会社は2~3か月ほどの小麦を備蓄しているため、これまでの例から考えると製粉会社が小麦粉の価格を改定するのは、およそ3か月後。その後パンや麺などさまざまな食品への影響も出てくると考えられます。
実際、去年10月に売り渡し価格が引き上げられた際には、製粉会社は12月下旬に業務用、1月に家庭用の小麦粉の価格を引き上げました。
これ以降、ほかの原材料価格の上昇や運送コストの上昇も相まって、パンやお菓子、カップ麺など小麦を使ったさまざまな商品の値上げが相次いでいますよね。
これからは節約で大好きなパンやラーメンをがまんしないといけないのかなあ。
川瀬記者
次の価格の改定はことし10月。3月から半年間の買い付け価格が反映されます。
ウクライナ情勢の緊張がいつまで続くのか、全く先は読めませんし、産地の生育状況、為替や海上運賃の動向などさまざまな要素がからみます。
身近な穀物だけになんとか価格も落ち着いてほしいと願うばかりです。
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