NEW2021年10月29日

カイシャの業績回復どこまで? 日本企業の中間決算ピーク

東京証券取引所1部に上場する企業の今年度の中間決算の発表が29日、ピークを迎えました。コロナ禍で苦しんだ日本企業の業績はどこまで回復しているのでしょうか?経済部の太田朗記者に聞きます。

29日は中間決算発表の集中日だったんですね。

太田記者

そうなんです。東証1部に上場する3月期が決算の企業のうち17%にあたる240社余りが、ことし4月から9月までの半年間の決算を発表しました。

ことし9月までの業績ですか。新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が出されていた時期ですし、やはり厳しい結果だったんですか。

太田記者

意外に思う人もいると思いますが、利益を伸ばした企業が多くなっているんです。

SMBC日興証券が、東証1部上場の企業のうち、28日までに発表を終えた190社の半年間の決算を分析したところ、7割にあたる133社が、去年の同じ時期に比べて最終的な利益が増えて増益となりました。

7割が増益ですか。その要因は何ですか?

太田記者

ワクチン接種が進み、経済活動を再開させる動きが世界的に広がっていること。そしてコロナ禍で生産活動が思うようにできなかった去年の反動から、増益に転じた企業が多くなっています。

ただコロナ禍の中で過去最高の営業利益を更新した企業もあります。

それはどんな企業ですか?

太田記者

例えば、ソニーグループは、9月までの半年間の売り上げが去年の同じ時期より13%余り増加し4兆6262億円、本業のもうけを示す営業利益は11%余り増加して5985億円となり、いずれもこの時期としては過去最高になりました。

コロナ禍で増えたいわゆる「巣ごもり需要」を取り込む形で、音楽配信サービスや家庭用ゲーム機の売り上げが好調だったこと、それにスマートフォンの販売が伸びたことが主な要因です。

コロナ禍の社会の変化に伴う需要をつかんだ企業が好調なんですね。
ほかにはどんな企業が好調だったんですか。

太田記者

世界的に加速する脱炭素の流れによって業績が押し上げられた企業もあります。

大手電子部品メーカの日本電産は、グループ全体の半年間の売り上げが、前の年の同じ時期より21%余り増えて9106億円と、この時期としては最も多くなりました。

最終的な利益も38%余り増えて676億円となっています。

脱炭素の流れを受けて、家電や産業用機器向けに省エネ性能を高めたモーターの販売が好調だったこと、それにEV=電気自動車向けの製品の受注が増えたことが主な要因です。

一方で、業績が悪化した企業もありますよね。

太田記者

やはり、緊急事態宣言などによる行動制限の影響を受けた企業の業績が悪化しています。

JR東日本の中間決算は、グループ全体の最終損益が1452億円の赤字に。

そして来年3月までの1年間の業績予想を下方修正し、最終的な損益が1600億円の赤字になるという見通しを明らかにしました。

これまでは360億円の最終黒字を確保できるとしていましたが、新型コロナの影響が長期化し、鉄道やホテルなどの各事業で売り上げの回復が遅れていることを受けて、一転して業績予想を下方修正した形です。

航空大手のANAホールディングスも、来年3月までの1年間の業績予想を下方修正し、最終的な損益が一転して1000億円の赤字になるという見通しを明らかにしました。

コスト削減を進めるため、ANAとその系列の従業員を2025年度までにおよそ9000人減らすとしています。

なるほど。コロナによって明暗が分かれた形ですね。
経済回復に向けた今後の課題は何ですか。

太田記者

世界的な半導体不足に加えて、東南アジアでの感染拡大で部品や材料の供給が滞り、自動車メーカーの生産台数は大きく落ち込んでいます。

また原油や天然ガスの価格も高騰していて、今後、幅広い企業の業績に影響を及ぼすおそれがあります。

専門家は次のように指摘しています。

SMBC日興証券 安田光 株式ストラテジスト

「年間の業績見通しを上方修正する企業も多く、景気回復への期待はあるが、原材料や部品などの供給制約が続くと、業績に悪影響が出るおそれもあり、サプライチェーン=部品の供給網の見直しが必要になっている。景気回復基調は続くと見ているが、今後は資源価格の上昇などが足かせにならないかがポイントになる」

新たなリスク要因として浮かんできた資源価格の高騰や供給制約にいかに対応するかが今後の企業の業績を左右することになりそうです。